著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Frontiers of Nursing

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

高血圧は、がんや糖尿病などと同じく、感染によらない慢性の病気「非感染性疾患」の一つです。論文によると、インドネシアでは高血圧の有病率が33.4%に達しており、農業に従事する18歳以上の人々では36.1%と報告されています。著者らの以前の調査でも、農村地域で高血圧の人が多いことが確認されていました。

一方で、農村には野菜や果物といった身近な農産物が豊富にあります。著者らは、この地域の資源を、植物性の食品を中心とした食事(プラントベース食)として高血圧の管理に生かせないかと考えました。その際の視点が「アグロ・ナーシング」です。これは、農業の現場や農家の暮らしに根ざした看護の考え方を指します。

研究チームは、インドネシア東ジャワ州ジュンベル県の農家が地元の野菜や果物をどのように食べているかを探り、そうした食習慣が高血圧の管理にどう関わり得るかを調べることを目的としました。

どのように調べたか

調査は、ジュンベル県のパテモン村とバンジャルセンゴン村で2021年に行われました。農家のうち高血圧の人の割合が高いことから選ばれた地域です。研究は数値を測る方法ではなく、人々の語りや行動から意味を読み取る「質的研究」の方法をとっています。

対象は、農家と、地域で住民の健康づくりを支える保健ボランティア(インドネシアで「カデル」と呼ばれる人々)です。研究者は地域に入り込んで暮らしぶりを観察する「参与観察」を行い、さらに少人数で話し合ってもらう「フォーカスグループ討論」で、食事の内容、調理法、食材の入手先、体調が悪いときの対処、日々の生活リズムなどを尋ねました。話し合いは「高血圧の予防と関連して、食べ物や果物を食べることについてどう考えますか」という問いから始められました。

集めた記録は書き起こされ、文化に根ざした看護研究で用いられるレイニンガーの4段階の分析手順に沿って整理されました。整理の枠組みとしては、人の行動は「その行動への態度」「周囲の人々の考え(社会的な規範)」「自分にできるという感覚」によって形づくられるとする「計画的行動理論」が使われています。

主な結果

結果の節で特徴が示された参加者は26人で、ほぼ全員が女性、全員がイスラム教徒のマドゥラ系住民でした。平均年齢は約53歳、高血圧を抱えている期間は平均約10年で、大半が農業に従事していました。

分析の結果、語りや観察から得られた複数のパターンは、「実際の行動」と「行動しようとする意図」という2つのテーマにまとめられました。

実際の行動の面では、塩干し魚やエビの発酵調味料など塩気の強い食べ物や、ココナッツミルクを使った料理、朝のコーヒーとたばこが日常的であることが語られました。参与観察でも、塩辛い食事の習慣はまだ一般的でした。その一方で、自宅の木になったパパイヤやバナナ、モリンガ(ワサビノキ)の葉やホウレンソウを使った澄んだスープ、ゆでたモヤシなど、自分の畑や庭で手に入る野菜や果物を食べ続けていることも確認されました。参加者は、スイカやスターフルーツ、すりおろしたキュウリの汁、アボカドの葉の煎じ汁などが血圧に良いと考えていました。体調が悪いときは、まず伝統的な方法や薬局の薬で自分で対処し、重いときに保健施設を利用するという傾向も見られました。

行動しようとする意図の面では、「塩辛いものを食べると具合が悪くなる」という実感から食習慣を変えようとする姿勢がうかがえました。同時に、経済的な事情や、朝食に野菜や果物をとらない地域の習慣が、行動を変える妨げになり得ることも示されました。著者らは、野菜の選び方や調理、配膳といった家族の役割が、こうした食事の実践と切り離せないと論じています。

研究から見えること

著者らは、野菜や果物を日常的に食べる植物性中心の食事が農家の暮らしに深く根づいており、高血圧の管理を支える要素になり得ると結論づけています。ただし、この研究は食事の後の血圧の変化を測定したものではなく、血圧が下がったことを直接示したわけではないと論文自身が明記しています。

それでも、地域の文化や暮らしの中にすでにある食習慣を出発点に、塩分の多い食事を減らしながら身近な野菜や果物を生かしていくという視点は、地域に根ざした高血圧ケアを考えるうえで手がかりになることを、この研究は示しています。

原著論文の著者・所属:Tantut Susanto(Department of Community, Family and Geriatric Nursing, Faculty of Nursing , Universitas Jember , Jember , Indonesia)、Fitrio Devianthony(Department of Psychiatric Nursing, Faculty of Nursing , Universitas Jember , Jember , Indonesia)、Rismawan Adi Yunanto(Department of Emergency and Critical Care, Faculty of Nursing , Universitas Jember , Jember , Indonesia)、Syahrul(Department of Family and Community Health, Faculty of Nursing , Universitas Hasanuddin , Makassar , Indonesia)、Ninna Rohmawati(Department of Nutrition, Faculty of Public Health , Universitas Jember , Jember , Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tantut Susanto, Fitrio Devianthony, Rismawan Adi Yunanto, et al. Exploration of plant-based diet in non-communicable disease management based on agro nursing †. Frontiers of Nursing 2026-09-01. DOI: 10.2478/fon-2026-0043. 原著ライセンス:CC BY.