著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:AGROINTEK

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

テンペはインドネシアの伝統的な発酵食品で、ゆでた大豆にクモノスカビ(リゾプス属のカビ)を繁殖させて作ります。タンパク質が豊富なことから、著者らは、低栄養や発育阻害(スタンティング)、タンパク質代謝に問題を抱える腎不全患者などの栄養補給に役立つ食品として位置づけています。

テンペづくりの品質を左右する要素は、発酵のもとになる「種菌」と、原料となる大豆です。インドネシアでは、ハイビスカスの仲間の葉にカビを付けた伝統的な種菌「ウサール」や、乾燥テンペを砕いて粉にした「ラル」が今も広く使われています。一方、雑菌の少ない粉末種菌も開発されていますが、入手できる地域は限られています。原料の大豆についても、国内生産が需要に追いつかず、市場には輸入の遺伝子組み換え大豆が多く出回っています。

研究チームは、こうした種菌と大豆の違いが、発酵によって水に溶けやすくなったタンパク質(可溶性タンパク質)や、水に溶けた成分の総量(可溶性固形分)にどう影響するのかを調べました。

何をどう調べたか

種菌は、ウサール、ラル、粉末種菌のラプリマの3種類を使いました。大豆は、輸入の遺伝子組み換え大豆と、インドネシア在来品種のグロボガンとアンジャスマラの3種類です。これらを組み合わせた9通りの条件でテンペを作りました。

可溶性タンパク質と可溶性固形分は、発酵開始時と48時間後に測り、その増え方を比べました。可溶性固形分は、液体に溶けた糖などの量を光の屈折から読み取る屈折計で測定し、「%ブリックス」という単位で表しています。発酵48時間後には、総タンパク質量と水分量も測りました。さらに、可溶性タンパク質を総タンパク質で割った値を、論文では「タンパク質消化性」の指標として算出しています。

結果の比較には、二つの要因(種菌と大豆)の影響と、その組み合わせによる効果を同時に調べられる統計手法を用いました。

主な結果

発酵後には、すべての試料で可溶性タンパク質と可溶性固形分が増えていました。著者らは、カビが作るタンパク質分解酵素などの働きで、成分が水に溶けやすい形に分解されたためと説明しています。

可溶性タンパク質の増加量には大豆の種類が影響し、種菌の違いによる差は見られませんでした。最も多かったのは輸入大豆の0.956%です。論文の消化性指標も同じ傾向で、輸入大豆が4.175%と最も高くなりました。水分量にも大豆の種類だけが影響し、グロボガンが61.07%と最も高い値でした。なお、どの試料も水分量はインドネシア国家規格の基準(65%未満)を満たしていました。要旨では、可溶性固形分については種菌・大豆のいずれにも影響は見られなかったとまとめています。

一方、総タンパク質量だけは、種菌と大豆の両方、さらにその組み合わせによって差が出ました。最も高かったのはアンジャスマラ大豆とラルの組み合わせで、37.69%でした。種菌別ではラル、大豆別では在来品種が高く、輸入大豆は最も低くなりました。興味深いのは、総タンパク質と可溶性タンパク質で大豆の順位が逆になった点です。著者らはその理由として、輸入大豆は保管期間が長いため、タンパク質が発酵中に分解されやすかった可能性を挙げています。

全項目を総合して最も良いと判断されたのは、ラプリマと輸入大豆の組み合わせです。この組み合わせでは、可溶性タンパク質1.035%、可溶性固形分7.00%ブリックス、総タンパク質22.332%、消化性指標4.848%、水分60.298%が報告されています。

研究が示すこと

この研究から、テンペの可溶性タンパク質や水分といった性質は、種菌よりも原料大豆の種類によって大きく左右されることが分かりました。また、タンパク質の「総量が多い」ことと「溶けやすい形のタンパク質が多い」ことは、必ずしも一致しないことも示されています。

著者らは、ラプリマと輸入大豆で作ったテンペを、患者の食事に合わせた加工品の原料の候補として挙げています。何を重視するかによって、適した種菌と大豆の組み合わせが変わることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Nur Hidayat(Universitas Brawijaya)、Dinda Galuh Wulandini(Teknologi Industri Pertanian, Universitas Brawijaya, Malang)、Dian Handayani(Ilmu Gizi, Universitas Brawijaya, Malang)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nur Hidayat, Dinda Galuh Wulandini, Dian Handayani. Pengaruh macam inokulum dan jenis kacang kedelai yang digunakan terhadap kadar protein terlarut dan total padatan terlarut pada tempe. AGROINTEK 2026-07-28. DOI: 10.21107/agrointek.v20i2.22490. 原著ライセンス:CC BY.