この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Gels

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられてきた種を、半固形のデザートの土台にできるか

果物や野菜の加工では、皮や搾りかす、種といった副産物が大量に生まれ、栄養面や加工面での価値を残したまま廃棄されることが少なくありません。メロンの種にも脂質・タンパク質・炭水化物・ミネラルが相応に含まれており、油の原料としてだけでなく、食品の材料そのものとして使えないかが以前から検討されてきました。

研究チームが着目したのは、トルコ・マニサ県キルカアチ地区に結びついた地理的表示産品「キルカアチ・カヴヌ(キルカアチメロン)」の種です。論文は、この原産地呼称としての登録はあくまで果実とその産地に関するものであり、種の部分が栄養的・技術的に優れていることを示すものではない、と明記しています。

メロンの種からつくる飲料自体は、先行研究で組成や製法の影響が調べられてきました。しかし著者らによれば、その飲料を「ゲル化剤で固めた半固形のデザート」に仕立てるという段階は、これまで扱われてこなかったといいます。そこで本研究は、キルカアチメロンの種からつくった飲料を連続相(液体の土台)として、デンプンを加えずにゲル化剤だけで構造をつくれるかどうか、そしてゲル化剤の種類と濃度がどう影響するかを調べました。

4種類のゲル化剤を、同じ配合量でそろえて比較した

まず、洗った種を40℃で24時間乾かし、水に8時間浸してから水とともにミキサーにかけ、ろ過・遠心分離して上澄みを飲料として集めました。この飲料は水分が約86%、タンパク質1.30%、脂質1.93%、炭水化物10.19%で、pHは約7.0(ほぼ中性)でした。著者らは、この値が先行研究で報告されたキルカアチメロン種飲料の値に近いとしつつ、種と水の比率や処理条件が研究ごとに異なるため、製品が同等であることを示すものではないと述べています。

この飲料に砂糖を加え、キサンタンガム、ローカストビーンガム(LBG)、κ(カッパ)-カラギーナン、グアーガムの4種類を、それぞれ0.5%と1.0%の2水準で配合した計8種類のプリンを作りました。これらはいずれも水の中で網目状の構造をつくる多糖類ですが、固め方の仕組みが異なります。キサンタンは絡み合った弱い網目をつくり、LBGとグアーは主に鎖どうしの絡まりでとろみをつけるガラクトマンナン類、κ-カラギーナンはイオンを介したらせん構造の結合点をつくり、しっかりした硬いゲルになりやすいものです。比較の基準として、コーンスターチで固めた種飲料と牛乳のプリンも用意しました。4種類×2濃度をあえて同じ配合量でそろえたのは、ゲル化剤ごとに最適化するためではなく、「種類」と「濃度」の組み合わせの効果を直接比べるためだと説明されています。

評価の中心はレオロジー(流動・変形のふるまい)です。小さく揺らしたときの弾性的な成分(貯蔵弾性率G′)と粘性的な成分(損失弾性率G″)、両者の比である損失正接tanδ、さらにかき混ぜる速さを変えたときの見かけの粘度を測りました。補助的に、加熱時の熱のやり取りを見る示差走査熱量測定(DSC)と、赤外線で分子の特徴を見るATR-FTIRも行っています。

同じ量を入れても、ゲル化剤は入れ替え可能ではなかった

4℃で12時間おいた10種類はすべて目に見えて固まり、液の分離は観察されませんでした。ただし著者らは、見た目だけでは自立したゲルかどうかは判断できないとし、実際に測定すると弾性率は最大で100倍近い開きがありました。基準とした周波数での貯蔵弾性率は、グアー0.5%の3.68 Paからκ-カラギーナン1.0%の475.40 Paまで広がっていました。

最も明確な結果は、ゲル化剤の種類と濃度が互いに影響し合うという点です。統計解析では、種類・濃度・その交互作用のすべてがどの指標でも有意で、交互作用の効果量はきわめて大きいものでした。具体的には、キサンタンを0.5%から1.0%に倍増させると弾性率はおよそ3倍、グアーではおよそ9倍になりました。一方でLBGは弾性率が変わらないまま粘性的な成分だけが増え、系は液体寄りのふるまいへ移りました。κ-カラギーナンでも、倍増分は主に粘性的な散逸に寄与し、弾性的な構造の増強にはつながりませんでした。著者らはここから、この素材系では、異なるゲル化剤を同じ重量割合で入れても等価な「固める量」とは見なせないと結論づけています。

最も硬い網目をつくったのはκ-カラギーナン1.0%でしたが、扱いにくさも際立ちました。測定器に載せるのに大きな治具が必要なほど硬く、せん断をかけると試料が測定間隙から押し出され、また低い周波数域では粘性が優位に転じました。これに対し0.5%は、貯蔵弾性率359.79 Paに達し、牛乳対照との比較では有意差が検出されませんでした(ただし論文は、差が検出されなかったことは同等性の証明ではないと注意しています)。測定した周波数の全範囲で弾性優位を保ち、通常の測定条件で扱えたことから、著者らはこれを試した中で最もバランスのよい候補と位置づけています。

熱の測定では、はっきりした転移が現れたのはκ-カラギーナンの配合だけで、0.5%では68.2℃付近に吸熱が見られました。1.0%ではより高い温度で転移が観察されましたが、条件を満たした測定曲線が1本だけだったため、著者らは濃度による移動が示されたとは主張していません。赤外分光では、ゲル化剤を加えたことによる新しい吸収帯や再現性のあるピークの移動は検出されませんでした。ただし試料の8割以上が水であり、水の吸収が支配的なため、これは分子間の相互作用がなかったことを示すものではない、と明確に述べられています。

この研究が示していること

著者らは本研究の限界も具体的に挙げています。市場で「キルカアチ・カヴヌ」として売られていた果実を使ったものの、量り売りのため収穫年やロットは記録できず、実験に用いたロットが原産地呼称の認証を受けたものかは独立に確認していません。また3回の繰り返しは別々に仕込んだ製造ロットではあるものの、原料は同一ロットであり、機器による食感測定、離水量の定量、保存試験、官能評価はいずれも行われていません。そのため0.5%κ-カラギーナンという推奨は技術的な位置づけであって、消費者評価に基づくものではないとしています。

それでもこの研究は、これまで十分に活用されてこなかったメロンの種由来の飲料が、半固形デザートの土台になりうることを示しました。そして同時に、「どのゲル化剤をどれだけ入れるか」は単純な足し算では決まらず、種類ごとに濃度への応答がまったく異なるという点を、統計的な裏づけとともに提示しています。副産物を食品素材として設計し直そうとするとき、配合量の数字だけを横並びにしても意味をなさない──本研究が実験的に示したのは、そうした設計上の前提そのものです。

著者:Şelale Öncü Glaue(Food Processing Department, Efes Vocational School, Dokuz Eylül University, 35920 İzmir, Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Şelale Öncü Glaue. Rheological and Thermal Characterization of Kırkağaç Melon Seed Beverage Puddings Structured with Hydrocolloids. Gels 2026-09-03. DOI: 10.3390/gels12090808. 原著ライセンス:CC BY.