この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Grasas y Aceites
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
液体の油を半固体の素材にする
研究チームは、ひまわり油にキチンを含む水と乳化剤を組み合わせ、食品用の半固体脂肪に代わる素材を作れるか調べました。目指したのは、油と水を混ぜた乳化物にゲルの性質を持たせる「エマルゲル」です。液体の油を形や弾力のある素材にすることで、食品に使う脂肪の選択肢を広げようとする研究です。
キチンは、甲殻類や昆虫の外骨格などに含まれる天然の高分子です。著者らは、キチンを含む水の部分がゲルを形成し、油を含む乳化物全体を支えるという考えに基づき、乳化剤の種類によって安定性や熱への強さ、変形への応答がどう変わるかを比較しました。
4種類の乳化剤で作り、安定性と弾力を比較
研究チームは、水にキチンを重量比6.6%で分散させ、ひまわり油と水の部分を体積比70対30で混合しました。キチンは水に溶けないため、ここで用いたのは溶液ではなく、キチンが水中に分散したものです。混合物を高速でかき混ぜた後に冷却し、予備試験で安定していたTween 20、Tween 40、Tween 80、Pluronic F68の4種類の乳化剤を使った試料を詳しく調べました。
著者らによると、4種類ともクリームがかった白色を示し、遠心分離試験でも油と水の分離は見られませんでした。また、10℃で小さな変形を繰り返し与える試験では、すべての試料で液体として流れる性質よりも、弾力を持つ固体に近い性質が上回りました。特にTween 20を使った試料は、著者らの評価基準で強いゲルに相当する性質を示しました。
大きな変形を加えると、いずれの試料も一時的に液体に近い挙動になりましたが、変形を小さくすると再びゲルとしての性質を取り戻しました。研究チームは、この結果を、機械的な力で崩れた構造が回復できることを示すものと報告しています。
加熱への強さは乳化剤によって異なる
温度を上げながら変形への応答を測る試験では、Tween系の3種類は120℃までゲルとしての性質を保ちました。一方、Pluronic F68を使った試料は、約45℃で弾力が優勢な状態から液体に近い状態へ移りました。同じキチンとひまわり油を使っても、乳化剤の選択によって加熱時の構造の保ちやすさが異なることが示されました。
著者らは、分離しにくさ、変形後の構造回復、Tween系試料の熱への強さを踏まえ、これらのエマルゲルを食品用の半固体脂肪の代替候補と位置づけています。この研究は、液体のひまわり油にゲルとしての性質を与え、その性質を乳化剤によって変えられることを示しています。
著者:Emin Yılmaz(Çanakkale Onsekiz Mart University, Faculty of Engineering, Department of Food Engineering)、Eda Keskin Uslu(Çanakkale Onsekiz Mart University, Ezine Vocational College, Department of Food Processing)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Emin Yılmaz, Eda Keskin Uslu. Preparation and characterization of chitin dispersion entangled sunflower oil emulsions. Grasas y Aceites 2026-09-30. DOI: 10.3989/gya.1211242.2271. 原著ライセンス:CC BY.