著者の所属・活動拠点の国は、ウクライナです。

掲載誌:Eastern-European Journal of Enterprise Technologies

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:調理済みの米をどう乾かすか

お湯を注ぐだけで食べられるインスタントの米製品では、炊いたり蒸したりした米を最後に乾燥させます。研究チームによると、この乾燥は製造の最終段階であり、最も重要な工程でもあります。加熱した米は水分が多く、デンプンが糊化している(加熱で水を吸って柔らかく変化している)ため、収穫後の生の穀物を乾かすよりも多くのエネルギーを必要とします。また、急に乾かしすぎると表面に硬い膜ができ、内部の水分が抜けにくくなるといった難しさもあります。

乾燥の進み方を説明するこれまでの多くのモデルは、材料内部の水分の濃度差を水分移動の原動力として扱ってきました。著者らは、製品表面付近の水蒸気の圧力(分圧)と周囲の空気中の水蒸気の分圧との差こそが乾燥を進める直接の「駆動力」だと考えました。ただし、この値を乾燥中に直接測ることが難しく、市販の測定機器も高価なため、これまで十分に扱われてこなかったと指摘しています。

そこで研究チームは、水蒸気の分圧差と、乾燥に必要なエネルギーを考慮して、加熱処理した米の乾燥の進み方の規則性を明らかにすることを目的としました。

何を調べたか

材料にはタイ産の長粒米を使い、2通りの下処理をしました。一つは普通に炊く方法(ゆでた米)、もう一つは圧力をかけた装置で蒸す方法です。乾燥前の水分は、ゆでた米で68.9%、蒸した米で38%でした。これらを、マイクロ波(電子レンジと同じ原理の加熱)、減圧下でのマイクロ波、赤外線、120℃の熱風を当てる対流式の4つの方法で、水分14%まで乾燥させました。

駆動力を測るため、著者らは安価な湿度・温度センサーと小型の制御基板を組み合わせた測定台を作りました。乾燥途中の米を小さな密閉容器に移し、容器内の空気が米と釣り合った状態になってから湿度と温度を読み取ります。ここから米の上の水蒸気分圧を計算し、周囲の空気の分圧との差を求めました。釣り合った状態に達するまでの時間は5分以内だったと報告されています。センサーは、湿度があらかじめ分かっている飽和溶液を使って校正されました。

主な結果

蒸した米で駆動力の変化を比べると、赤外線とマイクロ波では分圧差がおよそ2000〜3500パスカルの高い範囲まで上がって安定しました。特に赤外線では上昇が最も速く、約10分で最大の約3500パスカルに達しました。一方、熱風による対流式では分圧差は乾燥中ずっと約1000〜1500パスカルと低いままで、乾燥には50分以上かかりました。

乾燥中の水分の減り方は、最初の短い加熱期間を除くと、ほぼ一定の速さで直線的に下がっていきました。研究チームは、駆動力の変化と水分の変化を表す近似式を、それぞれの条件について求めています。

エネルギーについては、消費したエネルギーの総量を取り除いた水分量で割った値(比エネルギー消費量)で比べました。どちらの下処理でも最もエネルギーを使ったのは対流式で、蒸した米で約9.45 MJ/kg、ゆでた米で約7.3 MJ/kgでした。全体としてゆでた米(4.0〜7.3 MJ/kg)の方が蒸した米(5.9〜9.45 MJ/kg)より少なく、最も少なかったのはゆでた米の赤外線乾燥で4 MJ/kgでした。

著者らは、ゆでた米で消費が少ないのは調理中に米粒の細胞構造が壊れるためであり、赤外線で少ないのは空気を温めずに放射で米へ直接熱を届けるため、空気の加熱によるロスがないからだと説明しています。さらに、水蒸気の分圧差を含む形で、乾燥の強さを無次元の数(相似数)で表す式も作成しました。

この研究が示すこと

この研究は、乾燥の駆動力である水蒸気の分圧差を安価な機器で乾燥中に測定し、乾燥方式や下処理の違いによる差を数値で示しました。研究チームは、得られた結果がインスタントの乾燥米や調理済み食品の製造に役立ち、乾燥装置の規模拡大や運転条件の最適化の手がかりになり得るとしています。

原著論文の著者・所属:Igor Bezbakh(Scientific-Research Institute of Standardization and Technologies of Eco-Safe and Organic Products, Ukraine)、Lyudmila Phylipova(Scientific-Research Institute of Standardization and Technologies of Eco-Safe and Organic Products, Ukraine)、Igor Yarovyi(Mechanical and Technological Vocational College of Odesa National Technological University, Ukraine)、Nataliia Veselovska(Vasyl’ Stus Donetsk National University)、Yevhen Taranenko(Odesa National University of Technology)、Oleksii Zhelvakov(Odesa National University of Technology)、Sergiy Bezbah(Odesa National University of Technology)、Ganna Goncharuk(Odesa National University of Technology)、Oleg Gaponyk(Scientific Production Enterprise "Elevatorspetsosnastka", Ukraine)、Elena Marenchenko(Mechanical and Technological Vocational College of Odesa National Technological University, Ukraine)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Igor Bezbakh, Lyudmila Phylipova, Igor Yarovyi, et al. Establishing the kinetic regularities and energy efficiency of thermally-treated rice drying considering partial vapor pressure. Eastern-European Journal of Enterprise Technologies 2026-08-28. DOI: 10.15587/1729-4061.2026.368425. 原著ライセンス:CC BY.