著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Journal of Microbiology Biotechnology and Food Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ハラール(学名 Terminalia chebula)は、アーユルヴェーダなどの伝統医療で古くから使われてきた果実です。ポリフェノールの一種であるフェノール類やタンニンなど、さまざまな植物由来成分を含むことで知られています。一方で、生の果実は水分が多く湿気を吸いやすいため、成分を保ち、品質と微生物面の安全性を確保して長く保存するには乾燥が欠かせません。

ただし、果実の表面は厚くろう状の膜(クチクラ)に覆われており、水分が抜けにくい性質があります。従来の天日干しでは乾燥にむらが出やすく、色や栄養成分が損なわれやすいことも課題とされてきました。そこで研究チームは、乾燥前の処理の違いが乾燥時間や果実の品質にどう影響するかを比較し、さらに乾燥後の包装による保存性の違いも調べました。

何を調べたのか

研究チームは、インド・ヒマーチャル・プラデーシュ州の試験農場で収穫した「Kallar」系統のハラール果実を用いました。果実を丸ごとのものと薄切りにしたものに分け、それぞれに前処理を施しました。前処理は、85℃の湯に3分間浸すブランチング、160℃で6分間の塩煎り、0.5%水酸化ナトリウム溶液での煮沸、0.1%オレイン酸エチル溶液への5分間の浸漬などで、前処理をしない果実を比較対照としました。オレイン酸エチルは、ブドウなどの乾燥を速める目的で使われてきた脂肪酸エステルです。

乾燥方法は、太陽熱を利用する従来型の乾燥と、55℃に温度を管理した機械式のトレイ乾燥の2種類を比べました。乾燥後の果実について、乾燥にかかった時間、水分、糖や酸、ビタミンCにあたるアスコルビン酸、フェノール類、タンニン、抗酸化活性(試薬のラジカルをどれだけ消去できるかを示す割合)などを測定し、訓練を受けた10人の評価者が色・食感・味などを9段階で採点しました。

さらに、乾燥果実を綿袋、ジュート袋、アルミパウチに詰めて6か月間保存し、成分、官能評価、細菌やカビの数の変化を追いました。また、周囲の湿度と果実の吸湿の関係も調べ、品質が損なわれ始める湿度の目安を求めました。

主な結果

論文によると、温度を管理したトレイ乾燥では果実が22〜44時間で乾燥したのに対し、太陽熱による乾燥では38〜76時間かかりました。前処理の中では、オレイン酸エチルに浸した果実が最も短時間で乾燥しました。著者らは、オレイン酸エチルが果実表面のろう状の膜を弱めて細かな孔を広げ、水分が抜けやすくなったためと説明しています。また、薄切りの果実は丸ごとの果実より速く乾燥しました。

成分面では、オレイン酸エチルで前処理し、トレイ乾燥した丸ごとの果実が最も良い結果を示したと報告されています。この果実では乾燥重量100gあたりフェノール類が445.26mg、アスコルビン酸が17.03mg、抗酸化活性は93.96%でした。薄切りの果実よりも丸ごとの果実で抗酸化活性が高く保たれたことについて、著者らは果肉が酸素に触れにくかったためと考えています。官能評価でも、オレイン酸エチル処理の果実の評価が高く、トレイ乾燥の果実は太陽熱乾燥の果実より色・風味・食感・味で好まれました。

湿度の検討では、相対湿度60〜70%で果実が濃い褐色に変わり、70%を超えると柔らかくなってカビが生じたと報告されています。研究チームは、相対湿度70%を品質が崩れる臨界点、65%をその手前の危険点としました。

保存試験では、アルミパウチの効果が目立ちました。常温で6か月保存した後の水分は、綿袋で9.06%、ジュート袋で8.85%だったのに対し、アルミパウチでは8.54%にとどまりました。アルミパウチに入れた果実では細菌もカビも検出されませんでしたが、綿袋とジュート袋では3か月後にそれぞれ1gあたり10の3乗個と10の2乗個のカビが検出されました。保存期間が長くなると、どの包装でも風味の評価は下がりましたが、アルミパウチはその低下を抑える効果が大きかったとされています。

研究が示すこと

この研究は、ハラール果実の品質を保つには、乾燥前の処理、乾燥方法、乾燥後の包装という一連の工程をまとめて考えることが大切だと示しています。著者らは、0.1%オレイン酸エチルによる前処理とトレイ乾燥の組み合わせで、乾燥時間を短くしながらフェノール類やアスコルビン酸をよく保てたと結論づけ、保存には湿気・光・酸素を通しにくいアルミパウチが適していると報告しています。一方で、オレイン酸エチルが働く仕組みについては、より詳しい検証が必要だとも述べています。

原著論文の著者・所属:Preeti Chaudhary(Department of Food Science and Technology , College of Horticulture and Forestry , (Dr. YS Parmar University of Horticulture and Forestry) , Neri , Hamirpur (HP) - 177001 ( India ))、Priyanka Thakur(Department of Food Science and Technology , College of Horticulture and Forestry , (Dr. YS Parmar University of Horticulture and Forestry) , Neri , Hamirpur (HP) - 177001 ( India ))、Vivek Sharma(University Centre of Research and Development , Chandigarh University , Gharuan , Mohali (PB. ) India 140413)、RICHA SALWAN(Department of Basic Sciences)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Preeti Chaudhary, Priyanka Thakur, Vivek Sharma, et al. ENHANCING DRYING EFFICIENCY FOR IMPROVING THE QUALITY OF TERMINALIA CHEBULA RETZ.: IMPACT OF PRE-TREATMENTS. Journal of Microbiology Biotechnology and Food Sciences 2026-08-07. DOI: 10.55251/jmbfs.14012. 原著ライセンス:CC BY.