著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref

研究の目的

献立づくりにChatGPTやGeminiのような生成AIを使う場面が増えています。しかし、AIが作る献立がどこまで国の食事指針に沿っているかは、まだ十分に分かっていません。栄養が足りているか、加工度の高い食品がどれほど含まれるか、費用や環境への負荷はどうかといった点も同様です。研究チームはこの点を確かめるため、生成AIが作った1日分の献立を、トルコ保健省の「トルコ食事指針(TÜBER)」に載っている見本献立と比べました。

TÜBERは、食品を加工の程度で4群に分けるNOVA分類を取り入れています。そのうえで、最も加工度の高い「超加工食品」(NOVA 4)を減らすことを重点に掲げています。著者らは、栄養の充足度に加えて、超加工食品の含有、1日あたりの費用、二酸化炭素換算の排出量(カーボンフットプリント)、短期間での出力のばらつきを、ひとつの枠組みでまとめて評価することを目指しました。

どのように調べたか

研究チームは8つの人物像を設定しました。未就学児、学齢期の子ども、思春期の若者、成人女性、成人男性、高齢者、妊婦、授乳中の女性で、いずれもTÜBERが示す年齢層や身体の状態の区分に対応しています。ChatGPT-4oとGemini Proそれぞれに、トルコ語で「次の人物の1日の食事計画を作り、各食品をグラムか家庭での分量で示して」と依頼しました。人物の説明は、たとえば「トルコに住む4歳の男の子で、朝食は家で食べ、幼稚園に通う」といったものです。エネルギーや栄養素の目標値は指示していません。

依頼は2週間おきに3回、毎回別の会話で行いました。こうしてAIの献立48件(各モデル24件)を集め、TÜBERの見本献立8件と比べています。栄養価は栄養計算ソフトBeBiS(第9版)で算出し、各人物像に対応する基準値に対して何%を満たしているかで評価しました。超加工食品の判定はAIではなく研究者が行いました。費用は2026年6月から8月の公的価格統計とスーパーの価格データをもとに計算しています。炭素排出量は国際的な排出係数データベースを使って推計しましたが、トルコに特有の値ではないため、著者らはあくまで目安として扱っています。比較できる人物像が8つに限られることから、統計的な分析は探索的な位置づけとされています。

主な結果

エネルギー量は、どの献立も基準値に近い水準でした。基準に対する充足度の中央値は、ChatGPTが95.2%、Geminiが95.1%、TÜBERの見本献立が93.4%です。一方で栄養素のバランスには偏りがみられました。炭水化物はどの献立でも基準の90%を下回り、たんぱく質と脂質は110%を上回っていました。なお著者らは、この90〜110%という区分は記述のための目安であり、超えたからといって摂りすぎや有害を意味するわけではないと断っています。

献立の出どころによる差が認められたのは、炭水化物と食物繊維です。炭水化物ではGeminiとTÜBERの間に、食物繊維ではChatGPTとGeminiの間に差があり、食物繊維の充足度はChatGPTのほうが高いという結果でした。ビタミンB12はどの献立でも基準を大きく上回りましたが、献立による差は統計的に確認されませんでした。また、TÜBERの見本献立自体も、すべての栄養素で基準に収まっていたわけではありません。

超加工食品を1品以上含む献立の割合は、ChatGPTが16.7%、Geminiが41.7%でした。1日あたりの費用の中央値は、ChatGPTが485.6リラ、Geminiが449.8リラ、TÜBERが405.2リラです。炭素排出量はそれぞれ1日6.4、7.3、6.7 kg CO2換算でした。費用と排出量については、献立の出どころによる差を示す十分な証拠は得られていません。ただし著者らは、これを「同等である」という意味に受け取るべきではないと注意しています。

この研究が示すこと

著者らによると、生成AIは人物像に合ったエネルギー量に近い献立をおおむね作れました。その一方で、栄養素のバランス、超加工食品の含有、出力の一貫性には限界がみられました。研究チームは、食事計画では管理栄養士が最終的な判断を担うべきだと結論づけています。AIが出した献立は、TÜBERのような根拠に基づく国の指針に照らして確認し、一人ひとりに合わせて調整する必要がある、というのが本研究の示す考え方です。

著者:Esra Tansu Sarıyer(epartment of Nutrition and Dietetics, Hamidiye Faculty of Health Science, University of Health Sciences Türkiye, Istanbul, Türkiye)、Tuğçe Özlü Karahan(epartment of Nutrition and Dietetics, Hamidiye Faculty of Health Science, University of Health Sciences Türkiye, Istanbul, Türkiye)、Bedriye Ural(epartment of Nutrition and Dietetics, Hamidiye Faculty of Health Science, University of Health Sciences Türkiye, Istanbul, Türkiye)、Elvan Yılmaz Akyüz(epartment of Nutrition and Dietetics, Hamidiye Faculty of Health Science, University of Health Sciences Türkiye, Istanbul, Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Esra Tansu Sarıyer, Tuğçe Özlü Karahan, Bedriye Ural, et al. AI-generated menus versus the Türkiye Dietary Guidelines: nutrient adequacy, ultra-processed food burden, cost, and carbon footprint. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-10-01. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1984101. 原著ライセンス:CC BY.