著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

大麦には、食物繊維の一種であるβ-グルカンと、小腸で消化されにくい「難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)」が含まれています。論文の序論では、β-グルカンは腸内の粘度を高めて食後の血糖上昇やコレステロールに関わり、難消化性でんぷんは大腸で腸内細菌に発酵されて短鎖脂肪酸を生む成分として紹介されています。

一方、これらの成分の状態は、水に浸す、加熱するといった調理によって変わり得ます。さらに市販の大麦には、外皮を削った粒状の精麦、粗く砕いた挽き割り、粉末の大麦粉があり、粒の大きさや構造の壊れ方が異なります。著者らは、同じ家庭調理法でも大麦の形状によって結果が異なるという仮説を立てました。そのうえで、浸水の有無と4種類の家庭加熱法がこれら2つの成分に与える影響を、統一した条件で系統的に比べることを目的としました。

何をどのように調べたか

研究チームは、インド・ハイデラバードの小売店や卸売市場で精麦、挽き割り大麦、大麦粉を購入しました。形状ごとに複数の試料を混ぜ合わせ、代表試料としました。浸水は、精麦では15時間、挽き割りと大麦粉では2時間としました。浸水した試料としていない試料のそれぞれについて、圧力鍋調理、電子レンジ調理、ゆで調理、油を使わない乾煎りの4つの方法で加熱しました。加熱の終点は、芯が残らない、粉が均一な糊状になるなど、形状ごとに事前に決めておきました。

加熱後の試料は、酵素を使う標準的な分析法で測定しました。測定項目は、抽出できるβ-グルカン(抽出性β-グルカン)と難消化性でんぷんの総量です。値は水分を除いた乾燥重量あたりで表し、未調理の生の試料と比較しました。著者らによれば、「抽出性」という言葉は、調理によって測定で取り出せる量が変わることを示しています。これは、穀粒が本来含むβ-グルカンの総量そのものの増減とは区別されます。

なお、各条件の加熱は1回ずつ行われました。繰り返し測定は同じ調理済み試料から取り分けた分析上の反復です。このため、著者らは結果を探索的なものと位置づけています。

主な結果

調理前の段階から、3つの形状の成分値は異なっていました。抽出性β-グルカンは、挽き割りが100gあたり5.31gで最も多く、大麦粉が4.59g、精麦が4.24gでした。難消化性でんぷんは、精麦が5.24gで最も多く、挽き割りは2.10g、大麦粉は0.22gでした。

抽出性β-グルカンについては、精麦では浸水しない圧力鍋調理が最も高い6.40gでした。他の加熱法でも生より高い値になりました。挽き割りでは、浸水しない場合に圧力鍋、電子レンジ、乾煎りで値が高まりました。一方、浸水後はどの方法でも有意な増加は見られず、乾煎りでは生より6.2%低くなりました。大麦粉では、浸水しない場合は生と同程度でした。浸水後のゆで調理では5.20gと最も高く、圧力鍋と電子レンジもこれに近い値でした。

難消化性でんぷんは、より大きく変動しました。浸水しない精麦では、すべての加熱法で値が減少しました。ただし、減り方が最も小さかったのは圧力鍋(53.2%減)でした。浸水した精麦では逆に増加し、圧力鍋で8.02g(53.1%増)に達しました。挽き割りでは、浸水の有無にかかわらず圧力鍋が最も高い値でした。大麦粉では、浸水しない場合はゆで調理(1.07g)、浸水後は乾煎り(0.92g)が最も高くなりました。効果の大きさを示す統計上の指標でも、難消化性でんぷんのほうがβ-グルカンより調理の影響を強く受けていました。

研究が示すこと

著者らは、どの形状でも両方の成分を一貫して高める単一の調理法は見られなかったと述べています。精麦と挽き割りでは圧力鍋調理が目立った一方、大麦粉は異なる傾向を示しました。このことから、大麦の調理法の目安は製品の形状ごとに考える必要がある、というのが論文の主張です。

ただし、この研究が調べたのは調理後の成分の測定値です。粘度、消化性、血糖反応などの体への作用は評価していません。著者らも、結果は健康効果の直接の証拠ではなく、探索的な観察として扱うべきだとしています。同じ大麦でも、形状と下ごしらえの組み合わせによって成分の値が変わり得ることを示した研究と言えます。

原著論文の著者・所属:Shrunga Shree Shivanand(Department of Dietetics, ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Prasanthi Prabhakaran Sobhana(Department of Dietetics, ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Srinivas Epparapally(Department of Dietetics, ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Vinay Kumar Soma(Clinical Epidemiology Division, ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Raghavendra Rao Chowdavarapu(Maternal and Child Health Nutrition (MCHN) Division, ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Gobeeswaran Sundaralingam(Department of Dietetics, ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Sangita Thenarangam(Department of Dietetics, ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Shally Vishnoi(Department of Dietetics, ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Pavithra Rajakumar Chithra(Department of Dietetics, ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Prathyusha Vasireddy(Department of Dietetics, ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Radhika Madhari(Department of Dietetics, ICMR–National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shrunga Shree Shivanand, Prasanthi Prabhakaran Sobhana, Srinivas Epparapally, et al. Differential Effects of Household Thermal Processing on Extractable β-Glucan and Total Resistant Starch Across Processed Barley Forms. Foods 2026-08-31. DOI: 10.3390/foods15173089. 原著ライセンス:CC BY.