著者の所属・活動拠点の国は、アイルランド、オーストラリアです。

掲載誌:Early Intervention in Psychiatry

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

統合失調症などの精神病性障害がある人は、肥満になりやすいことが国際的に報告されています。体重の増加は血中の脂質や血糖の調節の乱れにつながり、精神病性障害のある人の平均寿命が一般の人より15〜20年短いことの主な要因の一つとされています。治療に使われる抗精神病薬は、こうした代謝の乱れや体重増加をさらに強めることが知られており、その大きな理由の一つが薬による食欲の増加です。

薬の副作用の中には、眠気のように時間がたつと和らぐものがあります。食欲への影響も同じように時間とともに弱まるのかどうかは、重要な問いです。しかし、精神病のある人の食生活を調べたこれまでの研究の多くは、長く病気を経験している人を対象にしていたり、一時点のみを調べたものでした。そこで研究チームは、初めて精神病を発症し(初回エピソード精神病)、抗精神病薬を飲み始めたばかりの若者を対象に、治療が続く中で食事の内容が変化するかどうかを追跡して調べました。

何を調べたか

対象は、オーストラリア・メルボルン北西部の早期精神病治療サービスに通う15〜24歳の若者です。参加者は、抗精神病薬を有効な最低量で服用した日数が通算30日未満の人たちでした。この研究は、身体の健康を担当する看護師を治療チームに加えることで体重増加を防げるかを確かめた臨床試験のデータを、別の観点から分析したものです。元の試験では看護師を加えたグループと通常の治療のグループで身体の健康状態に差がなかったため、今回は両グループをまとめて分析しました。

参加者は研究補助者の手助けを受けながら、全粒穀物のパンやシリアル、野菜、果物、魚介類、豆類、乳製品、清涼飲料、チョコレート、スナック菓子、ケーキ類などをどのくらいの頻度で食べているかを質問票に答えました。研究チームは回答をオーストラリアの食事ガイドラインの推奨と照らし合わせ、基準を満たしているかを推定しました。調査は治療開始時、3か月後、6か月後の3回行われ、開始時には70人、3か月後には50人、6か月後には46人が回答しました。

主な結果

治療開始時点で、64%の若者が「嗜好品」(健康的な食事に必要ではなく、飽和脂肪や糖分の多い食品)を推奨より多くとっていました。果物が足りない人は76%、野菜が足りない人は87%にのぼりました。穀物を十分にとっていた人は44%、乳製品の推奨を満たしていた人は20%にとどまりました。また約半数が甘い飲み物を推奨以上に飲んでおり、35.7%がチョコレートを週に2回より多く食べていると答えました。

3か月後と6か月後も、全体の傾向はほぼ同じでした。どの時点でも、ガイドラインのどの食品群についても推奨量を満たしていない人が多数を占めていました。統計的に見ても、治療開始時と3か月後、治療開始時と6か月後の間に、食事内容の有意な違いは見られませんでした。欠けているデータを統計的に補って行った追加の分析でも、同じ結論でした。

さらに、治療開始時には、教育歴が高い人ほど魚介類や豆類、ブロッコリーなどを多くとり、スナック菓子などが少ないといった、より健康的な食事の傾向が見られました。この違いは年齢の影響を考慮しても残りましたが、3か月後と6か月後には統計的に有意ではありませんでした。著者らは、その理由として治療チームによる栄養面の支援が格差を縮めた可能性と、参加者の脱落で違いを検出しにくくなった可能性の両方を挙げています。

結果が示すこと

著者らによれば、これは初回エピソード精神病の人の食事を治療初期から追跡して調べた初めての研究です。食事内容が治療の最初の数か月で変わらなかったことについて、著者らは、抗精神病薬の食欲への影響が時間とともに薄れるのではなく続いている可能性を示すものかもしれないと述べています。ただし参加者は調査開始時点ですでに服薬を始めていたため、「開始時」の食事もすでに薬の影響を受けていた可能性があり、発症前や服薬前の食事は分かっていません。また、データは自己申告で、食べた量ではなく頻度のみを尋ねていること、恵まれた都市の専門チームでの調査であることなどの限界も挙げられています。

研究チームは、初めて精神病を発症した若者の食事は全般に健康的とはいえず、治療開始から6か月の間も変わらなかったと結論づけています。そのうえで、精神病のある人、とりわけ教育歴の低い人に見られる食生活の格差を踏まえ、食事に関する助言や支援を日常の診療に組み込むべきだと提言しています。

原著論文の著者・所属:Brian O'Mahony(School of Medicine University College Dublin Dublin Ireland)、Andrew Thompson(Centre for Youth Mental Health University of Melbourne Melbourne Australia; Orygen Youth Health Parkville Victoria Australia)、Adele Morrin(Milltown Mental Health Services Dublin Ireland)、Brian O'Donoghue(Department of Psychiatry St Vincent's University Hospital Dublin Ireland; School of Medicine University College Dublin Dublin Ireland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Brian O'Mahony, Andrew Thompson, Adele Morrin, et al. Longitudinal Dietary Intake of Young People With a First Episode of Psychosis From the Time of Presentation to Six Months Follow‐Up. Early Intervention in Psychiatry 2026-07-28. DOI: 10.1111/eip.70226. 原著ライセンス:CC BY.