著者の所属・活動拠点の国は、スロバキアです。
掲載誌:Notulae Botanicae Horti Agrobotanici Cluj-Napoca
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
観賞用の樹木の実に目を向けた理由
果物や野菜に含まれるポリフェノールやカロテノイドなどの抗酸化物質は、生活習慣と関わる病気との関係から注目されています。著者らによれば、こうした背景から、抗酸化物質を多く含む新しい食品素材を探す研究が各地で行われてきました。
今回の研究チームは、温帯のヨーロッパや北アメリカで観賞用としてときおり植えられる樹木に着目しました。見た目が美しく、しかも食べられる実をつける樹木6種について、果実の抗酸化特性を調べました。食べ物として受け入れられるには味も重要なため、甘さや酸っぱさなど味に関わる性質や果実の収量に関わる性質もあわせて測定しています。また、花が咲く時期や実が熟す時期も記録しました。
研究チームの仮説は、観賞用樹木の中に、抗酸化能力が高く、味の面でも好ましい性質をもつ果実をつける種があるというものでした。
6種の樹木で何を調べたか
対象としたのは、スロバキア西部にあるムリニャニ樹木園で栽培されている6種です。内訳は、カジノキ(Broussonetia papyrifera)、ヤマボウシ(Cornus kousa)、アケビ科の低木デカイスネア・ファルゲシイ(Decaisnea fargesii)、マメガキ(Diospyros lotus)、アキグミ(Elaeagnus umbellata)、中国原産のスイカズラ属の低木ロニセラ・フラグランティッシマ(Lonicera fragrantissima)です。各種1株ずつ、完熟して色づいた果実を2016年または2017年に収穫しました。開花と結実の時期は2018年に観察しています。
果実については、1個あたりの重さ、食べられる部分の割合、水分を除いた乾物の割合を調べました。味に関わる指標として、糖の量、酸っぱさの目安となる滴定酸度、渋みのもとになるタンニンの量を測定しました。滴定酸度は、果実の酸の量をクエン酸に換算して示したものです。
抗酸化に関わる指標としては、果実の抽出液が試験用の不安定な分子(ラジカル)をどれだけ打ち消すかで評価した総抗酸化活性を測りました。あわせて、ビタミンCに相当するアスコルビン酸、ポリフェノールなどのフェノール化合物、カロテノイドの量も調べています。成分量の多くは、水分を除いた乾物1グラムあたりで表されています。
主な結果――種によって大きく異なる特徴
開花と結実の時期は種によって大きく異なりました。最も早く咲いたのはロニセラ・フラグランティッシマで、4月初めに開花し、5月初めから実が熟し始めました。最も遅かったのはマメガキで、5月末に開花し、実が熟し始めたのは10月初めでした。
果実の大きさは、デカイスネア・ファルゲシイが約26グラムで最も重くなりました。一方、アキグミは約0.2グラム、ロニセラ・フラグランティッシマは約1グラムと小さい実でした。ただしロニセラ・フラグランティッシマは、実のおよそ95%が食べられる部分でした。
味の面では、ロニセラ・フラグランティッシマの糖の量が乾物1グラムあたり約100ミリグラムで、ほかの種より1桁高い値でした。最も酸っぱかったのはアキグミです。マメガキはタンニンが乾物1グラムあたり約59ミリグラムと突出して多く、乾物の割合も33%で最も高い値でした。
抗酸化に関わる指標では、総抗酸化活性はヤマボウシとロニセラ・フラグランティッシマが高く、カジノキ、マメガキ、アキグミは低い値でした。アスコルビン酸とカロテノイドが最も多かったのは、ロニセラ・フラグランティッシマでした。フェノール化合物は、マメガキとデカイスネア・ファルゲシイがほかの種を大きく上回りました。
研究から見えてきたこと
著者らは、6種の中ではロニセラ・フラグランティッシマの果実が、収量、味、抗酸化特性のバランスで最も有望だと結論づけています。食べられる部分の割合が高く、糖やカロテノイドなどを多く含み、総抗酸化活性も高いことに加え、5月という早い時期に実るため、季節の早い時期の抗酸化物質の供給源になりうるという評価です。ただし論文は、この種の抗酸化物質の量が、抗酸化物質を特に多く含む代表的なベリー類には及ばなかったことも明記しています。
一方、デカイスネア・ファルゲシイとマメガキは、フェノール化合物を非常に多く含んでいたものの、食べやすさの面では満足のいく結果ではなかったと報告されています。デカイスネア・ファルゲシイとロニセラ・フラグランティッシマについては、果実の性質を示すデータは今回が初めてだとしています。
著者らは、収穫時期や分析法の違い、さらに生育環境や遺伝的な背景によって果実の性質は変わるため、既存の研究との単純な比較は難しいとも述べています。今回の結果は、観賞用として植えられている樹木の実の中にも、抗酸化成分や味の点で際立つものがあることを示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Peter Ferus(Institute of Forest Ecology SAS, Department of Dendrobiology, Mlyňany Arboretum, Vieska nad Žitavou 178, 95152 Slepčany)、Jana Konôpková(Institute of Forest Ecology SAS, Department of Dendrobiology, Mlyňany Arboretum, Vieska nad Žitavou 178, 95152 Slepčany)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Peter Ferus, Jana Konôpková. Edible Fruits of Woody Ornamentals as an Alternative Source of Phytochemicals? Screening of Taste and Antioxidant Characteristics. Notulae Botanicae Horti Agrobotanici Cluj-Napoca 2026-08-27. DOI: 10.15835/nbha54315202. 原著ライセンス:CC BY.