著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref

研究の目的:どのバラがお酒づくりに向くのか

食用バラの花びらには、糖や、ポリフェノールと呼ばれる植物成分、色のもとになる色素が多く含まれています。一方で論文によると、どの品種がお酒づくりに向いているかを体系的に比べた研究は限られており、加工の方法ができあがったお酒の香りにどう影響するのかもよく分かっていませんでした。

そこで研究チームは、食用バラの品種を比較して原料に適した品種を選び、その品種を使って2種類のバラ酒の製法条件を検討しました。1つははちみつを加えて発酵させるお酒、もう1つは花びらをアルコールに漬け込んで成分を移す浸漬酒です。

6品種の比較で選ばれた「滇紅」

研究チームは6品種の食用バラについて、色素の特徴、生理活性を持つとされる成分、抗酸化能(試験で測った、酸化を抑える働きの強さ)、糖の組成を調べました。

その結果、ハマナス系の品種「滇紅(Dianhong)」が、赤や紫の色素であるアントシアニンと、ポリフェノールの一種であるフラボノイドの含有量がいずれも最も高く、抗酸化能も最も強かったと報告されています。糖の含有量は、比較した品種の一つであるロサ・センティフォリアと同程度でした。この結果から、滇紅がお酒づくりの原料として選ばれました。

2種類のバラ酒の製法条件

はちみつ発酵酒では、仕込み時の糖濃度を20%、酵母の添加量を1リットルあたり0.30グラム、発酵温度を25℃とした条件が最もよい結果になったと報告されています。この条件でできたお酒はアルコール度数10.1%で、花の香りとお酒らしい香りが調和し、典型的なバラ色の赤い色をしていました。

浸漬酒では、花びらと液体の比率を重量対容量で1対20、漬け込みに使うアルコールの濃度を40%、漬け込み期間を60日とした条件がよい結果を示しました。できあがったお酒はオレンジがかった赤色で、口当たりがまろやかで、はっきりとしたバラの香りがあったとされています。

香り成分の分析と研究の意味

研究チームは、香り成分を吸着して集め、二段階で細かく分離したうえで種類を特定する分析手法を使い、花びらとお酒から合わせて272種類の揮発性成分(香りのもとになる、気体になりやすい成分)を確認しました。どちらのお酒でも、エステル類とアルコール類が最も多い成分グループでしたが、発酵と浸漬では香り成分の構成がそれぞれ異なる形で形づくられていたと報告されています。

著者らは、これらの結果がバラ由来の製品をつくる際の原料選びと加工方法を考えるうえで、実際的な参考になるとしています。品種によって色素や成分に違いがあり、同じ品種でも発酵させるか漬け込むかで色や香りの性格が変わることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Lianqi Cui(College of Horticulture, Anhui Agricultural University, Hefei 230061, China)、Wanwan Liu(College of Horticulture, Anhui Agricultural University, Hefei 230061, China)、Zhe Dong(College of Horticulture, Anhui Agricultural University, Hefei 230061, China)、Jingxuan Wu(College of Horticulture, Anhui Agricultural University, Hefei 230061, China)、Haiwei Zhang(School of Food and Nutrition, Anhui Agricultural University, Hefei 230031, China)、Dongliang Wang(College of Horticulture, Anhui Agricultural University, Hefei 230061, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lianqi Cui, Wanwan Liu, Zhe Dong, et al. Cultivar Screening and Process Optimization for Quality-Driven Development of Honey-Fermented and Macerated Rose Wines. Foods 2026-10-01. DOI: 10.3390/foods15203597. 原著ライセンス:CC BY.