著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
麦芽の加熱方法による違いを調べる
研究チームは、小麦ビールを造る際の「糖化」の方法によって、麦汁の糖質の構造や発酵の進み方、完成したビールの香り成分がどう異なるかを調べました。糖化とは、麦芽の酵素を働かせ、でんぷんを糖などに分解する工程です。
研究では、大麦麦芽と小麦麦芽を重量比6対4で混ぜ、全体を段階的に加熱するインフュージョン法と、一部を取り出して煮沸し、元の容器へ戻すデコクション法を比較しました。研究チームは、糖質の構造やアミノ酸、発酵中の糖の変化、完成したビールの揮発性成分を分析し、香りや味に反応するセンサーでも違いを調べました。
糖質の変化と発酵の進み方
発酵前の麦汁では、デコクション法のほうが短い糖の鎖の割合は数値上高かったものの、統計的に有意な差はありませんでした。一方、発酵後のビールでは、デコクション法のほうが残った糖質の平均的な鎖が長く、短い鎖の割合が低いと報告されています。ただし、この分析は糖質の枝分かれを酵素で切り離してから行ったもので、短い鎖の割合が、そのまま酵母の利用できる糖の量を表すわけではありません。
発酵中に溶けている糖が減る速さにも違いがありました。インフュージョン法では初期に急速に減り、約36時間でほぼ安定したのに対し、デコクション法では約60時間まで緩やかな減少が続きました。完成したビールのアルコール含量はインフュージョン法のほうが高く、もとのエキス分のうち発酵した割合はデコクション法のほうが高い結果でした。また、デコクション法の麦汁では、遊離アミノ酸の総濃度が高くなっていました。
香り成分にも表れた違い
研究チームは、両方のビールを合わせて126種類の揮発性成分を同定しました。どちらもエステル類と高級アルコール類が主要な成分群でしたが、その内訳は異なりました。デコクション法ではデカン酸エチルやドデカン酸エチルなどの中鎖脂肪酸のエチルエステルが多く、インフュージョン法では高級アルコール類やアルデヒド類が相対的に多いと報告されています。
香りや味を測るセンサーでも、二つの方法によるビールは異なる応答を示しました。例えばデコクション法では、苦味、うま味、コクに対応するセンサーの信号が高くなりました。これは機器による測定結果であり、飲んだ人による味の評価を示すものではありません。
著者らは、糖化方法と糖質の構造、発酵の進み方、香り成分の構成に関連があるとまとめています。ただし、発酵前の麦汁の濃さや完成後のアルコール濃度も異なるため、香りの違いを糖質構造だけに帰することはできません。この研究は、糖化工程の選び方が、発酵から最終的なビールの成分まで関わることを示しています。
原著論文の著者・所属:Yuquan Wu(College of Food Engineering, Harbin University of Commerce, Harbin 150028, China)、Juan Du(Budweiser Harbin Brewery Co., Ltd., Harbin 150060, China)、Meiqi Li(Budweiser Harbin Brewery Co., Ltd., Harbin 150060, China)、Yanting Yin(College of Food Engineering, Harbin University of Commerce, Harbin 150028, China)、Guixin Wang(Budweiser Harbin Brewery Co., Ltd., Harbin 150060, China)、Song Wang(Budweiser Harbin Brewery Co., Ltd., Harbin 150060, China)、Hongchen Fan(College of Food Engineering, Harbin University of Commerce, Harbin 150028, China)、Guoqi Shang(Budweiser Harbin Brewery Co., Ltd., Harbin 150060, China)、Xiaohui Hu(Jiangsu Key Laboratory for Recognition and Remediation of Emerging Pollutants in Taihu Basin, School of Environmental Science and Engineering, Wuxi University, Wuxi 214105, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yuquan Wu, Juan Du, Meiqi Li, et al. Effects of Infusion and Decoction Mashing on Carbohydrate Structure, Fermentation Behavior, and Volatile Compound Profiles in Wheat Beer. Foods 2026-09-07. DOI: 10.3390/foods15173163. 原著ライセンス:CC BY.