著者の所属・活動拠点の国は、ギニアです。

掲載誌:World Journal of Food Science and Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

リシノデンドロン・ヘウデロティ(Ricinodendron heudelotii)は、中部・西アフリカの森に育つ樹木です。その種子は「ンジャンサン」や「アクピ」と呼ばれ、料理の調味料やとろみ付けに伝統的に使われてきました。種子には油分が多く含まれ、新しい植物油の供給源として期待されています。研究チームによると、ギニアではこの植物の利用はほぼ伝統料理に限られています。加工や保存の知識が不足しているため、収穫後の損失も大きいといいます。

カメルーンやコートジボワールなど周辺国では研究が進んでいます。しかし著者らの知る限り、ギニアで地域の伝統製法による油の抽出と性質を調べた科学的研究はこれまでありませんでした。そこで研究チームは、ギニア南東部ンゼレコレの市場で売られている種子から伝統的な方法で油を取り出しました。そして、保存期間によって油の物理的・化学的な品質がどう変わるか、国際的な品質基準にどの程度合っているかを調べました。

どのように調べたか

研究チームは2024年8月、ンゼレコレの主要市場で種子5kgを商人から購入し、マトトにある国立品質管理局の検査室へ運びました。種子は選別して洗い、すりつぶして水と混ぜました。これを180℃で45分加熱した後に冷水を加え、表面に浮いた油を手作業で集めました。煮て浮かせる、昔ながらの方法です。

得られた油は遮光ガラス瓶4本に分けました。保存1日目、10日目、20日目、30日目にそれぞれ分析しています。測定項目は、水分、酸価、過酸化物価、けん化価、不溶性不純物、屈折率で、国際標準化機構(ISO)の方法とコーデックス委員会(国際食品規格)の基準を用いました。酸価は、油が分解して生じる「遊離脂肪酸」の量の目安です。過酸化物価は、油が酸化し始めた度合いを示します。けん化価は、油をせっけん化するのに必要な水酸化カリウムの量で、油を構成する脂肪酸の性質を反映します。

主な結果

この伝統製法で得られた油の収率は17.5%で、著者らはこれを限られた量だと評価しています。油の水分は保存とともに少しずつ減り、初日の0.076%から30日目には0.022%になりました。いずれもコーデックス基準の上限0.2%を下回っています。

酸価は本文の結果で3.66〜4.09mg KOH/g、平均3.93でした。10日目に最も高くなりましたが、保存期間の間で統計的に意味のある差は認められませんでした。著者らは、この値がコーデックス基準(4.0以下)の上限付近にあると指摘しています。過酸化物価は9.60〜10.72mEqO2/kgの範囲で変動し、こちらも統計的な有意差はありませんでした。論文の要旨では、保存中の過酸化物価や酸価の変化を、酸化のしやすさや遊離脂肪酸の増加を示すものとしてまとめています。

けん化価は約262〜266mg KOH/gでした。初日の値は10日目・20日目と有意に異なりましたが、30日目には初日に近い値に戻っています。不溶性不純物は0.082〜0.089%で、コーデックス基準の0.05%以下をわずかに上回りました。ただし著者らは、量は少なく衛生面の品質を損なうものではないとしています。保存期間による不純物量の差も見られませんでした。

この研究が示すこと

著者らは、伝統製法で得たリシノデンドロン油は収率こそ限られるものの、物理的・化学的な品質はおおむね満足できると結論づけています。一方、保存中に見られた変化は、酸化や遊離脂肪酸の発生を抑える保存方法の改善が必要であることを示すとしています。研究チームは、この結果を、ギニアで木材以外の森林資源を活用していくための最初の科学的な土台と位置づけています。

原著論文の著者・所属:Moriken Sangare(Department of Food Technology and Control, Higher Institute of Sciences and Veterinary Medicine of Dalaba, Dalaba, Guinea)、Ibrahima Kaba(Department of Food Technology and Control, Higher Institute of Sciences and Veterinary Medicine of Dalaba, Dalaba, Guinea)、Ibrahima Camara(Department of Chemistry, Julius Nyerere University of Kankan, Kankan, Guinea)、Pascal Molmou(Department of Food Technology and Control, Higher Institute of Sciences and Veterinary Medicine of Dalaba, Dalaba, Guinea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Moriken Sangare, Ibrahima Kaba, Ibrahima Camara, et al. Evaluation of the Effects of Storage on the Physico-chemical Quality of Traditionally Extracted Ricinodendron Heudelotii Oils. World Journal of Food Science and Technology 2026-08-24. DOI: 10.11648/j.wjfst.20261003.11. 原著ライセンス:CC BY.