著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Frontiers in Horticulture
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:「キャビアのような柑橘」を良い状態で届けるには
フィンガーライム(Citrus australasica)はオーストラリア原産の柑橘です。指のように細長い果実の中に、粒状の果汁の袋(さのう)がキャビアのように詰まっていることから「ライムキャビア」とも呼ばれます。栽培条件が合う米国フロリダ州などで関心が高まっています。一方で、この果実は低温に当たると果皮が傷む「低温障害」を起こしやすく、収穫後の貯蔵期間が短くなったり、品質や商品価値が落ちたりする課題があります。
研究チームは、産地から消費者まで果実を運ぶあいだ品質を保ち、貯蔵できる期間を延ばす方法を探りました。調べたのは三つの要素です。一つ目は、接ぎ木で根の側になる「台木」の種類です。台木は樹の生育や果実の品質に影響します。二つ目は貯蔵温度です。三つ目は、果実の表面を薄い膜で覆う「可食性コーティング」です。
何をどう調べたか
一つ目の実験では、白い果肉の品種「DPI 50-36」を3種類の台木(Kuharske、Volkamer lemon、US-802)に接ぎ木した5年生の樹を使いました。樹はフロリダ州レイクアルフレッドの露地で育てられました。この地域では、柑橘の重要な病気であるカンキツグリーニング病(HLB)がまん延しています。研究チームは、葉の養分濃度と樹冠(枝葉の広がり)の大きさを調べました。あわせて、収穫した果実を5℃または10℃(湿度90〜95%)で21日間貯蔵し、その後20℃で14日間置いて店頭に並ぶ期間を想定しました。この間、重さの減少、果皮の障害、色、果汁の成分、売り物になる果実の割合などを記録しました。
二つ目の実験では、DPI 50-36と赤い果肉の品種「UF SunLime」を使いました。どちらもKuharske台木の樹から収穫した果実です。果実を、コーティングなし、ココナッツオイル単独、トウモロコシ由来のたんぱく質(ゼイン)にココナッツオイルを加えた製品の3通りで処理しました。その後、10℃で21日間、続けて20℃で14日間貯蔵して比較しました。果実の調査は2021年と2022年の2年にわたって行われました。
主な結果
台木では、US-802に接いだ樹の樹冠が最も大きくなりました。収穫時の果実は、KuharskeとUS-802の方がVolkamer lemonより重い結果でした。貯蔵中の売り物になる果実の割合は、KuharskeがVolkamer lemonを上回りました。著者らは、果実の品質を総合するとKuharskeが最も優れていたとしています。そのうえで、フロリダの生産者に適した台木だと述べています。
貯蔵温度は品質に大きく影響しました。白い果肉と赤い果肉のどちらの品種でも、10℃で貯蔵した果実が5℃の果実を上回りました。10℃の果実は重さの減少が少なく、低温障害などの果皮の障害も少なく、果皮の色も良好でした。DPI 50-36の実験では、10℃で貯蔵した果実の約9割が売り物になる状態を保ちました。
コーティングでは、ココナッツオイル単独とゼイン入りのどちらも、コーティングなしに比べて重さの減少と果皮の障害を抑えました。コーティングなしの果実の重さの減少は、DPI 50-36で約1.5倍、UF SunLimeで約1.3倍多くなりました。一方、コーティングによって果皮や果肉の色、果汁の成分は大きく変わりませんでした。20℃に移してからの後半の時点では、コーティングした果実の売り物になる割合はDPI 50-36で75%、UF SunLimeで90%を超えました。
研究が示すこと
著者らは次のようにまとめています。フィンガーライムを10℃で貯蔵し、ココナッツオイルまたはゼイン入りのコーティングを施すと、果実の劣化を抑えて品質を保てます。白い果肉と赤い果肉のどちらのタイプでも、最長21日間の貯蔵に加え、20℃で7〜14日間置いても高い商品性を維持できたといいます。
ただし著者らは、今回の結果だけでは最適な貯蔵温度を特定できたとは言えないとも述べています。その温度は5℃から10℃のあいだにある可能性があります。この研究は、低温に弱い果実を長く良い状態に保つには、温度管理と表面の処理、さらに栽培段階での台木選びを組み合わせて考えることが大切だと示しています。
原著論文の著者・所属:Faisal Shahzad(Horticultural Sciences Department, UF/IFAS Citrus Research and Education Center, University of Florida)、Tripti Vashisth(Horticultural Sciences Department, UF/IFAS Citrus Research and Education Center, University of Florida)、Manjul Dutt(Horticultural Sciences Department, UF/IFAS Citrus Research and Education Center, University of Florida; Plant Breeding Graduate Program, University of Florida, IFAS)、Jeffrey K. Brecht(Horticultural Sciences Department, University of Florida, IFAS)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Faisal Shahzad, Tripti Vashisth, Manjul Dutt, et al. Effects of rootstock, storage temperatures, and edible coatings on fruit quality and storage performance of finger lime (Citrus australasica). Frontiers in Horticulture 2026-10-29. DOI: 10.3389/fhort.2026.2020470. 原著ライセンス:CC BY.