著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Future Postharvest and Food

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられるかんきつの半分をどう生かすか

レモン、オレンジ、マンダリン、グレープフルーツなどのかんきつ類は、世界中で広く栽培され、食べられている果物です。しかし著者らによると、これらの果実の約50%は食べられずに残り、皮、果肉の搾りかす、種、じょうのう(房)の残りとして出てきます。果汁などに加工する産業でも大量の残さが生じ、かんきつ加工からは毎年およそ1000万トンの廃棄物が出ると紹介されています。

こうした廃棄物をそのまま捨てると、環境への負担になります。論文では、皮に多く含まれる精油成分リモネンには抗菌性があり、土壌の微生物を損なったり、地下水に染み出して水質や水生生物に影響したりするおそれがあると述べています。また、皮や搾りかすは水分や糖分が多く傷みやすいため、埋め立てなどの処分でも問題が生じます。

一方で、これらの残さには栄養成分や体に働きかける可能性のある成分が含まれています。この総説の目的は、かんきつ廃棄物に含まれる生理活性成分や機能性成分を整理し、それらを取り出すための従来技術と新しい技術を検討し、抽出成分について報告されている健康上の働きを明らかにすることです。著者らは自ら新しい実験を行ったのではなく、既存の研究を集めてまとめています。

皮・種・搾りかすに含まれるもの

総説では、かんきつの部位ごとに特徴を整理しています。皮は果実重量の約50〜55%を占める最大の副産物で、水分が約80%と多く、精油を含みます。搾汁後に残る搾りかす(ポマス)には、果肉や種が含まれ、その50〜60%は食物繊維として分離できるセルロースやヘミセルロースだと紹介されています。種は油分を多く含み、たんぱく質やフェノール類の供給源にもなるとされています。

栄養面では、ビタミンC、ビタミンB群、カルシウムやカリウムなどのミネラル、水に溶ける食物繊維(ペクチンなど)と溶けない食物繊維(セルロースなど)、糖類、脂肪酸などが含まれると、これまでの研究をもとにまとめられています。ペクチンは、ジャムを固めるゲル化剤や飲料の安定剤として食品産業ですでに広く使われている成分です。

生理活性成分としては、皮の精油の主成分であるリモネンや、ポリフェノールの一種であるフラボノイドが取り上げられています。オレンジの皮には、ヘスペリジンやナリンギンといったフラボノイドが比較的多く含まれ、これらは主に皮の内側の白い部分(アルベド)に、ノビレチンやタンゲレチンなどの「ポリメトキシフラボン」と呼ばれる成分は外側の色のついた部分(フラベド)に多いと説明されています。

成分の取り出し方と報告されている働き

こうした成分を回収する方法として、論文は溶媒で成分を溶かし出す方法や水蒸気蒸留といった従来の手法に加え、超臨界流体抽出、マイクロ波抽出、超音波抽出、パルス電界抽出などの新しい技術を紹介しています。これらの新しい手法は、環境に配慮した抽出法として挙げられています。

抽出された成分については、既存研究で抗炎症、抗酸化、抗菌、抗がん、抗糖尿病、心血管の保護などの作用が報告されていることがまとめられています。紹介されている事例には、動物実験、試験管内の実験、人を対象とした臨床研究が含まれます。例えば、オレンジの皮の水抽出物が肝臓に障害を起こしたラットで肝臓の指標を改善した研究、皮の抽出物が試験管内で虫歯の原因となる微生物を12〜15mg/mLの濃度で減らした研究、種の油が200μg/mLでカンジダ菌の増殖を大きく抑えた研究などです。

人を対象とした例としては、オレンジの搾りかすを使った飲料を朝食時に飲んだ過体重の男性で、高糖質・高脂肪の朝食とその次の食事の後の血糖の上がり方が抑えられたという臨床研究が取り上げられています。

廃棄物を「資源」として扱う視点

この総説が示しているのは、かんきつの皮や種、搾りかすが、単なる処分の対象ではなく、食物繊維や精油、フラボノイドなどを含む資源になりうるという見方です。廃棄物の有効活用は、環境への負担を減らすことと、新たな価値を生み出すことの両方につながると著者らは位置づけています。

そのうえで著者らは、機能性食品への応用を支えるために、抽出方法の改良、新しい成分の発見、そしてこれらの成分がどのような仕組みで働くのかの解明に向けた研究を続ける必要があると結論づけています。

原著論文の著者・所属:Monika(Department of Food Technology and Nutrition Lovely Professional University Phagwara Punjab India)、Rhythm Kalsi(Department of Food Technology and Nutrition Lovely Professional University Phagwara Punjab India)、Jasleen Kaur Bhasin(Department of Food Technology and Nutrition Lovely Professional University Phagwara Punjab India)、Rafeeya Shams(Department of Food Technology and Nutrition Lovely Professional University Phagwara Punjab India)、Kshirod Kumar Dash(Department of Food Engineering and Technology Ghani Khan Choudhury Institute of Engineering and Technology Malda West Bengal India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Monika, Rhythm Kalsi, Jasleen Kaur Bhasin, et al. Valorization of Citrus Waste for Recovery of Nutritional and Bioactive Compounds: A Comprehensive Review. Future Postharvest and Food 2026-09-28. DOI: 10.1002/fpf2.70061. 原著ライセンス:CC BY.