著者の所属・活動拠点の国は、イギリスです。

掲載誌:Physiology & Behavior

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

筋力トレーニング(レジスタンス運動)は、筋肉量や身体機能の維持に役立つとして、生涯を通じた身体活動の推奨に含まれています。体重管理の推奨の中でも重要な要素とされていますが、筋力トレーニングが食欲にどう影響するかについてのデータはまだ多くありません。

これまでの研究の多くは、1回の運動の直後やその翌日までの食欲を調べたものでした。実際には、筋力トレーニングは週に何回も続けて行うのが一般的です。しかし、数か月続けたときに食欲がどう変わるかは、特に高齢者についてほとんど調べられていませんでした。

研究チームは、高齢男性が12週間筋力トレーニングを続けた場合に、主観的な食欲(本人が感じる空腹感や満腹感)が変わるかを調べました。あわせて、体組成や1日のエネルギー消費量と食欲との関係も検討しました。

何を調べたか

この研究は、すでに行われたランダム化比較試験のデータを改めて分析したものです。元の試験は4群構成で、筋力トレーニングの有無と、ホエイたんぱく質または炭水化物の補助食品の組み合わせを比べていました。今回の分析では、平均67歳の男性33人を、トレーニングを行った群(17人)と行わなかった群(16人)の2つにまとめて比較しました。補助食品は全員が1日2回摂取しており、その違いは統計解析の中で考慮されています。

トレーニング群は、指導者のもとで週2回、脚や胸、背中、肩などを鍛える6種類のマシン運動を行いました。強度は、1回だけ持ち上げられる最大重量の60%から始め、最初の4週間で80%まで段階的に上げました。トレーニングを行わない群は、普段どおりの生活を続けました。

食欲は、試験開始時と12週間後に測りました。参加者は、エネルギー消費量を測定できる専用の部屋(代謝チャンバー)で24時間過ごします。決められた食事と踏み台運動をこなしながら、空腹感、満腹感、満たされた感じ、これからどれくらい食べられそうかを、合計9回記録しました。記録には、100mmの線の上に印をつけて感じ方の強さを表す方法を用いました。結果は、時刻ごとの値に加えて、24時間を通した値の積み重ねとしても評価しました。

主な結果

12週間後、トレーニング群では、脂肪以外の体の重さ(除脂肪量)が平均1.0kg増えました。トレーニングをしなかった群の増加は0.1kgでした。安静時の代謝量も、トレーニング群のほうがわずかに増えていました。体重や脂肪量には、群の間で差がありませんでした。

一方で、食欲の指標には、両群の間で統計的に意味のある違いは見られませんでした。空腹感、満腹感、満たされた感じ、食べられそうな量、そしてそれらをまとめた食欲スコアのいずれも同じ結果でした。これは時刻ごとに見ても、24時間全体で見ても変わりませんでした。

試験開始時のデータでは、別の関係も見つかりました。安静時の代謝量が多い人ほど、24時間を通じて空腹感や食べられそうな量が大きく、満腹感は小さい傾向がありました。

著者らは限界も挙げています。参加者が少なく、事後の計算では、食欲の差を検出する力(統計的検出力)は11〜45%にとどまりました。また、対象は健康な高齢男性のみで、女性や肥満のある人に当てはまるかは分かりません。食欲に関わる腸のホルモンも測定していないため、結果が生じた仕組みは分かっていません。

この研究が示すこと

この研究では、高齢男性が12週間筋力トレーニングを続けても、24時間を通じた主観的な食欲に統計的な変化は確認されませんでした。トレーニング群では除脂肪量が増えていました。

著者らは、この結果を前向きに受け止めています。運動すると空腹になって食べ過ぎるという思い込みや、加齢に伴う食欲の低下への懸念がある中で、今回のトレーニングで食欲への悪影響は見られなかったからです。ただし、規模の小さい研究であり、影響がないと断定できる段階ではありません。

原著論文の著者・所属:Corbin Griffen(Centre for Physical Activity, Sport and Exercise Sciences, Coventry University, Coventry, UK; Human Metabolic Research Unit, University Hospitals Coventry and Warwickshire, Coventry, UK)、Derek Renshaw(School of Life & Health Sciences, University of Roehampton, London, UK)、John Hattersley(Human Metabolic Research Unit, University Hospitals Coventry and Warwickshire, Coventry, UK)、Martin O. Weickert(Centre for Physical Activity, Sport and Exercise Sciences, Coventry University, Coventry, UK; Department of Endocrinology and Diabetes, University Hospitals Coventry and Warwickshire NHS Trust, Coventry, UK; Warwick Medical School, University of Warwick, Coventry, UK; School of Life Sciences, Faculty of Health and Life Sciences, Coventry University, Coventry, UK)、Michael Duncan(Centre for Physical Activity, Sport and Exercise Sciences, Coventry University, Coventry, UK)、David R. Broom(Institute for Health and Care Improvement, York St John University, York, UK. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Corbin Griffen, Derek Renshaw, John Hattersley, et al. Appetite responses over 24 hours before and after 12-weeks of resistance exercise in older male adults: Secondary data analysis of a randomised trial. Physiology & Behavior 2026-09-27. DOI: 10.1016/j.physbeh.2026.115512. 原著ライセンス:CC BY.