著者の所属・活動拠点の国は、イタリア、ポーランドです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
パスタは手軽で保存性にも優れた主食として広く食べられていますが、その大部分は消化されやすいでんぷんで、食物繊維は多くありません。そこでパスタに別の素材を加え、栄養面の特徴を変えようとする試みが続いています。注目される成分のひとつが「難消化性でんぷん」です。これは小腸で消化されにくく、大腸まで届くでんぷんのことです。加熱したでんぷんが冷える過程で分子が並び直す「老化」によっても生じます。
ジャガイモ由来の素材はでんぷんの供給源として期待されています。ただし、デュラム小麦のセモリナ(パスタ用の粗挽き粉)を置き換えると、生地の水分の分かれ方やグルテンの形成、ゆでたときの性質、食感が変わる可能性があります。研究チームは、加工の度合いや物理的な形が異なる3種類のジャガイモ素材を同じ条件で比べた研究は少ないと指摘しました。さらに、ゆでた後の保存温度との組み合わせについても、十分に調べられていないとしています。そのうえで、これらの素材がパスタの品質と難消化性でんぷんの量にどう影響するかを調べました。
何をどのように調べたか
使われたのは、ジャガイモでんぷん、ジャガイモフレーク、ジャガイモグリッツの3種類です。でんぷんは主にでんぷん粒だけでできています。フレークはジャガイモを加熱してつぶし、ドラムで乾燥させて砕いたものです。グリッツは皮をむいて湯通しし、乾燥させて粉砕したものです。著者らはセモリナの10%または20%をこれらの素材に置き換えてらせん形のフジッリを押し出し成形し、低温で乾燥させました。比較の基準には、セモリナ100%の対照パスタを用いました。
まず原料そのものを調べました。その結果、フレークではでんぷんの約98%がすでに糊化(加熱で膨らみ、とろみが出た状態)していました。一方、でんぷんの糊化度は約5%と低い値でした。そのうえで、生地のこね特性、ゆで時間とゆで汁へ溶け出す成分の量、食感、色、成分組成を測定しました。難消化性でんぷんについては、ゆでた直後のものと、ゆでた後に4℃で24時間冷蔵したもの、マイナス18℃で24時間冷凍したものを比べています。なお、各配合は1回の製造で作られたため、繰り返しは分析上のものだと論文には記されています。
主な結果
生地の性質は、素材の種類によって大きく異なりました。こねる際に必要な水の量は、対照の61.45%に対して、でんぷんを加えると減少しました。反対に、フレークでは最大85.95%、グリッツでは最大81.30%まで増えています。グリッツを加えた生地は、こね上がるまでの時間も長くなりました。著者らはこの理由として、細胞構造の断片が水の浸透を遅らせた可能性を挙げています。製造工程では、でんぷんを加えた配合で押し出し機の処理量が増えました。
ジャガイモ素材を加えたパスタは、いずれも対照より短い時間でゆで上がりました。その一方で、ゆでる間に溶け出す成分は増え、とくにグリッツ20%では乾物あたり9.33%に達しました。食感は素材による差が大きく、フレークでは硬さと粘りつきが最も高くなりました。でんぷんを加えたパスタは、対照に近い食感でした。食物繊維はフレークとグリッツ20%でわずかに増えましたが、統計的に意味のある差ではありませんでした。でんぷんを加えると、食物繊維は減少しました。
難消化性でんぷんは、冷蔵だけではほとんどの試料でごくわずかしか生じませんでした。これに対し、冷凍保存では冷蔵よりかなり多くなりました。最も多かったのはグリッツ20%の乾物あたり3.18%で、対照と比べて335.6%の増加と報告されています。このとき、消化されやすいでんぷんは減っていました。著者らは、この結果を老化によって酵素で分解されにくいでんぷん構造ができたことと矛盾しない反応だと述べています。
研究が示すこと
この研究は、同じジャガイモ由来の素材でも、加工の度合いや物理的な形によってパスタの品質への影響が大きく異なることを示しました。著者らは、グリッツを使い、ゆでた後に冷凍保存すると、デュラム小麦パスタの難消化性でんぷんが増える可能性があると結論づけています。ただし同時に、ゆで汁へ溶け出す成分の増加や食感の変化も伴っていました。栄養面の変化と品質の維持は、併せて考える必要があるということです。
原著論文の著者・所属:Burcu Aykanat(Department of Agricultural, Forestry, Food and Environmental Sciences (DAFE), University of Basilicata, Via Dell’Ateneo Lucano 10, 85100 Potenza, Italy)、Paulina Łysakowska(Department of Engineering and Cereal Technology, University of Life Sciences in Lublin, Skromna 8, 20-704 Lublin, Poland)、Piotr Zarzycki(Department of Engineering and Cereal Technology, University of Life Sciences in Lublin, Skromna 8, 20-704 Lublin, Poland)、Aldona Sobota(Department of Engineering and Cereal Technology, University of Life Sciences in Lublin, Skromna 8, 20-704 Lublin, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Burcu Aykanat, Paulina Łysakowska, Piotr Zarzycki, et al. Effect of Potato-Derived Ingredients on the Quality Characteristics and Resistant Starch Content of Durum Wheat Pasta. Foods 2026-10-17. DOI: 10.3390/foods15203701. 原著ライセンス:CC BY.