この研究は、スロバキア、アイルランド、ガーナの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Chemistry International
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
リキュールなどの酒類の工業的な製造では、茶葉や木片、乾燥した花などの植物原料をエタノールを含む蒸留酒に漬け込み、香りや成分を引き出す「浸漬(マセレーション)」が行われます。この工程の後には、使い終わった植物原料が「搾りかす(マール)」として大量に残ります。こうした残りかすには、まだ生理活性をもつ成分が含まれている可能性があります。
研究チームは、スロバキアのリキュール製造会社で使われている植物原料を対象に、浸漬後の残りかすにどのような成分がどの程度残っているのかを調べました。
何をどのように調べたか
分析の対象は6種類の試料です。浸漬後の緑茶と紅茶、浸漬前と浸漬後のオーク材のチップ、浸漬前と浸漬後の乾燥花のブレンドが含まれます。
著者らはこれらの試料について、乾物量、灰分(燃やした後に残る無機質の量)、粗脂肪、ポリフェノール全体の量、フラボノイド、フェノール酸、抗酸化活性を測定しました。あわせて、茶に含まれるカテキン類とカフェインの組成、ミネラルの組成も調べています。さらに、多数の測定値をまとめて試料どうしの違いを把握するため、主成分分析と階層的クラスター分析という統計手法を用いました。どちらも、似た特徴をもつ試料をまとまりとして見分けるための手法です。
主な結果
6試料のうち、浸漬前の乾燥花ブレンドはフラボノイドの含有量が最も多く、乾物1グラムあたりケルセチン換算で19.18ミリグラムでした。灰分も最も多く、6.50%でした。
浸漬後の緑茶と紅茶の残りかすからは、エピカテキン、カフェイン、エピガロカテキンガレートが検出されました。著者らは、これらの成分が工業的なエタノール浸漬で完全には抽出されきっていないことを示すものだとしています。
統計解析では、主成分分析で全体のばらつきの89.9%が説明されました。階層的クラスター分析の結果とあわせると、試料は植物の種類と、浸漬前か浸漬後かによって区別されることが示されました。
測定項目どうしの関係では、灰分とフラボノイド量の間、ポリフェノール全体の量と抗酸化活性の間に、統計的に有意な正の相関がみられました。ただし著者らは、これらの関連を因果関係の証拠と解釈すべきではないと明記しています。
重金属については、浸漬後の乾燥花で鉛(乾物1キログラムあたり2.46ミリグラム)とカドミウム(同0.65ミリグラム)が最も高い値でした。それでも、測定されたいずれの値も、この研究で参照した基準上限値を下回っていたと報告されています。
研究が示すこと
この研究は、リキュール製造で浸漬に使われた後の植物の残りかすにも、植物の種類に応じた成分が残っていることを示しました。著者らは、こうした残りかすが、残存する生理活性成分の回収や有効活用をめざす今後の検討の対象になりうると位置づけています。
著者:Veronika Šimora(AgroBioTech Research Centrum Slovak University of Agriculture in Nitra Nitra Slovakia)、Ľuboš Harangozo(Institute of Food Sciences Faculty of Biotechnology and Food Sciences Slovak University of Agriculture in Nitra Nitra Slovakia)、Július Árvay(Institute of Food Sciences Faculty of Biotechnology and Food Sciences Slovak University of Agriculture in Nitra Nitra Slovakia)、Anton Monka(Tatra Distillery s.r.o. Kežmarok Slovakia)、Hana Ďúranová(AgroBioTech Research Centrum Slovak University of Agriculture in Nitra Nitra Slovakia)、Emmanuel Duah Osei(School of Food Science and Environmental Health Technological University Dublin City Campus Dublin Ireland)、Newlove Akowuah Afoakwah(Department of Food Science and Technology Faculty of Agriculture, Food and Consumer Sciences Nyankpala Campus University for Development Studies Tamale Ghana)、Eva Ivanišová(Food Incubator AgroBioTech Research Centrum Slovak University of Agriculture in Nitra Nitra Slovakia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Veronika Šimora, Ľuboš Harangozo, Július Árvay, et al. Evaluation of Nutritional and Bioactive Compounds in Tea and Botanical Marc Following Industrial Liqueur Maceration. Food Chemistry International 2026-10-06. DOI: 10.1002/fci2.70094. 原著ライセンス:CC BY.