ヨーグルトは私たちにとって身近な発酵乳製品ですが、その味や食感、保存性は使用する乳酸菌の種類や量によって大きく左右されます。伝統的なスターター菌(乳酸菌の種菌)だけでは、風味や栄養、機能性の面で限界があるとも指摘されてきました。そこで今回紹介する研究では、Limosilactobacillus fermentum FOSU YHD19という乳酸菌を伝統的なスターター培養と組み合わせて使用した場合に、ヨーグルトの品質がどのように変化するのかが調べられました。
研究チームは、この菌を10の5乗〜10の9乗CFU/mL(CFUは生きた菌の数を示す単位)という異なる濃度で添加し、発酵の進み方や保存中の安定性を詳しく観察しました。具体的には、酸性度を示すpHや滴定酸度、水分をどれだけ保持できるか(保水性)、生菌数の変化を発酵過程を通じて追跡したほか、製品が仕上がった後の官能評価(人の感覚による評価)、微細構造、香り成分の分析も行われました。
研究でわかったこと
その結果、FOSU YHD19を添加すると発酵が効率よく進み、10時間以内にpHが4.44まで低下することが確認されました。また、ヨーグルトの硬さや弾力性を適度に抑える方向にテクスチャーが変化し、より密でなめらかな食感になったと報告されています。
特に接種量が10の7乗CFU/mLのときに総合的な品質が最も良好で、伝統的なスターター培養のみの場合を上回ったとされています。この条件では、保水性が94.1%±0.02%に達し、滴定酸度は41.2±1.0°Tでした。顕微鏡による観察では、タンパク質が作るゲル構造がより密で均一になっていることも示されました。官能評価の総合スコアも106.3±4.83と、他のどの処理群よりも高い値だったということです。
さらに、GC-MS分析(香り成分を詳しく調べる分析手法)により、酸類・アルコール類・ケトン類といった香り成分の相対量が増加し、フルーティでチーズのような香りが強まったことも報告されています。保存性については、4℃で28日間保存した後も生菌数は10の6乗CFU/mL以上を維持し、各種の品質指標も安定していたとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の乳酸菌株を用いた条件下でのヨーグルトの理化学的特性・風味・保存品質を検証した一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。ここで得られた知見は、風味や食感に優れ、生きた菌を長く保持できるヨーグルト製品の開発に向けた理論的な基盤や技術的な目安を提供するものと位置づけられています。実際の製品化や健康面への影響については、今後さらなる研究の積み重ねが必要になると考えられます。
まとめ
今回紹介した研究では、Limosilactobacillus fermentum FOSU YHD19を伝統的なスターター培養と組み合わせることで、ヨーグルトの発酵速度、食感、香り、保存中の品質安定性が向上する可能性が示唆されました。特に10の7乗CFU/mLという接種量で、保水性や官能評価などの指標が良好だったと報告されています。乳酸菌の組み合わせや量を工夫することで、ヨーグルトの品質がどのように変わりうるかを示す興味深い知見といえるでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:Limosilactobacillus fermentum FOSU YHD19がヨーグルトの理化学的特性、風味特性および貯蔵品質に及ぼす影響に関する研究(食品工業科技・2026年08月)