著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:World Journal of Pharmaceutical Research
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
インドの伝統医学アーユルヴェーダでは、食事(アーハーラ)は睡眠や節度ある生活と並ぶ「生命の三本柱」のうち、最も重要なものとされています。著者らは、過去半世紀の工業化や都市化によって、新鮮な穀物や豆、季節の野菜を中心とした伝統的な食事が、超加工食品やファストフードに置き換わってきたと指摘しています。
論文によると、現代の栄養疫学は超加工食品の多い食事と、肥満、2型糖尿病、心血管疾患などの非感染性疾患との関連を示してきました。一方で公衆衛生の取り組みは、カロリーや栄養素の割合といった「量」の指標に偏りがちだと著者らは述べています。そこで研究チームは、食べ物の「質」や消化への影響を重視するアーユルヴェーダの食事学の枠組みを使って、現代の加工食品とファストフード文化を評価することを目的としました。
何を調べたか
この研究は、新たに人を対象とした実験や調査を行ったものではなく、文献にもとづく質的な総説です。著者らはまず、『チャラカ・サンヒター』『スシュルタ・サンヒター』『アシュターンガ・フリダヤ』などのアーユルヴェーダ古典を、伝統的な注釈とあわせて読み解きました。
取り上げた主な概念には、食べ物の作用を左右する8つの要素、食べ方の規則、組み合わせが悪いとされる食事(ヴィルッダーハーラ)、調理後に時間がたって質が落ちた食事(パリユシタ・アーハーラ)、消化の力(アグニ)の低下、消化しきれずに体にたまるとされる有害な物質(アーマ)などがあります。
次に、1990年から2026年までの現代の医学・食品科学の文献を、超加工食品、食品添加物、乳化剤と腸内細菌、終末糖化産物、メタボリックシンドローム、慢性的な軽い炎症といったキーワードで検索しました。そのうえで、古典の概念と現代の知見を対応づける表や図を作り、両者を照らし合わせています。
主な報告内容
著者らは、古典に記された「質の落ちた食事」と、現代の超加工食品に関する知見の間に、多くの共通点が見られたと報告しています。論文では、超加工食品はアーユルヴェーダの「組み合わせの悪い食事」「時間がたって活力(プラーナ)を失った食事」「有害物質を含む食事」という古典的な分類によく当てはまると位置づけられています。
具体的な対応づけの例として、保存料や着色料、乳化剤は「毒性を帯びた食事」に、再加熱した油での揚げ調理は、体を過度に熱し刺激する性質の食事に、精製小麦粉や果糖の多い糖類は「重く消化が遅い」食事に当てはめられています。また、チーズやマヨネーズなどの乳製品を酸味や塩気の強い食品と合わせること、熱い揚げ物と冷たい炭酸飲料を一緒にとることは、古典が戒める組み合わせにあたると著者らは論じています。
さらに著者らは、こうした食事を続けることで消化の力が弱まり、アーマがたまり、体内の通り道がふさがれるという古典的な病気の進み方を示しました。そして、これを現代の研究で論じられている、腸のバリア機能の乱れや、腸内細菌由来の物質が血中に入ることによる慢性的な炎症と重ね合わせる解釈を示しています。予防の考え方としては、温かく新鮮な食事をとること、消化力に見合った量を食べること、六つの味をそろえること、ショウガやクミン、黒コショウなどの香辛料を日々の料理に使うことといった、古典の食事規則が紹介されています。
この研究が伝えること
著者らは、ファストフードがもたらす健康問題はカロリーのとりすぎだけでは十分に説明できず、食べ物の「質」にも目を向ける必要があると結論づけています。この論文は、古典的な伝統医学の食事観と現代の栄養・医学研究を、概念のレベルで橋渡ししようとする試みとして、加工食品をめぐる議論に別の視点を提示しています。
原著論文の著者・所属:Prof. Dr. M. M. Godbole*1, Dr. Rushikesh N. Malhare2, Dr. Milind Godbolle3, Dr. Rushikesh N. Malhare4(Department of Swasthavritta, Yashwant Ayurvedic College Postgraduate Training and Research Center, Kodoli, Dist - Kolhapur, Maharashtra, India.)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Prof. Dr. M. M. Godbole*1, Dr. Rushikesh N. Malhare2, Dr. Milind Godbolle3, Dr. Rushikesh N. Malhare4. A CRITICAL ANALYSIS OF MODERN PROCESSED FOODS AND FAST-FOOD CULTURE THROUGH THE LENS OF AYURVEDIC DIETETICS. World Journal of Pharmaceutical Research 2026-10-29. DOI: 10.5281/zenodo.23764333. 原著ライセンス:CC BY.