著者の所属・活動拠点の国は、デンマーク、スウェーデンです。
掲載誌:Journal of Chromatography A
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、植物油に含まれる主要な成分群の量と、それぞれの群に含まれる成分を、迅速かつ幅広く調べる分析法の開発を目指しました。適用例として用いたのは、シアバターの抽出物です。
植物油は成分の組成によって性質や品質が変わりますが、従来は全体像を把握するために複数の分析法を組み合わせる必要がありました。そこで著者らは、成分群を分離し、各群につき代表的な標準物質を一つ使って量を測り、さらに群内の成分も識別する方法を検討しました。
何を、どのように調べたか
対象としたのは、油脂の主成分であるトリアシルグリセロールと、脂肪酸が結び付く数などが異なるジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸、さらにステロールなどの成分です。シアバター抽出物と標準物質の混合液を使って、分離や定量の性能を調べました。
開発した方法では、二酸化炭素を主に使う超臨界流体クロマトグラフィーで成分群を分け、荷電エアロゾル検出器で量を測ります。さらに、イオンの気体中での移動しやすさを調べる装置と高分解能質量分析計を組み合わせ、成分の識別に必要な情報を得ました。成分を分けるカラムは、2本を直列につなぎました。
各成分群を一つの標準物質で定量できるかを確かめるため、同じ群の複数の物質について、濃度と検出信号の関係を比較しました。また、試料を1日3回、6日間測定して測定値のばらつきを評価し、定量できる濃度の下限や、既存の標準法との測定値の違いも調べました。
主な報告結果
研究チームは、シアバター抽出物に含まれる主要な成分群を17分以内に分離できたと報告しました。対象にはトリアシルグリセロール、2種類のジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、遊離脂肪酸と、一部のステロールなどの成分が含まれます。イオンの移動しやすさと精密な質量の情報を組み合わせることで、各群に含まれる成分の識別も行いました。
検出器の設定と、濃度と信号の関係を表す曲線の作り方を調整すると、同じ成分群に属する物質の応答がおおむねそろい、各群につき一つの代表的な標準物質で定量できると報告しました。
シアバター抽出物では、同じ日の測定値のばらつきを示す相対標準偏差は、成分群によって2.1~5.5%、日をまたぐ測定では4.6~14.4%でした。いずれも研究チームが設定した性能基準を満たしました。一方、主要成分群の定量値には、既存の標準法と比べてわずかな偏りがありました。
この報告が示すこと
著者らは、この方法を、シアバター抽出物の成分構成を幅広く把握する初期的な分析に適した方法と位置付けています。成分の量と種類を調べる作業をまとめ、必要な標準物質や分析にかかる時間・資源を減らすことに意味があります。ただし、トリアシルグリセロールの量をより精密に測る必要がある場合には、追加の定量が必要になるとしています。
適用上の限界として、長い飽和脂肪酸が結び付いたトリアシルグリセロールを多く含む試料では性能が低下すること、各成分群を測定可能な濃度範囲に収めるため、同じ試料を複数の濃度に希釈する必要があることを挙げています。前者の成分はシアバター抽出物では少ないため、今回の対象では問題にならないと著者らは述べています。
原著論文の著者・所属:Azemina Bajramova(AAK Denmark A/S, Slipvej 4, 8000 Aarhus, Denmark; Lund University, Department of Chemistry, Centre for Analysis and Synthesis, P.O. Box 124, SE-22100, Lund, Sweden)、Jesper Larsen(AAK Denmark A/S, Slipvej 4, 8000 Aarhus, Denmark)、Jeppe Lindegaard Hjorth(AAK Denmark A/S, Slipvej 4, 8000 Aarhus, Denmark)、Charlotta Turner(Lund University, Department of Chemistry, Centre for Analysis and Synthesis, P.O. Box 124, SE-22100, Lund, Sweden)、Margareta Sandahl(Lund University, Department of Chemistry, Centre for Analysis and Synthesis, P.O. Box 124, SE-22100, Lund, Sweden)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Azemina Bajramova, Jesper Larsen, Jeppe Lindegaard Hjorth, et al. Comprehensive and rapid analysis of shea butter extracts by supercritical fluid chromatography-charged aerosol detection-ion mobility high-resolution mass spectrometry. Journal of Chromatography A(出版社:Elsevier BV) 2026-11-01. DOI: 10.1016/j.chroma.2026.467602. 原著ライセンス:CC BY.