著者の所属・活動拠点の国は、スペインです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:調査データで食事と病気の関係を読み解く難しさ

肥満や過体重、高血圧、2型糖尿病は同じ人に重なって起こりやすく、心臓や血管の病気のリスクを高めます。スペインでも成人の半数以上が過体重であるなど、大きな公衆衛生上の課題とされています。食事はこうした病気に影響しうる要因のひとつで、論文によれば、工業的に作られた「超加工食品」は前向き研究などで肥満、糖尿病、高血圧などとの関連が報告されてきました。超加工食品とは、精製でんぷん、糖、油脂、塩、添加物などを組み合わせて工場で作られる、日持ちがよく食べやすい食品を指します。

ただし、国の健康調査で超加工食品の摂取を調べるのは簡単ではありません。多くの調査には、加糖飲料、菓子・パン類、ファストフード、塩味スナックといった一部の食品をどのくらいの頻度で食べるかという質問しかなく、超加工食品の摂取量全体を測ることはできません。研究チームは、これらの質問を超加工食品の多い食習慣を示す「目安(代理指標)」として扱い、超加工食品の摂取量そのものとは区別すべきだと強調しています。

もうひとつの問題は時間の前後関係です。食事と病気を同時に尋ねる調査では、肥満や高血圧、糖尿病と診断された人が医師の助言を受けて甘い飲み物やファストフードを控えたり、好ましくない食品を少なめに申告したりすることがあります。すると、本来は害のある食品が、見かけ上は病気の少なさと結びついて見えることがあります。こうした、病気が食習慣を変えることで生じるゆがみは「逆の因果関係」と呼ばれます。研究チームは、2023年のスペイン全国健康調査を使い、15歳以上の人々の体格・病気と食習慣を描き出すとともに、こうした代理指標と心血管・代謝疾患との関連を調べ、年齢や診断後の変化によるゆがみの兆候があるかを検討しました。

何を調べたか

分析対象は、スペイン保健省と国立統計局による全国健康調査の成人票に回答した15歳以上の2万1032人です。分析ごとに必要な情報がそろった約1万7000〜1万8000人のデータを使い、国全体の姿を反映するよう重み付けをして集計しました。病気は調査時点で抱えているものとして扱い、過体重(BMI25以上)と肥満(BMI30以上)は調査の体格区分から、高血圧と糖尿病は医師に診断されたという本人の申告から判定しました。過体重と高血圧が同時にある状態も、ひとつの指標として調べています。

食事については、菓子・パン類、加糖飲料、ファストフード、塩味スナック・フライドポテトの4項目を週1回以上食べるかどうかで数え、0〜4点の「超加工食品の目安スコア」を作りました。あわせて、果物と野菜を毎日食べるか、豆類と魚を週1回以上食べるかで「保護的な食事スコア」も作り、加工肉の摂取も別に扱いました。分析では年齢、性別、学歴、職業階層、余暇の運動、喫煙、飲酒の影響を統計的に取り除いています。

さらに研究チームは、ゆがみを探るための追加分析を行いました。自分の健康状態を「良い」と答えた人と「普通・悪い」と答えた人で結果を比べる分析や、心筋梗塞、脳卒中、がんなど食事制限につながりやすい重い持病のある人を除いた分析などです。

主な結果:年齢を考慮すると関連の向きが逆転した

重み付けした推計では、過体重は53.6%、肥満は14.7%、高血圧は23.9%、糖尿病は7.4%、過体重と高血圧の両方がある人は17.1%でした。食習慣では、ファストフードを週1回以上食べる人が38.0%、超加工食品の目安スコアが高い(3〜4点)人が34.1%でした。

目立ったのは、年齢による正反対の傾向です。高血圧は15〜17歳の0.4%から75歳以上では60.4%に、糖尿病は0.6%から23.8%に増えました。一方、超加工食品の目安スコアが高い人は62.1%から8.4%へ、ファストフードを週1回以上食べる人は65.8%から9.6%へと減っていました。若い人ほどファストフードをよく食べ、高齢の人ほど病気が多いため、単純に比べるとファストフードが病気の少なさと結びついて見えてしまいます。実際、ファストフードと糖尿病の関連を示すオッズ比(ある条件で病気がある見込みを、ない場合と比べた指標で、1より大きいと関連が強いことを示す)は、何も調整しないと0.58でしたが、年齢、社会経済的な条件、生活習慣、ほかの食事を順に考慮すると1.33まで上がりました。

すべての要因を考慮した分析では、週1回以上のファストフードが最も一貫して好ましくない結果と結びついていました。オッズ比は過体重で1.20、肥満で1.28、高血圧で1.18、糖尿病で1.33、過体重と高血圧の両方がある状態で1.22でした。超加工食品の目安スコアが高い人は過体重のオッズ比が1.16、加工肉を週1回以上食べる人は過体重で1.18、肥満で1.25でしたが、加工肉と高血圧・糖尿病の間には一貫した関連はみられませんでした。

