この研究は、ガーナ、イギリスの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Public Health Challenges
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜ医療従事者を対象に調べたのか
砂糖入り飲料(SSB)とは、砂糖やブドウ糖果糖液糖、蜂蜜などのカロリーのある甘味料を加えた飲み物のことで、世界保健機関(WHO)の定義では炭酸飲料、果汁入り飲料、スポーツドリンク、エネルギー飲料、砂糖を加えた紅茶やコーヒーなどが含まれます。論文の著者らは、こうした飲料の習慣的な摂取が非感染性疾患(NCDs)の要因として国際的に指摘されていることを背景に挙げています。
著者らによれば、ガーナではこれまで大学生や小学生を対象にSSBの摂取が多いことが報告されてきましたが、医療従事者がどの程度飲んでいるのか、どの種類を多く飲んでいるのかを調べた研究はありませんでした。ガーナ政府がSSBへの物品税を導入した際、医療従事者がその使用に反対する啓発活動の先頭に立っていたという経緯もあり、論文はその医療従事者自身の摂取実態を明らかにすることを目的に掲げています。調査対象は、ガーナ北部地域タマレ都市圏の医療従事者です。
どのように調べたか
研究チームは横断研究(ある一時点の状況を調べる設計)として、タマレ都市圏にある19の公立・私立の医療施設のうち、くじ引きで無作為に選んだ4施設で調査を行いました。コクランの式を用いて必要な標本数を算出し、各施設の職員名簿に識別番号を割り当ててコンピューターで生成した乱数列により対象者を選び、計345人が参加しました。対象には医師、医療助手、臨床検査技師、理学療法士、放射線技師、看護師・助産師、栄養士、薬剤師などが含まれています。データ収集は2023年5月から7月にかけて行われました。
調査には半構造化質問票が用いられ、性別・年齢・婚姻状況・民族・職種・収入・学歴といった社会人口学的な情報に加えて、SSBについての認知度や情報源、飲む理由、摂取頻度と量が尋ねられました。さらに、テレビ、パソコン、スマートフォンやタブレットに費やす時間(スクリーンタイム)も別の既存の質問票を用いて測定されています。解析では、記述統計に加え、スクリーンタイムとSSB摂取の関連を調べるためにカイ二乗検定が、摂取に寄与する要因を予測するためにロジスティック回帰が用いられました。研究は大学の倫理審査委員会の承認を受け、同意書に署名した人のみが参加しています。
報告された主な結果
参加者は20〜30歳が54.2%、女性が69.9%を占め、職種では看護師・助産師が69.3%と最も多くを占めました。SSBについては76.2%が知っていると答え、68.4%は自分で説明できると回答しています。情報源として挙げられたのは、ソーシャルメディア(26.7%)、電子メディア(16.7%)、紙媒体(14.8%)といったメディア各種と、同僚・友人(27%)でした。
一方で、これまでにSSBを飲んだことがあると答えた人は97.4%に達しました。飲む理由として最も多かったのは味(50.3%)で、次にエネルギー補給(21.7%)、渇きを癒すため(17.3%)が続きます。日単位・週単位の摂取頻度を合わせると、砂糖入りの紅茶やコーヒーが73.6%、甘味を加えた地元のジュース類が61.6%、通常の炭酸飲料が50.4%で、いずれも「まったく飲まない」と答えた人の割合を上回りました。ただしスポーツドリンクやエネルギー飲料については、まったく飲まない人が86.4%と多数でした。1回あたりの量は、地元のジュース類(45.5%)、炭酸飲料(55.2%)、スポーツ・エネルギー飲料(42.6%)で350mL(小瓶1本)が多く、砂糖入りの紅茶・コーヒーでは250mL(カップ1杯)が63.4%でした。
スクリーンタイムとの関連では、スマートフォンやタブレットの使用時間が甘味を加えた地元のジュース類の摂取と統計的に有意に関連し、テレビの視聴時間は通常の炭酸飲料、砂糖入りの紅茶・コーヒー、スポーツ・エネルギー飲料の摂取とそれぞれ有意に関連していたと報告されています。摂取の予測要因を調べたロジスティック回帰では、看護師、薬剤師、栄養士は地元のジュース類を飲む可能性が高く、既婚者は通常の炭酸飲料を飲む可能性が高いという結果が示されました。また女性と配偶者のいる人は、スポーツ・エネルギー飲料を飲む可能性が高いという結果でした。一方、テレビを視聴する時間は、期間にかかわらず砂糖入りの紅茶・コーヒーの摂取に対して保護的に働いていたと著者らは述べています。なお著者らは、横断研究という設計上、因果関係は立証できないこと、自己申告による想起の偏り(リコールバイアス)が結果に影響しうることを限界として挙げています。
この研究が示すこと
著者らは、参加者の多くがSSBについてよく知っていたにもかかわらず摂取の割合が高かったことから、医療従事者においても知識と行動のあいだに隔たり(behaviour gap)があることが示唆されると論じています。また、ガーナで導入された物品税だけではこれらの製品の購入を抑える効果が十分ではないように見える、とも述べています。
健康に関する知識を持ち、啓発を担う立場にある人々でも、味の好みやメディア接触、職場の食環境といった身近な条件が飲み物の選択を左右しうる——論文の報告はそうした実態を、ガーナ北部の医療従事者という具体的な集団について描き出しています。著者らは、この結果が医療従事者の添加糖摂取を減らすための施策づくりの手がかりになると位置づけています。
著者:Michael Akenteng Wiafe(Department of Dietetics University for Development Studies Tamale Ghana)、Hamza Sulemana(Department of Nutritional Sciences University for Development Studies Tamale Ghana)、Gabriel Libienuo Sowley Kalog(Department of Dietetics University for Development Studies Tamale Ghana)、Kwadwo Densi Amankwah(Department of Health Science Brunel University of London Uxbridge UK)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Michael Akenteng Wiafe, Hamza Sulemana, Gabriel Libienuo Sowley Kalog, et al. Predictors and Prevalence of Sugar‐Sweetened Beverages Consumption Among Health Care Professionals in Tamale, Ghana. Public Health Challenges 2026-09-01. DOI: 10.1002/puh2.70354. 原著ライセンス:CC BY.