著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Indo Green Journal
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:流行グルメの小さな店は成り立つのか
インドネシアでは、若い世代を中心に「いま流行りの食べ物」を扱う飲食ビジネスが伸びています。SNSで食の情報に触れ、見た目の良い料理を写真や動画で共有する習慣が、こうした流行を後押ししていると論文は説明しています。
研究チームが取り上げたのは、北スマトラ州の大都市メダンで2025年に営業を始めた零細の飲食事業「Dimsum Mentai Bakar Jesi」です。中国由来の点心(蒸し餃子・焼売のような料理)に日本由来の明太ソースをかけ、バーナーで炙って仕上げる商品を販売しています。創業者は起業学を学ぶ大学生です。
著者らは、この事業がどのような販売戦略をとっているか、資金面から見て事業として成り立つか(事業の採算性)、そして成功の鍵と課題は何かを明らかにすることを目的としました。メダンの流行グルメ事業について、デジタル販売戦略と収支の分析を組み合わせて検討した点を、論文は研究の新しさとしています。
調べ方:一つの店を深く観察する事例研究
研究は2026年1月から3月にかけて行われました。一つの事業に焦点を絞って詳しく描き出す「事例研究」という手法で、数値の統計処理よりも、実態の記述と解釈を重視する質的な研究です。
研究者は製造・販売・宣伝の現場に自ら参加して観察し、経営者や調理・製造・宣伝の担当者に聞き取りを行いました。さらに帳簿やSNSの投稿内容などの資料を集め、店頭で購入した客への聞き取りや、Googleフォームを使ったオンライン調査(67人が回答)も実施しています。異なる情報源の内容を突き合わせて、データの確かさを確かめたとしています。
分析では、商品・価格・販売場所・宣伝の四つの観点から販売戦略を整理し、事業の強みと弱み、外部の好機と脅威を洗い出す「SWOT分析」も行いました。採算性については、初期費用や運営費、売上の見通しを計算し、費用と売上がちょうど釣り合う販売量である「損益分岐点」を求めています。
主な結果:手頃な価格とSNS宣伝が強み、日持ちの短さが弱み
商品は鶏肉とエビの2種類で、鶏肉は1人前(点心4個)1万ルピア、エビは1万2千ルピアです。明太ソースはマヨネーズやチリソース、特製の調味料を合わせたもので、炙ることで香ばしい風味を出しています。販売はInstagramやWhatsApp、料理配達サービスを通じたオンラインのほか、歩行者天国のイベントや小規模事業者向けの即売会でも行われていました。宣伝では、炙る様子の動画や客の感想、プレゼント企画などをInstagramやTikTokで発信していました。
オンライン調査では、回答者の48.6%が17〜25歳、46.7%が大学生でした。また82.8%が1人前8千〜1万2千ルピアの価格帯を好むと答えており、著者らはこれを、低めの価格設定が若い客層に合っている根拠と捉えています。論文によると、主な競合店の価格は1万5千〜4万ルピアでした。
SWOT分析では、商品の珍しさと手頃な価格、保存料を使わない材料、活発なSNS宣伝などが強みとされました。一方、最大の弱みは日持ちの短さで、常温では最長2〜4時間しかもたないと報告されています。ほかに、炙りに技術と専用器具が要ること、生産量が限られること、営業許可などの法的手続きが未整備であることも弱みに挙げられました。脅威としては、激しい競争、原材料価格の変動、流行の移り変わりの速さが指摘されています。
収支面では、初期の設備費は合計117万ルピアでした。損益分岐点は年間9,419食(売上約9,400万ルピア)で、1日あたり約26食に相当します。調査期間中の実際の販売は1日平均33食で、著者らは損益分岐点を上回って営業していると評価しています。2026年の計画では販売1万2,600食、売上1億2,120万ルピアを見込み、初年度の純利益は605万700ルピアと試算されました。一方で、売上に占める原価の割合が62.4%と高く、純利益率も4.99%と薄いことを、著者らは注意すべき点として挙げています。
研究が示すこと
著者らは、この事業がSNSと対面販売を組み合わせた戦略によって若い世代に届いており、採算面でも見込みがあると結論づけています。そのうえで、冷凍商品の開発、味の種類の拡充、原材料の仕入れや作業の効率化、営業許可やハラール認証などの手続き、販売拠点の拡大を提言しています。
この研究は、一つの小さな店を3か月間という短い期間で調べたものであり、その点は著者ら自身も限界として認めています。それでも、流行の食べ物を扱う零細事業にとって、手頃な価格とSNSでの発信が客を集める力になる一方、日持ちの短さや薄い利益が事業を続けるうえでの課題になるという姿を、具体的な数字とともに描き出しています。
原著論文の著者・所属:Putri, Jesicah(Universitas Islam Sumatera Utara, Indonesia)、Yusrita, Yusrita(Universitas Islam Sumatera Utara, Indonesia)、Indria, Tika(Universitas Islam Sumatera Utara, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Putri, Jesicah, Yusrita, Yusrita, Indria, Tika Analisis Strategi Pemasaran dan Kelayakan Usaha Dimsum Mentai Bakar Jesi di Kota Medan. Indo Green Journal 2026-08-16. DOI: . 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。