一方で、加糖飲料と糖尿病、菓子・パン類といくつかの病気の間には、調整後も逆向きの関連が残りました。加糖飲料と糖尿病の逆向きの関連は、健康状態を「良い」と答えた人でも残っていました(オッズ比0.49)。研究チームはこれを、診断後に甘い飲み物を控えたことや申告の偏りを反映している可能性が高いと解釈し、加糖飲料が糖尿病を防ぐという生物学的な関係とはみていません。また、重い持病のある4107人を除くと、ファストフードと糖尿病の関連はオッズ比1.46とやや強まりました。研究チームは、診断後の食事制限などが関連を弱めて見せている可能性と矛盾しない結果だとしています。

この研究が示すこと

著者らは、ある時点の調査データでは、年齢構成の違いや診断後の食習慣の変化によって、食事と病気の関連が実際とは逆向きに見えることがあると指摘しています。そのうえで、要因を丁寧に調整すると、ファストフードを週1回以上食べることが肥満や糖尿病を中心に心血管・代謝疾患と一貫して結びついていたと報告しています。

ただし、食習慣と病気を同時に尋ねた調査であり、食事の指標も頻度にもとづく代理指標であるため、これらの結果は因果関係を確かめたものではありません。ゆがみを探る追加分析も、その可能性を裏付ける手がかりとして示されています。この研究は、全国調査のデータから食事と健康の関係を読み取る際に、年齢や診断後の変化によるゆがみを考慮する大切さを具体的な数値で示しています。

原著論文の著者・所属:Natividad Cuadrado-Corrales(Department of Public Health and Maternal & Child Health, Faculty of Medicine, Universidad Complutense de Madrid, 28040 Madrid, Spain; Instituto de Investigación Sanitaria del Hospital Clínico San Carlos (IdISSC), 28040 Madrid, Spain)、José J. Zamorano-León(Department of Public Health and Maternal & Child Health, Faculty of Medicine, Universidad Complutense de Madrid, 28040 Madrid, Spain; Instituto de Investigación Sanitaria del Hospital Clínico San Carlos (IdISSC), 28040 Madrid, Spain)、David Carabantes-Alarcón(Department of Public Health and Maternal & Child Health, Faculty of Medicine, Universidad Complutense de Madrid, 28040 Madrid, Spain; Instituto de Investigación Sanitaria del Hospital Clínico San Carlos (IdISSC), 28040 Madrid, Spain)、Diana María Mérida(Department of Public Health and Maternal & Child Health, Faculty of Medicine, Universidad Complutense de Madrid, 28040 Madrid, Spain)、Andrés Bodas-Pinedo(Department of Public Health and Maternal & Child Health, Faculty of Medicine, Universidad Complutense de Madrid, 28040 Madrid, Spain; Instituto de Investigación Sanitaria del Hospital Clínico San Carlos (IdISSC), 28040 Madrid, Spain)、Mario Chico-Rodríguez(Department of Public Health and Maternal & Child Health, Faculty of Medicine, Universidad Complutense de Madrid, 28040 Madrid, Spain)、Ana Lopez-de-Andres(Department of Public Health and Maternal & Child Health, Faculty of Pharmacy, Universidad Complutense de Madrid, 28040 Madrid, Spain; Instituto de Investigación Sanitaria del Hospital Clínico San Carlos (IdISSC), 28040 Madrid, Spain)、Rodrigo Jiménez-Garcia(Department of Public Health and Maternal & Child Health, Faculty of Medicine, Universidad Complutense de Madrid, 28040 Madrid, Spain; Instituto de Investigación Sanitaria del Hospital Clínico San Carlos (IdISSC), 28040 Madrid, Spain)、Enrique Redondo-González(Department of Surgery, Faculty of Medicine, Universidad Complutense de Madrid, 28040 Madrid, Spain)、Lucia Fuentes-Arroyo(Department of Public Health and Maternal & Child Health, Faculty of Medicine, Universidad Complutense de Madrid, 28040 Madrid, Spain)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Natividad Cuadrado-Corrales, José J. Zamorano-León, David Carabantes-Alarcón, et al. Ultra-Processed Food-Rich Dietary Proxies, Dietary-Pattern Context, and Cardiometabolic Outcomes in Spain: Weighted Evidence Consistent with Age Confounding and Possible Reverse-Causality Bias from the 2023 Spanish Health Survey. Nutrients 2026-08-10. DOI: 10.3390/nu18162615. 原著ライセンス:CC BY.