著者の所属・活動拠点の国は、中国、アメリカです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ新しい炊飯方法を調べたのか

米を炊くには時間がかかります。研究チームによると、一般的な炊飯では、鍋や釜の外側から加えた熱が水を介して米粒の表面から中心へ伝わります。この「外側から内側へ」という熱の伝わり方では、表面が先に熱くなる一方で中心まで水が十分に入らず、炊きむらや硬い食感につながることがあると論文は述べています。

そこで著者らが注目したのが「オーム加熱」です。食品に電気を流すと、食品自体の電気抵抗によって内部で熱が生まれます。外から熱を伝えるのではなく、食品全体を内側から直接温める方法です。今回は電気を短い間隔で断続的に流す「パルス式」を用いています。この方法は食品の殺菌や乾燥などで使われてきました。ただ、炊いた米の品質がどのように生まれ、米の内部構造がどう変化するのかは十分に分かっていませんでした。研究チームは、細長い粒で炊くとぱらりとしやすいインディカ米を対象に、炊飯時間の短縮と品質の向上を両立できるかを調べました。

どのように調べたのか

実験では、中国・広州産のインディカ米170グラムと水150ミリリットルを、2枚の電極を備えた容器に入れ、電気を流して炊きました。比較の基準には、市販の炊飯器の「早炊き」モードで25分炊いたご飯を用いています。

まず、加熱時間を10分から20分まで変えて、米がどこまで糊化するか(でんぷんが水と熱で変化し、ご飯らしく柔らかく透明になる現象)や、吸水量、膨らみ方、硬さ、色などを測りました。次に、加熱時間、電気を流す1回あたりの長さ(パルス幅)、電気の強さ(電界強度)、1秒あたりに電気を流す回数(周波数)の4条件を組み合わせて試し、最適な条件を探しました。評価には、糊化の程度と、訓練を受けた評価者による食味評価を半分ずつ反映させた総合点を使っています。

さらに、最適条件で炊いた米について、米粒の中の水の分布、顕微鏡で見た内部の様子、でんぷんの結晶構造などを調べました。試験管内で消化を再現する実験も行い、食後の血糖値の上がりやすさの目安となる「推定グリセミック指数(推定GI)」を算出しています。

主な結果

最適と判断された条件は、加熱時間18分、パルス幅9.4マイクロ秒、電界強度0.52キロボルト毎センチメートル、周波数265ヘルツでした。この条件では、炊飯器で25分かけた場合と比べて炊飯時間が28%短くなり、総合点は88.42点だったと論文は報告しています。

最適条件で炊いた米は、吸水量と膨らみが増し、硬さが下がり、全体的な風味の特徴も高まったと報告されています。初期段階の実験では、加熱時間を長くするにつれて吸水率が約56%から約71%へ、体積の膨張率が約262%から約371%へと上がりました。18分以降の吸水率は、炊飯器で25分炊いた米を上回っています。同じ初期実験で18分加熱した米の硬さは、炊飯器で炊いた米よりも明らかに低い値でした。一方、加熱時間が長くなるほど色はやや暗くなり、炊飯器で炊いた米より白さが低いという結果も報告されています。

米の内部構造の分析では、オーム加熱によって糊化が速く進み、でんぷんの規則正しい結晶構造が減り、米粒の中で水が移動しやすくなっていました。でんぷんとたんぱく質の関わり方にも変化が生じた可能性が示されています。著者らは、こうした構造の変化が、観察された食感の改善と整合するとしています。

栄養面については、18分の時点で推定GIが83.69となりました。炊飯器で炊いた米の82.88との間に統計的に意味のある差はありませんでした。なお、この値は人での試験ではなく、試験管内の消化実験から推定したものです。

研究が示すこと

今回の研究は、電気で米を内側から加熱する方法によって、試験管内の消化実験に基づく推定GIを従来の炊飯と同程度に保ちながら、インディカ米をより短い時間で柔らかく炊ける可能性を示しました。あわせて、でんぷんの構造や米粒の中の水の動きに変化が見られ、それが食感の改善と整合することも報告しています。研究チームは、オーム加熱を炊飯の効率と品質を高める有望な技術と位置づけています。

原著論文の著者・所属:Haiqian Xu(Guangdong Provincial Key Laboratory of Intelligent Food Manufacturing, School of Food Science and Engineering, Foshan University, Foshan 528225, China)、Guifeng Wei(Guangdong Provincial Key Laboratory of Intelligent Food Manufacturing, School of Food Science and Engineering, Foshan University, Foshan 528225, China)、Boru Chen(Guangdong Provincial Key Laboratory of Intelligent Food Manufacturing, School of Food Science and Engineering, Foshan University, Foshan 528225, China)、Jian Li(Guangdong Provincial Key Laboratory of Intelligent Food Manufacturing, School of Food Science and Engineering, Foshan University, Foshan 528225, China)、Lang-Hong Wang(Guangdong Provincial Key Laboratory of Intelligent Food Manufacturing, School of Food Science and Engineering, Foshan University, Foshan 528225, China)、Xin-An Zeng(Guangdong Provincial Key Laboratory of Intelligent Food Manufacturing, School of Food Science and Engineering, Foshan University, Foshan 528225, China)、Sudhir K. Sastry(Department of Food, Agricultural and Biological Engineering, The Ohio State University, 590 Woody Hayes Drive, Columbus, OH 43210, USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Haiqian Xu, Guifeng Wei, Boru Chen, et al. Application of Pulsed Ohmic Heating for Rapid Cooking of Indica Rice: Quality Enhancement and Mechanistic Insights. Foods 2026-08-04. DOI: 10.3390/foods15152742. 原著ライセンス:CC BY.