この研究は、トルコ、ドイツの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Sport Sciences for Health

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の狙い

食事のカロリーを抑えて体重を落とすと、脂肪だけでなく骨格筋(体を動かす筋肉)も減ってしまうことが知られています。筋肉が減れば体力や生活の質の低下につながりかねないため、減量中にいかに筋肉を保つかが課題になります。

そこで注目されているのが「全身電気刺激トレーニング(WB-EMS)」です。これは電極の付いたスーツを着用し、電気刺激によって主要な筋肉を直接働かせる方法で、著者らは関節への負担が少なく短時間で済むため、運動習慣のない人や時間の取れない人にも向いた手法だと説明しています。

ただし、この方法を食事制限に組み合わせたとき、効果の大きさが人によってばらつくことが指摘されていました。研究チームは、性別・年齢・肥満の程度という個人の特徴が、体組成の変化、とくに筋肉量の変化に影響を与えるのかどうかを確かめることを目的としました。当初の仮説は「筋肉量の維持は男性より女性で効果的だろう」というものでした。

調べ方

本研究は、トルコ・カラビュック地域で実施された無作為化比較試験のデータを後から分析したものです。分析対象は、電気刺激と栄養指導の両方を完全に守り切った、21〜64歳の過体重または肥満の男女134人(女性96人、男性38人)です。

参加者は8週間にわたり、週2回・1回20分の全身電気刺激トレーニングを受けました。刺激中はプランク、スクワット、腕立て伏せなどの基本的な運動を行っています。並行して、同じ管理栄養士から毎週の指導を受け、1日あたり約500kcalのエネルギー不足と、体重1kgあたり約1.2gのたんぱく質摂取を目安とする食事に取り組みました。

体組成は、体に微弱な電流を流して測る生体電気インピーダンス法を用い、開始時と8週後に測定しました。主要な評価項目は骨格筋量の変化で、体重、体脂肪率、ウエスト・大腿・上腕の周囲長の変化も併せて記録しています。分析では、性別、年齢(35歳以下と36歳以上)、BMIによる区分(過体重と肥満)ごとに変化を比べました。

報告された主な結果

8週間後、対象者全体で評価したすべての項目に有意な変化が見られたと報告されています。体重は平均で約4kg(4.8%)減少した一方、骨格筋量の減少は310g(1.0%)にとどまり、体重減少分の10%未満でした。体脂肪率は平均8.1%、ウエスト周囲長は5.2%減少しています。大腿(3.0%)と上腕(3.7%)の周囲長の減少は骨格筋量の減少より大きく、著者らはこれが主に脂肪組織の減少を示す可能性があると述べています。

個人の特徴による違いを見ると、年齢とBMI区分(過体重か肥満か)は、筋肉量の変化にほとんど影響していませんでした。体重、体脂肪率、各部位の周囲長の変化についても、年齢やBMI区分による差は認められていません。

一方で性別には有意な差がありました。骨格筋量の減少は男性で0.10kg、女性で0.39kgであり、体重の減り方の違いを調整しても差は残りました。つまり、筋肉量をよく保てていたのは男性のほうで、研究チームは当初の仮説を棄却したと明記しています。なお体重減少そのものは女性のほうが大きく(女性4.1kg、男性3.5kg)、体重減少に占める筋肉量減少の割合も男性のほうが小さいという結果でした。

著者らは、この結果が「体重減少に伴う除脂肪量の減少は女性より男性で大きい」とする先行研究とは逆向きであった点を、本研究の新しさとして挙げています。

この研究が示していること

研究チームは、いくつかの留意点も挙げています。電気刺激と食事制限を同時に行ったため、筋肉量の維持に電気刺激がどれだけ単独で寄与したかは本研究からは結論できません。また後から行った分析であるため、性別の人数の偏り(女性96人対男性38人)があり、男性側の検出力が不足していたこと、食事の遵守状況が本人の申告に基づく聞き取りで確認され、客観的な指標では裏づけられていないことも述べられています。

こうした条件を踏まえたうえで、著者らは次のように結論づけています。年齢や過体重・肥満の程度は、食事制限に全身電気刺激トレーニングを加えたときの体組成の変化を左右しない。一方、筋肉量と体重の変化には性別による差がある。そして男女いずれでも筋肉量の減少は体重減少全体の10%未満にとどまったことから、全身電気刺激トレーニングは、エネルギー制限中に筋肉量を保つための、安全で時間効率がよく関節にやさしい選択肢と考えられる、というものです。

著者:Hilal Doğan Güney(Nutrition and Diet Unit Safranbolu District Health Directorate Karabük Turkey)、Neslihan Akçay(https://ror.org/04wy7gp54 grid.440448.8 0000 0004 0384 3505 Hasan Doğan Faculty of Sport Sciences Karabük University Karabük Turkey)、Ersan Arslan(https://ror.org/01rpe9k96 grid.411550.4 0000 0001 0689 906X Faculty of Sport Sciences Tokat Gaziosmanpasa University Tokat Turkey)、Matthias Kohl(https://ror.org/02m11x738 grid.21051.37 0000 0001 0601 6589 Department of Medical and Life Sciences University of Furtwangen Schwenningen Germany)、Wolfgang Kemmler(https://ror.org/0030f2a11 grid.411668.c 0000 0000 9935 6525 Institute of Radiology University Hospital Erlangen Henkestrasse 91 91052 Erlangen Germany)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hilal Doğan Güney, Neslihan Akçay, Erşan Arslan, et al. Whole-body electromyostimulation during an energy restrictive diet: is there a modifying effect of sex, age and obesity level for skeletal muscle mass preservation?. Sport Sciences for Health 2026-10-02. DOI: 10.1007/s11332-026-01961-w. 原著ライセンス:CC BY.