著者の所属・活動拠点の国は、スウェーデンです。
掲載誌:Journal of Eating Disorders
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
成長期の若いアスリートにとって、適切な栄養は競技力だけでなく、健康な成長と発達を支えるうえでも重要です。一方、スポーツの世界では、問題のある食べ方(摂食の乱れ)や、医学的に診断される摂食障害が健康や競技力に影響しうることが知られています。食事からのエネルギーが運動で使う量に対して足りない「低エネルギー利用可能性」という状態も懸念されており、摂食の乱れや摂食障害はその主な原因の一つとされています。
スウェーデンでは約11,600人の生徒が、学業と競技を両立させる高校段階のスポーツ強化校に在籍しています。親元を離れて暮らし、10代のうちから自分で食生活を管理する生徒も少なくありません。しかし、こうした生徒の日々の食生活に関する研究はほとんどなく、摂食障害についてスウェーデンのデータも乏しい状況でした。
そこで研究チームは、二つの目的を立てました。一つは、生徒の食事の取り方や、日々の食事を実際にやりくりするうえで感じている障壁を明らかにすること。もう一つは、摂食障害のスクリーニング(ふるい分け検査)で陽性となる生徒の割合を調べ、それにどのような要因が関連しているかを検討することです。
調べた方法
研究は、スウェーデン・スポーツ連盟が毎年行っている全国オンライン調査に、著者らが食と栄養に関する20問を追加する形で、2023年前半に実施されました。対象はおおむね16〜19歳のスポーツ強化校の生徒で、追加の質問にも回答した7,993人のデータが分析されました。
質問では、肉や魚を食べるか、朝食・昼食・夕食の3食をとっているか、間食の回数、栄養補助食品(プロテインやエネルギー補給用の製品、カフェイン錠などの競技力向上をうたう製品)の利用、健康や競技力のために何を食べればよいか分かっていると思うか、などを尋ねました。また、調理する時間、食品を計画・購入する時間、料理の技術、十分な食事をとるためのお金、調理設備、保存設備の6つについて、不足を感じているかどうかも聞いています。
摂食障害のスクリーニングには、5つの質問からなる「SCOFF」という広く使われている検査を用い、2つ以上に当てはまる場合を陽性としました。ただし著者らは、質問数の制約から、元の5つの「はい/いいえ」の質問を、当てはまるものに印を付ける1つの質問にまとめる形に変更しており、この変更版の妥当性は確認されていないとしています。また、スクリーニングで陽性になることは、摂食障害と診断されることと同じではありません。
主な結果
食生活については、生徒の15.5%が毎日3食をとっておらず、最も抜かれやすいのは朝食でした。ほぼ全員が間食をとっていました。約4割が栄養補助食品を利用しており、男子(45.9%)の方が女子(29.5%)より多く利用していました。菜食(ベジタリアン・ビーガン)はまれで、合わせて2%に満たない程度でした。生徒たちは全体として、健康や競技力のために何を食べればよいか分かっていると強く感じていました。
日々の食事をやりくりするうえでの障壁として多かったのは、調理する時間の不足(26.5%)、食品を計画・購入する時間の不足(23.5%)、料理の技術の不足(14.0%)でした。6つの障壁のうち少なくとも1つを感じていた生徒は49.1%と、ほぼ2人に1人にのぼりました。
摂食障害スクリーニングで陽性となったのは全体の9.5%で、女子では15.8%、男子では5.1%でした。著者らによれば、この集団についてこれほど大規模な推定が示されたのは初めてです。なお、スウェーデンの一般の若者を対象とした先行研究の提案に基づき、1つでも当てはまれば摂食の乱れの可能性ありとする試験的な基準を用いると、25.3%が該当しました。
複数の要因を同時に考慮した分析では、次の7つがスクリーニング陽性と関連していました。女子であること(最も強い関連)、毎日3食をとっていないこと、肉を食べない食生活であること、栄養補助食品を使っていること、個人競技をしていること、感じている実用面の障壁が多いこと、そして健康のために何を食べればよいか分かっているという感覚が弱いことです。一方、住まいの種類や、授業で摂食障害について教わったかどうか、また「細身が有利」「階級制」といった競技の体格上の特徴とは、統計的に有意な関連は見られませんでした。
この研究が示すこと
この研究は、スウェーデンのスポーツ強化校の生徒のおよそ1割が摂食障害スクリーニングで陽性となり、食事の抜き方や菜食、栄養補助食品の利用など、日々の食生活に関わるいくつかの要因がそれと関連していることを示しました。また、生徒の約半数が時間不足などの実際的な障壁を抱えていることも明らかになりました。
ただし、これは一時点の調査であり、示されたのは統計上の関連で、どちらが原因かは分かりません。自己申告によるデータであることや、変更版のSCOFFが検証されていないことも、著者らは限界として挙げています。そのうえで研究チームは、摂食障害のリスクを防ぐ取り組み、教員やコーチが危険な兆候に気づけるようにすること、そして生徒の食生活における時間の制約を減らす支援が学校に求められると提言しています。
原著論文の著者・所属:Ida Davidsson(Department of Food, Nutrition and Culinary Science, Umeå University, Umeå, Sweden)、Agneta Hörnell(Department of Food, Nutrition and Culinary Science, Umeå University, Umeå, Sweden)、Carita Bengs(Department of Food, Nutrition and Culinary Science, Umeå University, Umeå, Sweden)、Magnus Ferry(Department of Education, Umeå University, Umeå, Sweden)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ida Davidsson, Agneta Hörnell, Carita Bengs, et al. Exploring a positive screen for eating disorders among 7,993 elite sport pupils in Sweden and its association with everyday food practices, demographics, and sports. Journal of Eating Disorders 2026-10-23. DOI: 10.1186/s40337-026-01804-6. 原著ライセンス:CC BY.