著者の所属・活動拠点の国は、ウクライナです。
掲載誌:Technology audit and production reserves
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
野菜や果物の加工では、ピューレや粉末など限られた製品を作る過程で、皮や種、繊維質などが副産物として生じます。これらは有用な成分を含むにもかかわらず、多くの従来技術では十分に活用されていません。また、加熱や濃縮に使う装置の多くは、蒸気などの中間的な熱媒体を介して熱を伝えるため、工程が長くなり、コストもかさみやすいと著者らは指摘しています。
著者らは、こうした副産物も同じ製造工程の中で使い切る「廃棄物ゼロ」の考え方に基づき、地元で採れる複数の植物原料を、すぐに次の加工に使える状態の多成分素材(論文では「機能性マトリックス」と呼ばれます)へまとめて加工する技術の改良を目指しました。研究チームは、この技術の考え方を理論的に整理することと、具体的な工程の流れを提案することを課題としました。
5種類の原料の組み合わせ
研究チームが取り上げたのは、ウクライナで入手しやすいキクイモ、カボチャ、ニンジン、サツマイモ、ボケ属の果実(チェノメレス)の5種類です。論文では、それぞれに役割が割り当てられています。キクイモは食物繊維の一種であるイヌリンの供給源、カボチャは全体のとろみと色の土台です。ニンジンはβ-カロテンによる色と栄養、サツマイモはでんぷんによる練り物のような生地の形成、酸味の強いボケの果実は、合成添加物を使わずに酸度を整え、ペクチンによって構造をまとめる役割を担います。
配合は、キクイモ25%、カボチャ30%、ニンジン15%、サツマイモ20%、ボケの果実10%を基本としました。ボケの果実は酸味が強く、味のバランスを保つ必要があるため、10%までに抑えたとされています。著者らは、この配合によってイヌリン、ペクチン、カロテノイド、でんぷん、抗酸化性といった特性をあわせ持つ素材ができると報告しています。
提案された加工工程
工程の特徴は、フィルム状の電気ヒーターで原料に直接熱を伝える「局所加熱」型の装置を使い、中間的な熱媒体を不要にした点です。洗浄して刻んだ原料は、まず研究チームが開発した区画式の装置で65〜90℃、2〜10分の前加熱を受けます。次に回転式の薄膜蒸発装置を使い、45〜65℃で固形分30〜45%まで濃縮します。最後に、ローラー式の赤外線乾燥機を用いて45〜60℃で乾燥させます。いずれも比較的穏やかな温度域に設定されています。
廃棄物を出さない工夫として、キクイモ、ニンジン、サツマイモは皮ごと刻みます。小さいものや形が不ぞろいで市場に出しにくいものも原料に含めます。カボチャは果肉を素材の土台とし、皮の一部は素材に混ぜ、残りは乾燥させて粉末にします。種は取り分けて乾燥させます。ボケの果実のうちペクチンを含む残りの部分も、乾燥させて別の半製品にします。洗浄水は沈殿とろ過を経て再利用し、最後のすすぎには飲用水を使う設計です。著者らは、この技術によってカボチャ、ボケの果実のペクチンを含む残りの部分、皮をむかないキクイモを全量加工できるとしています。
研究が示すこと
この研究は、一つの原料から一つの製品を作るのではなく、複数の地元原料とその副産物を一続きの工程で加工する道筋を、具体的な配合と温度条件を添えて示したものです。著者らは、得られるピューレやペースト、粉末が、パスティラ(果実を使った伝統的な菓子)や自然素材のスナック、食品用3Dプリンターの材料の土台になりうると述べています。原料の役割を組み合わせて使い切るという発想が、廃棄物を減らしながら加工品の幅を広げる一つの方法として提示されています。
原著論文の著者・所属:Andrii Zahorulko(State Biotechnological University)、Hanna Chmil(State Biotechnological University)、Iryna Voronenko(National University of Life and Environmental Sciences of Ukraine)、Mykhailo Marchenko(State Biotechnological University)、Andrii Puhach(Dnipro State Agrarian and Economic University)、Nataliia Ponomarenko(Dnipro State Agrarian and Economic University)、Olena Bereza(Dnipro State Agrarian and Economic University)、Eldar Ibaiev
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Andrii Zahorulko, Hanna Chmil, Iryna Voronenko, et al. Improvement of a waste-free resource-efficient technology for the integrated processing of local plant raw materials into multicomponent functional matrices using equipment with localized heat supply. Technology audit and production reserves 2026-08-31. DOI: 10.15587/2706-5448.2026.367950. 原著ライセンス:CC BY.