この研究は、アメリカの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Applied Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

パッションフルーツ(Passiflora edulis)は南アメリカ原産の果実です。著者らは、この果実が地面に落ちてから収穫される(地面収穫)場合に商品価値を失いやすい点に注目しています。論文によれば、地表の高温によって果実が急速に乾燥し、果皮がしなびる現象が起こりうるとされています。

そこで研究チームは、つるについた状態で収穫した(つる収穫)紫色品種『Possum Purple』を用い、収穫後にどの温度で貯蔵すれば果皮の色づきと品質を両立できるのかを調べました。果皮の色の主役となるのはアントシアニンという紫系の色素で、論文はその蓄積量、追熟の生理、機能性成分(生体内で働きが期待される成分)の変化を調査対象としています。

調べ方と主な報告結果

研究チームは、つる収穫した果実を5℃、10℃、15℃、20℃のいずれかの温度で21日間貯蔵し、その間の変化を比較しました。

21日後、果皮の総アントシアニン濃度が最も高かったのは10℃で貯蔵した果実でした。論文では、5℃と比べて385%の増加と報告されています。15℃では52%、20℃では38%の増加だったとされています。

一方、5℃で貯蔵した果実は呼吸速度が最も低く、エチレン(果実の追熟を促す植物ホルモン)は検出されず、重量減少もごくわずかでした。糖の目安となる可溶性固形分(TSS)、酸味の目安となる滴定酸度(TA)、およびその比(TSS/TA)も比較的安定していたと報告されています。ただし5℃では低温障害がはっきり現れ、果実の硬さが急激に失われ、しなびが観察されました。

機能性成分については、総フェノール含量、総カロテノイド含量、アスコルビン酸(ビタミンC)がいずれも貯蔵中に増加し、15℃と20℃で最も高い値を示したと述べられています。これに対し、総抗酸化活性はどの温度でも有意な変化が見られず、最も低い値は5℃で貯蔵した果実で記録されました。

この結果が示す意味

著者らは全体として、15℃と20℃という比較的高い貯蔵温度が追熟を進めるうえで最も効果的であり、10℃は果皮のアントシアニン蓄積を高めることと収穫後の品質を保つことのバランスが最も良かったと結論づけています。

この研究は、紫パッションフルーツの見た目と成分面での品質を高めるために貯蔵温度をどう選ぶかについて、新たな知見をもたらすものだと論文は位置づけています。温度という扱いやすい条件ひとつで、果皮の色づきと追熟の進み方を異なる方向に振り分けられることを示した点が、この報告の要点です。

著者:Xinwei Liu(Department of Horticultural Sciences, University of Florida, Gainesville, FL 32611, USA)、Fariborz Habibi(Department of Horticultural Sciences, University of Florida, Gainesville, FL 32611, USA)、Steven A. Sargent(Department of Horticultural Sciences, University of Florida, Gainesville, FL 32611, USA)、Tie Liu(Department of Horticultural Sciences, University of Florida, Gainesville, FL 32611, USA)、Ali Sarkhosh(Department of Horticultural Sciences, University of Florida, Gainesville, FL 32611, USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xinwei Liu, Fariborz Habibi, Steven A. Sargent, et al. Enhancing peel color of vine-harvested, purple passion fruit while promoting ripening via manipulation of storage temperature. Applied Food Research 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102666. 原著ライセンス:CC BY.