著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリア、ブラジル、アメリカ、オランダです。

掲載誌:International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的:超加工食品をどう正しく伝えるか

超加工食品とは、食品を加工の程度と目的によって四つに分ける「ノバ(Nova)分類」で、最も加工度が高いグループを指します。著者らの説明では、丸ごとの食品から抽出したり派生させたりした安価な原材料に添加物を組み合わせて作られた商業製品で、丸ごとの食品はほとんど含まれていません。例として、清涼飲料水、スナック菓子、インスタント麺、ファストフード、加糖の朝食用シリアルなどが挙げられています。論文は既存の報告として、オーストラリアでは超加工食品が摂取エネルギーの42%を占めることを紹介しています。

論文によると、超加工食品が食事の質や健康、環境、社会や文化に与える影響については、研究が増えています。その一方で、一般の人々の理解は十分ではありません。オーストラリアの成人を対象にした先行調査では、64%が超加工食品という言葉を知っていて、その主な特徴も説明できました。ただし、ボロネーゼのパスタソース、味付きヨーグルト、袋入りの雑穀パンといった食品は、誤って分類されることが多くありました。また、超加工食品と他の種類の加工食品の間に違いはないと考える人が34%いました。超加工食品は「健康に良くない」と受け止められていましたが、環境への影響など、健康以外の影響はあまり認識されていませんでした。

著者らは、超加工食品を明確に、一貫して、信頼できる形で伝えるための指針がまだないことを課題として挙げています。そこで研究チームは、オーストラリアの公衆衛生機関が一般の成人向けに情報を発信する際に使える「伝え方とメッセージの枠組み」の開発を目指しました。目標は二つです。一つは、発信の進め方に関する推奨事項をまとめることです。もう一つは、超加工食品についての知識と理解を高める、説得力のあるメッセージを作ることです。

何をしたのか:段階を踏んで市民や専門家と作り上げる

研究チームは、あらかじめ定めた六つの段階で作業を進めました。質的な手法と量的な手法を組み合わせています。さらに、市民や専門家に作成の過程へ加わってもらい、試しては直すことを繰り返す「共同デザイン」の考え方を取り入れました。

最初の段階では、各国の食事ガイドラインから超加工食品に関する記述を集め、六つの領域に整理しました。「定義と見分け方」「食事への影響」「健康への影響」「環境への影響」「文化・経済・社会などその他の影響」「食事に関する主要な推奨」です。集めた記述は、生成AIのChatGPTを使ってやさしい言葉の文章に書き直しました。AIを使ったのはこの最初の書き換えだけで、その後は研究チームが内容を見直しています。さらに、オーストラリアの先行調査の結果をもとに、超加工食品が作られる目的や、他の加工食品との違いを伝えるメッセージなどを独自に追加しました。

続いて、効果的な健康・栄養メッセージの作り方について研究チームが以前に行ったレビューを参考に、文の長さ、構成、語調、表現の枠組みを整えました。その後、メッセージは四つのグループによって順に評価されました。市民5人によるオンラインの意見交換会、公衆衛生と栄養の分野で働くオーストラリアの専門家11人への聞き取り、国内外の超加工食品研究者19人へのアンケート、そしてオーストラリアに住む20〜64歳の成人1,014人へのオンライン調査です。成人の調査では、年齢、性別、居住地域などの構成が国全体の人口分布に近くなるよう参加者を集めました。参加者は各メッセージについて「わかりやすいか」「好ましいか」「納得できるか」を7段階で評価しました。

主な結果:26のメッセージと6段階の発信指針

6か国の食事ガイドラインから27の記述が抽出されました。研究チームが独自に作った28のメッセージと合わせ、出発点は計55になりました。市民の意見交換会を経て、メッセージは32に絞り込まれています。メッセージは2文以内に短くまとめられ、平易で能動的な表現が使われました。また、市民から前向きな表現を増やしてほしいという意見が出たこともあり、「得られるもの」を強調する言い方と「失うもの」を強調する言い方の両方が取り入れられました。

専門家への聞き取りでは、枠組みとメッセージの妥当性がおおむね支持されました。メッセージの改善点として挙がったのは、短くしながらも単独で意味が通じるようにすること、オーストラリアの人々にとって身近な表現にすること、超加工食品以外の食品を手に入れやすいかどうかの格差に配慮すること、道徳的な決めつけを避けることです。超加工食品研究者による評価では、重要性が7点満点で平均6.4点、明確さが平均6.0点でした。内容が重複していた1つのメッセージが除かれています。

成人1,014人による評価では、メッセージ全体の平均点は7点満点で5.4点でした。99%のメッセージが、わかりやすさ、好ましさ、説得力のいずれでも5点以上を得ています。最終的に、検証を経た26のメッセージが枠組みに収められました。あわせて、公衆衛生機関向けの指針として六つの段階が示されました。「伝える目標を決める」「対象者を層に分ける」「発信経路を選ぶ」「メッセージを設計し対象に合わせて調整する」「届ける」「成果を評価する」です。

この研究が示すこと

著者らはこの枠組みを、市民、超加工食品の研究者、公衆衛生機関と協議しながら作り上げた、根拠に基づく新しい枠組みと位置づけています。超加工食品という概念は誤解されやすいものです。この研究の特徴は、それを一般の人々に伝える言葉そのものを、関係者による評価を何度も重ねて練り上げた点にあります。論文は、この枠組みが栄養に関する情報発信や、超加工食品の摂取を減らすための取り組みを支える実践的な手引きになると述べています。

原著論文の著者・所属:P. Machado(Deakin Institute for Physical Activity and Nutrition, Deakin University, Geelong, Australia; School of Exercise and Nutrition Sciences, Deakin University, Geelong, Australia)、E. Denniss(Deakin Institute for Physical Activity and Nutrition, Deakin University, Geelong, Australia; School of Health and Social Development, Deakin University, Geelong, Australia)、C. G. Russell(Deakin Institute for Physical Activity and Nutrition, Deakin University, Geelong, Australia; School of Exercise and Nutrition Sciences, Deakin University, Geelong, Australia)、N. Khandpur(Center for Epidemiological Research in Nutrition and Health, University of Sao Paulo, Sao Paulo, Brazil; Department of Nutrition, Harvard T. H. Chan School of Public Health, Boston, USA; Division of Human Nutrition and Health, Wageningen University, Wageningen, Netherlands)、K. Wingrove(School of Exercise and Nutrition Sciences, Deakin University, Geelong, Australia)、S. A. McNaughton(Health and Well-Being Centre for Research Innovation, School of Human Movement and Nutrition Sciences, University of Queensland, St Lucia, Brisbane, Australia; School of Exercise and Nutrition Sciences, Deakin University, Geelong, Australia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):P. Machado, E. Denniss, C. G. Russell, et al. A communication and messaging framework to increase public awareness of ultra-processed foods in Australia. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity 2026-08-15. DOI: 10.1186/s12966-026-01954-5. 原著ライセンス:CC BY.