日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、ガーナ北部の農家が有機肥料を使うかどうかだけでなく、管理する複数の畑のうち、どこに、どれだけ配分しているのかを調べました。従来の研究では世帯単位での利用に注目することが多い一方、同じ世帯でも畑によって肥料の使い方が異なるためです。
具体的には、自宅から畑までの移動時間、栽培する作物、農家が認識する土壌の肥沃さ、地域や土壌の違いが、有機肥料の利用の有無、世帯内での配分、単位面積当たりの施用量とどう関連するかを検討しました。また、鶏ふん、牛ふん、堆肥など、肥料の種類による違いも調べました。
何を、どのように調べたか
対象は、ガーナ北部の5地区から選ばれた40村の農家です。2023年作期について1,275世帯、2024年作期については、そのうち追跡できた1,260世帯の情報を使いました。耕作された畑の記録は、それぞれ3,230件と3,169件で、両年を通じて同じ畑として対応づけられたものは2,645区画でした。
調査員は聞き取りによって、畑ごとの作物、有機肥料の種類と使用量、移動時間、運搬方法、労働力の利用などを集めました。研究チームは、すべての畑での利用の有無、有機肥料を使った世帯がどの畑に配分したか、施用した畑での1ヘクタール当たりの量を分けて分析しました。同じ世帯が管理する畑どうしを比較する分析も行い、世帯に共通する条件を考慮しました。
主な報告結果
著者らによると、有機肥料を使った世帯の割合は2023年に9.8%、2024年に7.1%で、畑単位ではそれぞれ4.2%、3.1%でした。利用が翌年も続くとは限らず、2024年に利用した89世帯のうち、2023年にも利用していたのは20世帯、22.5%でした。
有機肥料は畑に均等に配分されていませんでした。トウモロコシを栽培する畑では使われやすく、自宅からの移動時間が長い畑では使われにくい関連が見られました。同じ世帯の畑どうしを比べても、トウモロコシ畑や移動時間の短い畑に配分されやすい傾向がありました。また、農家が肥沃だと認識している畑では、肥沃さが低いと認識している畑より利用されにくく、地域による違いも報告されました。
施用した畑での1ヘクタール当たりの量にも大きなばらつきがありました。中央値は2023年の1,976.8キログラムから、2024年には139.0キログラムへ低下していました。著者らの追加分析では、この年次差は少数の村の影響を強く受けていました。また、肥料別の分析では、移動時間が長いほど鶏ふんの単位面積当たりの施用量は少なく、堆肥では逆に多い関連が報告されました。ただし、堆肥などの種類別分析は対象数が少なく、探索的な結果とされています。
この報告が示すこと
研究チームは、有機肥料の利用を単に「使う・使わない」で捉えるのではなく、農家が畑の条件に応じて選択的に配分する行動として理解する必要があると結論づけています。そのため、すべての畑への一律の施用を前提とするのではなく、畑への行きやすさや地域の条件に応じた管理・支援が重要だと述べています。
一方、この分析が示すのは関連であり、因果関係ではありません。施用量は農家の自己申告に基づき、地域で使われる単位から重量に換算しているため、測定誤差が残る可能性があります。また、特定の畑への集中が、肥料の不足によるものか、前年までの施用効果を見込んだ意図的な配分なのかは区別できません。報告の要点は、世帯全体の利用状況だけでは見えない、畑ごとの配分の違いを捉えたことにあります。
原著論文の著者・所属:Yoshie Yageta(Japan International Research Center for Agricultural Sciences)、Guenwoo Lee(Japan International Research Center for Agricultural Sciences)、Joseph Agebase Awuni(University for Development Studies)、Satoshi Nakamura(Japan International Research Center for Agricultural Sciences)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yoshie Yageta, Guenwoo Lee, Joseph Agebase Awuni, et al. Heterogeneous allocation of organic fertilizer under spatial constraints: evidence from Northern Ghana. Frontiers in Sustainable Food Systems(出版社:Frontiers Media) 2026-09-22. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1938147. 原著ライセンス:CC BY.