著者の所属・活動拠点の国は、ロシアです。

掲載誌:Agrarian science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

家禽の生産では、鳥の生存率や生産性を高めることに加え、安全で栄養価の高い肉を生産することが課題です。ウズラの飼育は比較的新しい分野で、生産性を高めるために、不足しがちな栄養素を補う飼料添加物が使われています。著者らは、なかでも植物由来の添加物を有望なものと位置づけています。

この研究で取り上げたのは、小麦胚芽を原料とする飼料添加物「ゲルミビット」です。ビタミン、アミノ酸、ミネラルを含みます。研究チームの目的は、ゲルミビットを与えて育てたウズラの肉と内臓が、獣医衛生上・衛生上の基準を満たすかを評価することでした。研究が行われたロシアのオレンブルク州には石油・ガス産業や冶金産業が多く、論文は、排出物に由来する重金属が食物連鎖を通じて畜産物に蓄積するおそれにも触れています。

何を調べたか

実験は2024〜2025年、オレンブルク国立農業大学の飼育施設で行われました。ふ化したばかりのニホンウズラを、1群25羽の3群に分けました。対照群には標準的な飼料を与えました。第1試験群には飼料重量の2.0%、第2試験群には4.0%のゲルミビットを追加して与えました。

42日齢で全羽を処理し、処理から24時間後と5日後に、胸肉、もも肉、肝臓、心臓、砂肝(筋胃)を調べました。試料は検査まで2〜4℃で保管しました。

評価は主に三つの観点から行われました。一つ目は、見た目、におい、肉の弾力、肉から作ったスープの澄み具合などに加え、化学的・顕微鏡的な検査による肉の鮮度です。二つ目は、鉛、カドミウム、水銀、ヒ素といった有害元素の含有量です。三つ目は、サルモネラ菌やリステリア菌の有無と、一般的な細菌数です。基準には、ユーラシア経済連合の家禽肉安全規則などが用いられました。

主な結果

鮮度の検査では、どの群でも、24時間後・5日後とも肉の表面は乾いており、筋肉には弾力がありました。肉から作ったスープは澄んで香りがありました。胸肉のpH(酸性・アルカリ性の度合い)は、24時間後で5.80〜5.82でした。5日後はやや上がり、対照群で5.92、試験群で5.89〜5.90となりました。論文はこれを良質な肉に相当すると報告しています。たんぱく質や脂肪の分解の程度を示す揮発性脂肪酸の量も、新鮮な肉に特徴的な範囲でした。顕微鏡で観察した胸肉の細菌は、1視野あたり5日後でも1.75〜2.20個でした。新鮮な肉の目安は10個です。もも肉でも同様の結果が得られ、調べた物理化学的指標のいずれでも、対照群と試験群の間に統計的に意味のある差はありませんでした。

有害元素については、肉と内臓のいずれからも水銀とヒ素は検出されませんでした。肉に含まれる鉛は、胸肉で1kgあたり0.15〜0.17mg、もも肉で0.10〜0.13mgでした。許容基準は0.5mgです。カドミウムは0.019〜0.029mgで、基準の0.05mgを下回りました。肝臓・心臓・砂肝では、鉛が0.15〜0.26mg、カドミウムが0.10〜0.19mgでした。内臓の基準(鉛0.6mg、カドミウム0.3mg)を大きく下回っています。

微生物検査では、サルモネラ菌とリステリア菌はいずれも検出されませんでした。室温から体温程度でよく増える一般的な細菌の数は、衛生状態の目安になります。この細菌数は、すべての試料で衛生基準を満たしていました。たとえば肝臓では、1gあたり24時間後に5.0〜9.0万個、5日後に20万〜30万個でした。許容上限は100万個です。

研究が示すこと

著者らは、ゲルミビットを飼料重量の2.0〜4.0%与えても、ウズラの肉と内臓の獣医衛生上・衛生上の指標に悪影響は見られなかったと結論づけています。保存5日後までの鮮度、有害元素、微生物のいずれも基準を満たしていたことから、論文はこうした製品を制限なく食用にできるとしています。

この研究は、肉質の向上を示すものではありません。植物由来の飼料添加物を使って育てたウズラの肉や内臓が、安全面の基準を満たすかを確かめた報告として位置づけられます。

原著論文の著者・所属:L. Yu. Topuria(Orenburg State Agrarian University)、G. M. Topuria(Orenburg State Medical University of the Ministry of Health of the Russian Federation)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):L. Yu. Topuria, G. M. Topuria. Veterinary, health and hygiene assessment of quail slaughter products when used in the diet of a plant feed additive. Agrarian science 2026-08-09. DOI: 10.32634/0869-8155-2026-408-07-15-22. 原著ライセンス:CC BY.