この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。

掲載誌:International Journal of Secondary Metabolite

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を目的とした研究か

トルコのアナトリア地方には、古くから食用にされてきた野生キノコがあります。論文によれば、トルコのウルダー(Uludağ)地域の人々は長年、生のものや乾燥させたものを食べてきており、特に9月には多くの村人が家族とともに山へ入り、冬の食料として野生キノコを採取してきました。しかし著者らは、このうちカラカサタケ(Lepiota procera)とチチタケの一種(Lactarius deterrimus)という2種について、抗酸化のはたらきを調べた報告が文献に見当たらないと述べています。

そこで研究チームは、アナトリアで採れたこの2種を対象に、抗酸化の力を二つの側面から評価することを目的としました。一つは「非酵素的」な側面、つまりポリフェノールなどの低分子の成分が持つ力です。もう一つは「酵素的」な側面、つまり生物の体内で活性酸素を処理する酵素のはたらきです。

ここでいう活性酸素(ROS)とは、代謝の過程で副産物として生じる反応性の高い物質で、論文では、細胞の構造や機能が損なわれて細胞が傷つく原因になると説明されています。生物はこれに対して、酵素によるものと酵素以外のものからなる防御のしくみを備えています。また著者らは、食品産業で使われてきた合成の酸化防止剤(BHT、BHA、プロピルガレートなど)に望ましくない副作用の可能性が指摘されてきたことから、天然の抗酸化資源への関心が高まっているという背景にも触れています。

どのように調べたか

キノコは2024年11月、トルコ・ブルサ県ケレスのウルダー国立公園の森で採取されました。採取と同定については農林省ケレス中央事務所から法的な許可と協力を得たと記されています。試料は調べるまで−20℃で保存されました。

非酵素的な側面については、乾燥・粉砕した各キノコ325グラムをメタノールで抽出し、さらにヘキサンと酢酸エチルを用いて、極性の異なる3種類の溶媒による抽出物を用意しました。溶媒とは成分を溶かし出す液体のことで、性質が違うと溶け出す成分も変わります。これらの抽出物について、総フェノール量と総フラボノイド量(いずれも植物やキノコに含まれる成分の分類)、還元力、そして二つの補完的な試験が行われました。一つはDPPHという安定なラジカル(不対電子を持つ不安定な分子)を消去する能力を見る試験、もう一つはβ-カロテン/リノール酸の褪色を抑える力を見る試験です。比較の基準としてBHTやトロロックスといった既知の抗酸化物質が用いられました。

酵素的な側面については、キノコを緩衝液中で磨砕した粗抽出液を使い、ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)、ペルオキシダーゼ(POD)、カタラーゼ(CAT)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)という4種類の酵素の活性が測定されました。すべての試験は3回繰り返され、結果は平均値と標準偏差で示されています。

主な報告結果

抽出の収率は、どちらの種でもメタノール抽出が最も高く、L. proceraで38.44%、L. deterrimusで34.86%でした。著者らは、溶媒の極性が高くなるほど収率が上がったと述べています。

非酵素的な試験では、すべての実験でメタノール抽出物が最も高い活性を示しました。酢酸エチル抽出物もメタノール抽出物に近い活性を示し、ヘキサン抽出物は一貫して最も低く、一部の条件では活性が検出されませんでした。DPPH試験では、1.6 mg/mLの濃度でメタノール抽出物の阻害率がL. proceraで82.16%、L. deterrimusで68.06%と報告されています。β-カロテン/リノール酸試験では、8 mg/mLのメタノール抽出物でL. proceraが48.19%、L. deterrimusが32.11%の阻害を示し、いずれも比較対象のBHTやトロロックスの活性には及びませんでした。

成分量ではL. deterrimusが上回りました。総フェノール量・総フラボノイド量のいずれも、L. deterrimusのメタノール抽出物で最も高い値(1.6 mg/mLでそれぞれ42.27 mg GAE/g、36.46 mg カテキン/g)が得られています。還元力も10 mg/mLのメタノール抽出物でL. deterrimusが最も強い値を示しました。一方、DPPHラジカル消去とリノール酸の過酸化を抑える試験では、L. proceraのメタノール抽出物がより強い活性を示したと報告されています。

酵素活性については、4種類すべてでL. deterrimusがL. proceraを上回りました。たとえばペルオキシダーゼは1181.62対879.22 U/mg、ポリフェノールオキシダーゼは863.53対468.11 U/mgでした。著者らは、この酵素活性の結果が、L. deterrimusの総フェノール量がL. proceraより高かったという非酵素的な測定結果と整合していると述べています。これは、文献において植物材料では抗酸化酵素の能力がフェノール含量と関連するとされていることと同様の傾向だとしています。

この研究が示すこと

著者らは、これが同一地域で採取されたL. proceraとL. deterrimusの両種についての最初のデータであり、野生キノコ2種の抗酸化活性と酵素活性を一つの研究にまとめたものだと位置づけています。文献には抗酸化活性を調べた研究も酵素活性を調べた研究もありますが、その両方を組み合わせた報告は限られていると指摘されています。

得られた結果は、2種が異なる強みを持つことを示しています。成分の量と酵素のはたらきではL. deterrimusが、ラジカル消去と脂質の過酸化抑制ではL. proceraが優位でした。また、どの試験でもメタノール抽出物が最も活性が高かったことは、こうしたキノコの抗酸化能力を評価する際に、どの溶媒を使うかが結果を大きく左右することを示しています。

著者らは、これらすべての知見にもとづき、この2種の食用キノコは高い抗酸化能力と抗酸化酵素能力を持つ天然抗酸化物質の供給源になりうると述べています。地域で長く食べられてきたキノコのはたらきを、成分と酵素という二つの物差しで初めて並べて記述した点が、この研究の寄与といえます。

著者:Mustafa Akın(Petroyağ ve Kimyasallar San. Ve Tic. A.Ş)、Esma Hande Alıcı(SAKARYA ÜNİVERSİTESİ)、Ozan Cobanoglu(KOCAELİ ÜNİVERSİTESİ)、Gülnur Arabacı(SAKARYA ÜNİVERSİTESİ)、Neslihan Şaki(KOCAELİ ÜNİVERSİTESİ)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mustafa Akın, Esma Hande Alıcı, Ozan Cobanoglu, et al. Enzymatic and non-enzymatic antioxidant activities of Lepiota procera and Lactarius deterrimus species from Anatolia. International Journal of Secondary Metabolite 2026-09-17. DOI: 10.21448/ijsm.1799514. 原著ライセンス:CC BY.