この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Future Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

植物性の代替肉は、たんぱく質の質、肉らしい風味、繊維状の食感という点で依然として課題を抱えていると、著者らは指摘しています。そこで注目されたのが、食用菌類の菌糸体です。菌糸体とは、きのこの傘や柄になる前の、糸状に伸びる細胞のかたまりのことで、培養によって増やすことができます。菌糸体はたんぱく質を多く含み、加熱によって香りを生み出す可能性を持つ素材ですが、どの菌株が適しているかを体系的に選び出し、代替肉に加えたときの加工中のふるまいを評価した研究はまだ限られている、というのが著者らの問題意識です。

この研究では、食用菌類の菌株を幅広く比べたうえで、選んだ菌糸体の粉末を実際に植物性パティに配合し、調理法の違いも含めて品質を調べることが目的とされています。

何をどう調べたか

著者らはまず、23種類の食用菌株を対象に、バイオマス(培養で得られる菌体の量)の生産性、たんぱく質含量、そして加熱したときに生じる肉らしい香りという三つの観点からスクリーニングを行いました。

次に、選び出した菌糸体の粉末を、植物性パティに使われる大豆たんぱく質分離物(SPI)の一部と置き換える形で、5〜20%の範囲で配合しました。さらに、蒸す調理と、フライパンで焼く調理という二つの加熱方法を比較しています。培養条件についても、pH、温度、振とう速度(培養液を揺り動かす速さ)を最適化する検討が行われました。

報告された主な結果

スクリーニングの結果、Lentinus sajor-caju、Morchella esculenta、Pleurotus pulmonarius、Hypsizygus marmoreus の4株が、32.3〜41.8%という高いたんぱく質含量と、加熱によるはっきりした香りの特徴を示したと報告されています。このうち前の3株は肉らしい好ましい香りを示し、Hypsizygus marmoreus は魚介類を思わせる特徴的な香りを示したとされています。

培養条件を最適化した場合、バイオコンバージョン率(培地の成分が菌体へと変換される割合)は最も高い条件で52.0%に達したと報告されています。

パティへの配合では、10〜15%添加したときに、硬さがSPIのみの対照区の最大1.5倍、噛みごたえが最大2.6倍に達したとされています。また、食感と官能面の改善は、蒸す調理よりもフライパンで焼く調理のほうが大きく観察されたと報告されています。著者らは、こうした改善の背景として、菌糸体のたんぱく質、キチンやβ-グルカンを含む細胞壁の成分、そしてSPIのマトリックス(たんぱく質が作る網目状の構造)が固まることの組み合わせが寄与している可能性を挙げています。

この研究が示すこと

著者らは、菌株ごとに向く用途が異なるとまとめています。Lentinus sajor-caju と Pleurotus pulmonarius は色の薄い製品に、Hypsizygus marmoreus は魚介系の風味や風味に特徴を持たせた製品に、Morchella esculenta は色の濃い製品や風味を強めたい系に適するという整理です。

つまりこの研究は、食用きのこの菌糸体を単なるたんぱく質源としてではなく、香りと食感の両方に働きかける多機能な材料としてとらえ直し、目的に応じて菌株を選ぶための候補を示したものといえます。

著者:Jie Zhou(Ecofood Institute, College of Biological Science and Engineering, Fuzhou University, 350108 Fuzhou, China)、Shuxia Huang(Shandong Key Laboratory of Food Biological Fermentation, Tsingtao Brewery Co., Ltd., 266071 Qingdao, China)、Jingfeng Shen(Ecofood Institute, College of Biological Science and Engineering, Fuzhou University, 350108 Fuzhou, China)、Shengyu Zhang(Ecofood Institute, College of Biological Science and Engineering, Fuzhou University, 350108 Fuzhou, China)、Hao Chen(Ecofood Institute, College of Biological Science and Engineering, Fuzhou University, 350108 Fuzhou, China)、Yongxin Teng(Ecofood Institute, College of Biological Science and Engineering, Fuzhou University, 350108 Fuzhou, China)、Chen Zhang(Ecofood Institute, College of Biological Science and Engineering, Fuzhou University, 350108 Fuzhou, China)、Zongming Chang(Shandong Key Laboratory of Food Biological Fermentation, Tsingtao Brewery Co., Ltd., 266071 Qingdao, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jie Zhou, Shuxia Huang, Jingfeng Shen, et al. Edible Mushroom Mycelia as Multifunctional Ingredients for Plant-Based Meat: Strain Screening, Culture Modulation, and Processing Quality. Journal of Future Foods 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.jfutfo.2026.09.015. 原著ライセンス:CC BY.