著者の所属・活動拠点の国は、バングラデシュ、韓国です。

掲載誌:Animal Reports

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

養殖の現状を文献から見渡す

著者らは、アジアで広がるカニ養殖について、生産の現状と持続的な発展を妨げる課題を整理するため、既存の研究や生産統計をまとめた総説を発表しました。中心となるのは、熱帯・亜熱帯の沿岸に生息するノコギリガザミ属のカニです。成長が速く、生きたまま販売される水産物として価値が高いため、沿岸地域の重要な収入源になっています。

この総説では、主な養殖種と生産地域、飼育方式、人工ふ化や餌の技術、環境・社会経済面の課題を横断的に整理しています。新たな飼育実験の結果ではなく、各地で蓄積された知見をまとめた研究です。

生産は拡大し、飼育方式も多様に

論文が紹介する統計によると、世界のノコギリガザミ類の養殖生産量は、2010年の150,751トンから2021年の296,848トンへ、約97%増加しました。2021年には中国が世界全体の約51%を占め、ベトナムやフィリピンも主要な生産国となっています。商業的に重要な種は4種あり、国や地域によって中心となる種が異なります。

養殖には、池や囲い、かごで出荷できる大きさまで育てる方式のほか、身入りの少ないカニを短期間飼育する「蓄養」、脱皮直後の殻が軟らかいカニを出荷するソフトシェル生産があります。マングローブと組み合わせた養殖や、エビ、稲作などと組み合わせる生産方式も紹介されています。

著者らは、人工ふ化と稚ガニの育成技術の進歩が、生産拡大を支えてきたと整理しています。例えばベトナムでは、人工的に生産された稚ガニの普及と複合的な養殖方式の発展が、養殖生産の急増を支えたと報告しています。

天然資源への依存を減らすことが課題

一方、著者らによると、一部の地域では養殖に使う稚ガニを天然からの採集に大きく頼っています。人工ふ化には幼生の生存率が安定しないことや、稚ガニの供給不足という課題があり、天然資源への依存からの転換はまだ途上です。餌についても、生の魚などへの依存が残り、病気、環境への影響、市場上の制約が生産を左右すると整理しています。

論文は、養殖面積を広げるだけでなく、安定した稚ガニの供給、配合飼料の改善、病原体の持ち込みや拡散を防ぐ管理によって、生産効率を高めることを重視しています。また、養殖の拡大によってマングローブがさらに失われないようにする必要があると述べています。

この総説が示すのは、生産量の増加だけでは捉えきれない養殖の姿です。天然のカニや沿岸の生息環境を守ることと、養殖経営を成り立たせることを、併せて考える重要性が伝わります。

原著論文の著者・所属:Israt Jahan Tumpa(Department of Fisheries Biology and Genetics, Faculty of Fisheries, Bangladesh Agricultural University, Mymensingh 2202, Bangladesh)、Tutul Kumar Saha(Department of Fisheries Biology and Genetics, Faculty of Fisheries, Bangladesh Agricultural University, Mymensingh 2202, Bangladesh)、Md Hashibur Rahman(Major of Aquaculture and Applied Life Sciences, Division of Fisheries Life Sciences, Pukyong National University, Busan 48547, Republic of Korea;  Interdisciplinary Program of Marine and Fisheries Sciences and Convergent Technology, Pukyong National University, Busan 48513, Republic of Korea)、Sungchul C. Bai(Feeds and Foods Nutrition Research Center, Pukyong National University, Busan,  Republic of Korea; FAO World Fisheries University Pilot Program, Busan, Republic of Korea)、Taesun Min(Department of Animal Biotechnology, Jeju International Animal Research Center (JIA), Sustainable Agriculture Research Institute (SARI), Jeju National University, Jeju 6324, Republic of Korea)、Mohammad Moniruzzaman(Department of Animal Biotechnology, Jeju International Animal Research Center (JIA), Sustainable Agriculture Research Institute (SARI), Jeju National University, Jeju 6324, Republic of Korea)、Zakir Hossain(Department of Fisheries Biology and Genetics, Faculty of Fisheries, Bangladesh Agricultural University, Mymensingh 2202, Bangladesh)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Israt Jahan Tumpa, Tutul Kumar Saha, Md Hashibur Rahman, et al. Crab aquaculture in Asia: Current status, challenges, and future prospects. Animal Reports 2026-08-27. DOI: 10.64636/ar.51. 原著ライセンス:CC BY.