著者の所属・活動拠点の国は、ポーランド、中国です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:運動を生活全体の中で捉える

閉経後の女性は、加齢や女性ホルモン(エストロゲン)の減少、日々の活動量や食生活の変化が重なり、筋肉量や筋力、体の動かしやすさが低下しやすいとされています。こうした低下は、虚弱や転倒、自立した生活の喪失につながるおそれがあります。筋肉の衰えを評価する指標の中でも、握力は手軽に測れ、機能低下の早い兆しをとらえやすいものとして、加齢による筋肉の衰え(サルコペニア)の評価に広く使われています。

著者らは、多くの研究が運動だけを切り離して調べており、栄養や食事のリズムといった運動を取り巻く生活条件にはあまり注目してこなかったと指摘しています。そこで研究チームは、運動を栄養面と食事時間の工夫を含む生活習慣の枠組みに組み込むことで、より整っていない条件で運動を行う場合よりも筋肉に関する指標が良くなるのかを調べました。

運動の柱として選ばれたのは、2本のポールを使って歩くノルディックウォーキングです。腕と脚の両方を使い、全身の筋肉を働かせながら、関節への負担は比較的小さい運動とされています。これに、十分なたんぱく質の摂取と、1日の食事を決まった時間帯に収める「時間制限食」を組み合わせました。

何をどのように調べたか

対象は、地域で自立して暮らし、補助具なしで歩ける56〜80歳の閉経後女性です。100人が無作為に3つのグループへ割り振られました。1つ目はノルディックウォーキングに高たんぱく食と時間制限食を組み合わせたグループ(36人)、2つ目はノルディックウォーキングと時間制限食のみのグループ(33人)、3つ目は普段どおりの生活を続け、一般的な健康教育資料だけを受け取る対照グループ(31人)です。試験期間は12週間で、最終的に96人が終了時の測定を受けました。

運動を行う2つのグループは、指導者の監督のもと週3回、1回約60分のノルディックウォーキングに取り組みました。運動の強さは、年齢から推定した最大心拍数のおよそ60〜75%の範囲に保つよう、心拍計で管理されました。時間制限食は、1日の食事を10時間の枠内に収め、残りの14時間は水などカロリーのない飲み物だけにするという方法で、減量のためではなく、毎日の食事のリズムを整える目的で取り入れられました。高たんぱく食のグループには、体重1キログラムあたり1日約1.4グラムのたんぱく質をとる目標が設けられ、食事記録をもとに研究チームが確認と助言を続けました。

主な評価項目は握力で、ほかに歩く速さ、椅子から5回立ち上がるのにかかる時間、手足の筋肉量の目安となる「四肢の除脂肪量」(脂肪を除いた組織の重さで、体に微弱な電流を流して推定)、体重などが調べられました。運動と食事のプログラムを受けた2つのグループでは、ウォーキングへの出席率と時間制限食の順守率がいずれも約95%と高かったと報告されています。

主な結果:三つの条件を合わせたグループで最も良好な変化

握力は運動を行った2つのグループでともに向上し、最も大きく伸びたのは高たんぱく食と時間制限食を組み合わせたグループでした。たとえば左手の握力は、このグループで平均4.06キログラム、ウォーキングと時間制限食のグループで0.83キログラム増え、対照グループではほとんど変化がありませんでした。開始時の値の違いを考慮した比較でも、運動した2つのグループは対照グループより握力が高く、さらに高たんぱく食を加えたグループは、加えなかったグループより高い値を示しました。

歩く速さや椅子からの立ち上がりにかかる時間も同じ傾向でした。歩く速さは高たんぱく食を加えたグループで毎秒0.19メートル、ウォーキングと時間制限食のグループで毎秒0.13メートル速くなり、対照グループではほぼ変わりませんでした。

違いがはっきり分かれたのは手足の除脂肪量です。高たんぱく食を加えたグループでは四肢の除脂肪量が平均1.19キログラム増えた一方、ウォーキングと時間制限食のグループではほとんど変わらず、脚の除脂肪量はわずかに減っていました。四肢の除脂肪量などについて、このグループと対照グループの差は統計的に意味のあるものではありませんでした。一方、体重とBMIが最も減ったのはウォーキングと時間制限食のグループ(体重で平均1.91キログラム減)で、高たんぱく食を加えたグループの体重はほぼ横ばいでした。

この研究が示すこと

著者らは、同じノルディックウォーキングを行っても、それに伴う栄養や食事の条件によって、筋肉に関する変化の大きさや内容が異なったと述べています。運動の効果は、運動をしたかどうかだけでなく、どのような生活の条件のもとで行われたかにも左右される可能性がある、というのが研究チームの解釈です。また、筋肉の健康という観点からは、体重が減ったことを無条件に良い結果とみなすべきではないとし、たんぱく質を意識しないまま時間制限食と運動を組み合わせることが、閉経後女性の筋肉を保つうえで最も適した条件とは限らない可能性を挙げています。ただし、時間制限食がこの人たちに不適切だという意味ではないとも付け加えています。

一方で著者らは、この試験は運動、たんぱく質、食事時間のそれぞれの効果を切り分けるようには設計されておらず、結果は「組み合わせ方の異なる介入の比較」として理解すべきだと強調しています。ノルディックウォーキングが普通の散歩や筋力トレーニングより優れていることを示したものでもありません。それでも、筋肉の衰えの予防に運動を役立てるうえで、栄養や日々の食事の組み立てまで含めて考えることの大切さを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Yong Yang(Department of Physical Culture, Gdansk University of Physical Education and Sport, 80-336 Gdansk, Poland; School of Sports Training, Chengdu Sports University, Chengdu 641418, China)、Ya Zhu(School of Sports Training, Chengdu Sports University, Chengdu 641418, China)、Zbigniew Ossowski(Department of Physical Culture, Gdansk University of Physical Education and Sport, 80-336 Gdansk, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yong Yang, Ya Zhu, Zbigniew Ossowski. Effects of Nordic Walking Combined with High-Protein Intake and Time-Restricted Eating on Muscle-Related Outcomes in Postmenopausal Women: A Three-Arm Randomized Controlled Trial. Nutrients 2026-07-29. DOI: 10.3390/nu18152470. 原著ライセンス:CC BY.