著者の所属・活動拠点の国は、スペインです。
掲載誌:Journal of Experimental Botany
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
培養で増やした苗を、栽培環境へ慣らす
研究チームは、組織培養で増やしたバナナ苗を外部の栽培環境に慣らす段階で、有用な微生物を与える処理が、生育や病気への抵抗性にどう影響するかを調べました。対象はキャベンディッシュ品種と、フザリウム萎凋病を引き起こす病原菌の亜熱帯レース4(Foc-STR4)です。
培養苗は、無菌的な環境から移植先の環境へ移るための慣らし期間を必要とします。著者らはこの期間に、根と共生する菌根菌を主体とした微生物資材を与える「バイオハードニング」を実施しました。処理の有無と病原菌の接種の有無を組み合わせ、生育、病気による損傷、葉の養分、防御に関わる遺伝子の働きなどを比較しました。
初期の生育を促し、病気による損傷を軽減
処理した苗では、根の内部に菌根菌の共生構造が確認されました。慣らし期間には、未処理の苗に比べて根の重さや地上部の長さが有意に大きくなり、とくに根の発達が促されました。最終調査でも、処理した苗では葉が有意に長く、幅も広くなっていました。
病原菌を接種すると、生育の低下や、地下部の球茎組織が壊死する症状が生じました。しかし、事前に処理した苗では、未処理の感染苗より葉の長さ・幅と、葉の付け根が重なってできる「偽茎」の直径が有意に大きく、病原菌を接種していない苗に近い値を保っていました。球茎の壊死面積は、未処理の感染苗の0.69平方センチメートルに対し、処理した感染苗では0.34平方センチメートルで、著者らは約50%の減少を報告しています。
また、感染した苗同士を比べると、処理した苗では葉に含まれる窒素、リン、カリウムの濃度が有意に高くなりました。一方、病原菌を接種しない条件では、最終調査時の多くの養分に有意な差はありませんでした。
病原菌への防御反応にも変化
研究チームは、処理を受けた苗が病原菌にさらされると、防御に関わる複数の遺伝子が、未処理の感染苗より強く働くことも報告しました。著者らは、この結果を、微生物との共生が植物をあらかじめ備えさせ、感染時の防御反応を高める「プライミング」を支持するものと解釈しています。
この研究は、苗を環境に慣らす段階での微生物処理が、初期の生育を助けるだけでなく、Foc-STR4による被害の軽減にもつながることを示しています。著者らは、その保護作用には、生育や養分の獲得、防御反応の備えなど、複数の働きが関わると考えています。
原著論文の著者・所属:Raquel Correa-Delgado(Unidad de Protección Vegetal, Instituto Canario de Investigaciones Agrarias, ICIA , Santa Cruz de Tenerife 38297, Canary Islands ,)、Juan Manuel García-Ramírez(Departamento de Microbiología del Suelo y Sistemas Simbióticos, Estación Experimental del Zaidín, CSIC , Granada 18008 ,)、Patricia Brito-López(Unidad de Protección Vegetal, Instituto Canario de Investigaciones Agrarias, ICIA , Santa Cruz de Tenerife 38297, Canary Islands ,)、Victor Flors(Department of BBiCN, Universidad Jaume I , Castellón 12006 ,)、Federico Laich(Unidad de Protección Vegetal, Instituto Canario de Investigaciones Agrarias, ICIA , Santa Cruz de Tenerife 38297, Canary Islands ,)、María del C Jaizme-Vega(Unidad de Protección Vegetal, Instituto Canario de Investigaciones Agrarias, ICIA , Santa Cruz de Tenerife 38297, Canary Islands ,)、Jesús Mercado-Blanco(Departamento de Microbiología del Suelo y Sistemas Simbióticos, Estación Experimental del Zaidín, CSIC , Granada 18008 ,)、María José Pozo(Departamento de Microbiología del Suelo y Sistemas Simbióticos, Estación Experimental del Zaidín, CSIC , Granada 18008 ,)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Raquel Correa-Delgado, Juan Manuel García-Ramírez, Patricia Brito-López, et al. Getting ready for outdoors: biohardening boosts banana plantlet performance and induced resistance to Fusarium wilt (Subtropical Race 4). Journal of Experimental Botany 2026-08-27. DOI: 10.1093/jxb/erag413. 原著ライセンス:CC BY.