加齢とともに悩む人が増える膝の痛み。その代表的な原因のひとつが「変形性膝関節症」です。軟骨がすり減り、関節の変形やこわばり、痛みを引き起こすこの病気は、生活の質を大きく左右します。骨や筋肉の健康にはカルシウムやたんぱく質を含む乳製品がよいとされてきましたが、実は乳製品と膝関節症の関係を長期間にわたって調べた研究はこれまで限られていました。今回、新潟大学大学院医歯学総合研究科などの研究グループが、日本国内の中高年者を対象に、乳製品の摂取量と膝関節症の発症リスクとの関連を11年間追跡した研究結果を報告しました。

どのように調べたのか

この研究は、2011~2013年に開始されたコホート研究で、地域に住む40~74歳の日本人10,411人を対象としています。開始時のアンケートで年齢や体格、生活習慣、既往歴などを把握したうえで、妥当性が確認された食物摂取頻度調査票を用いて、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品の摂取量を、総エネルギー摂取量で調整したうえで算出しました。追跡期間中に、参加している医療機関でX線検査を行い、膝の症状があり、かつケルグレン・ローレンス分類でグレード2以上と判定された場合を「症候性X線膝関節症」の発症として記録し、統計的な解析(コックス比例ハザードモデル)によって、乳製品摂取量とリスクとの関連を調べました。

わかったこと

参加者の平均年齢は57.9歳で、乳製品の摂取量(中央値)は、牛乳が1日27g、チーズが1g、ヨーグルトが8g、乳製品全体では118gでした。総乳製品摂取量が多いグループほど膝関節症のリスクが低い傾向が見られ、摂取量を4段階に分けた場合、最も少ないグループと比べて、3番目に多いグループでリスクが19%、最も多いグループで21%低いという結果でした。特に関連が強く見られたのは、チーズやヨーグルトといった発酵乳製品で、摂取量が多いほどリスクが低くなる傾向が確認され、最も摂取量が多いグループでは、摂取なしのグループと比べてリスクが28%低いという結果になりました。この傾向は男女それぞれで分けて解析した場合にも同様に見られたと報告されています。一方、牛乳の摂取量については、膝関節症リスクとの明確な関連は見られませんでした。チーズとヨーグルトは、それぞれ独立してリスクの低さと関連していたとされています。

この研究を読むうえで気をつけたいこと

この研究は日本人を対象とした観察研究であり、乳製品の摂取が膝関節症を「防ぐ」と証明したものではありません。摂取量が多い人と少ない人を比較して統計的な関連を見出したものであり、乳製品をよく摂る人には他の生活習慣や体質的な特徴がある可能性も否定できません。また、今回対象となった集団はもともと乳製品の摂取量が比較的少ない集団だったとされており、日本人の食生活における乳製品摂取の実情を反映した結果とも言えます。今後、異なる集団や、より詳細なメカニズムを検討する研究が求められるところです。

まとめ

今回の11年間にわたる大規模な追跡調査では、乳製品、特にチーズやヨーグルトといった発酵乳製品の摂取量が多い中高年者ほど、膝の変形性関節症の発症リスクが低い傾向にあることが示唆されました。一方で牛乳の摂取量との関連は見られなかったことから、発酵という過程や乳酸菌などの要因が関わっている可能性が考えられますが、これはあくまで一つの観察研究の結果であり、因果関係を断定するものではありません。膝の健康と食生活の関係については、今後もさらなる研究の積み重ねが期待されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Irina A. Bulycheva, Yumi Watanabe, Kaori Kitamura, et al. Fermented dairy intake and symptomatic radiographic knee osteoarthritis risk in middle-aged and older adults: An 11-year cohort study. クリニカル・ニュートリション (2026). DOI: 10.1016/j.clnu.2026.106756. 原著ライセンス: cc-by.