著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Tropical Plantation Journal

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

米どころでも残る家庭の食の課題

インドネシアでは、食料は憲法で保障された基本的な権利とされています。食料安全保障とは、国全体から個人に至るまで、量・質・安全性・多様性・栄養などの面で十分な食料が行き渡り、手頃な価格で手に入る状態を指します。

南スマトラ州は国内有数のコメの産地として知られています。しかし研究チームは、地域全体の生産が多くても、それが一つひとつの家庭、とくに貧しい家庭の食の安定に直結するとは限らないと指摘します。同州のオガン・コメリン・ウル(OKU)県では、食生活の多様さや栄養バランスを示す「望ましい食事パターン(DDP)」の得点が2023年に88.4で、国の理想とされる100を下回っていました。

食料安全保障は一般に、食料が地域にあるかという「供給(入手可能性)」、家庭がそれを買ったり取りに行ったりできるかという「アクセス」、そして摂った食料をうまく生かす「利用」の三つの柱で考えられます。著者らは、OKU県の貧困世帯にとっては前の二つが主な壁になっていると考え、食料の供給とアクセスが貧困世帯の食料安全保障にどの程度関わっているのかを明らかにすることを目的としました。

100世帯へのアンケートで調べる

研究チームは2025年12月、OKU県に登録されている貧困世帯の中から無作為に選んだ100世帯にアンケート調査を行いました。質問票は「食料の供給」「食料へのアクセス」「世帯の食料安全保障」の三つについて、それぞれ10問ずつで構成されています。

集めた回答は、複数の要因が結果とどう結びついているかを同時に調べる統計手法(重回帰分析)で分析されました。その前段階として、質問が測りたい内容をきちんと測れているか、回答に一貫性があるかなども確認され、論文ではいずれも基準を満たしたと報告されています。

「手に入れる力」の方がより強く関わっていた

分析の結果、食料の供給と食料へのアクセスはどちらも、貧困世帯の食料安全保障と統計的に意味のある正の関係を示しました。つまり、供給やアクセスの評価が高い世帯ほど、食料安全保障の評価も高い傾向が見られたということです。論文はこれを、二つの要因が食料安全保障に「影響している」と表現しています。

二つを比べると、アクセスの方が結びつきは強く、分析上の係数は供給が0.312、アクセスが0.428でした。ここでいうアクセスとは、収入が足りているか、食料の値段が手頃か、店などへ行きやすいかといった、家庭が実際に食料を手に入れる力のことです。また論文によると、この二つの要因だけで、世帯ごとの食料安全保障の違いのおよそ6割を説明でき、残りは今回調べていない別の要因によるものとされています。

著者らは、アクセスが十分でなければ、地域に食料が十分あっても家庭はそれを得にくいと考察しています。

食料が「ある」だけでは足りない

この研究が伝えているのは、貧しい家庭の食の安定を考えるうえでは、地域に食料があるかどうかに加えて、家庭がそれを買い、届く範囲で手に入れられるかがより重要になり得るということです。著者らは結論として、貧困世帯の食料安全保障を高めるには、食料へのアクセスを改善することが欠かせないと述べています。

原著論文の著者・所属:Erni Efriyani(University of Baturaja)、Munajat Munajat(University of Baturaja)、Yetty Oktarina(University of Baturaja)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Erni Efriyani, Munajat Munajat, Yetty Oktarina The Influence of Food Availability and Food Access on Food Security among Poor Households in Baturaja City. Tropical Plantation Journal 2026-07-30. DOI: 10.56125/tpj.v5i2.93. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。