著者の所属・活動拠点の国は、タンザニア、インド、フィリピン、ザンビア、イギリスです。
掲載誌:BMC Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
糖尿病や心血管疾患などの非感染性疾患(NCD)は、かつては主に高所得国の問題とされていましたが、現在は低・中所得国でも大きな健康課題になっています。その危険因子の一つとして食事が注目されており、人々の食事の「質」をどう測るかが重要になります。
食事の質を測る方法は大きく二つあります。一つは、実際に集めた食事データから統計的に食べ方の傾向(食事パターン)を取り出す「データ主導型」の方法です。もう一つは、あらかじめ決めた基準で点数をつける「指標型」の方法で、国際的な食事の質の調査票(DQQ)で使われるNCD-ProtectスコアとNCD-Riskスコアがその例です。NCD-Protectは全粒穀物、豆類、ナッツ・種子、緑黄色野菜、果物など9つの健康的な食品群をどれだけ食べているかを0〜9点で示します。NCD-Riskは清涼飲料、菓子類、加工肉、揚げ物、ファストフードやインスタント麺、塩味のスナック菓子など、健康上好ましくないとされる食品群の摂取を0〜9点で示します。
研究チームは、低・中所得国ではこの二つの方法がどの程度一致するのか、またそれぞれが血糖の指標とどう関連するのかについての知見が限られていると指摘しています。そこで本研究では、両方法の一致度と、血糖指標との関連を調べました。
何を調べたか
分析には、過去の栄養不良と後の糖尿病との関係を調べる国際研究「SAMPA」のデータが使われました。タンザニア、ザンビア、フィリピン、インドの6つのコホート(追跡調査の対象集団)から、成人1,821人と子ども430人の計2,251人が含まれています。各コホートは出生時の低体重児、重度の急性栄養不良の治療を受けた子ども、HIV感染者を含む成人、結核治療を受けた成人など、背景の異なる集団から成り立っています。
食事は、過去4週間に各食品をどのくらいの頻度で食べたかを尋ねる食物摂取頻度調査票で調べられました。研究チームは、45の食品群の摂取頻度に主成分分析という統計手法を適用し、一緒に食べられやすい食品の組み合わせを各コホートで2つずつ取り出しました。そして、そのパターンを構成する主な食品が一般に健康的とされるものなら「健康的」、好ましくないとされるものなら「不健康」、両方が混在していれば「中間的(最適でない)」と名づけました。
一方、NCD-ProtectとNCD-Riskのスコアは本来、前日1日分の食事の聞き取りから算出されます。そこで研究チームは、週4回以上食べている食品を「食べている」とみなすように頻度データを置き換え、これらのスコアを近似的に算出しました。
二つの方法の一致度は、偶然による一致を差し引いて評価する「カッパ係数」で調べました。血糖の指標としては、ブドウ糖を飲んで2時間後の血糖値(経口ブドウ糖負荷試験)と、過去の平均的な血糖状態を反映するHbA1cが用いられました。血糖との関連の分析は、子どもでは糖尿病がまれだったため成人の4コホートに限られ、年齢、性別、社会経済状況などを考慮したうえで、アフリカのコホートではHIV感染の有無も考慮して行われました。
主な結果
統計的に取り出した食事パターンと、NCD-Protect・NCD-Riskスコアとの一致度は、コホートによってカッパ係数0.21〜0.57の範囲でした。著者らはこれを「まずまず」から「非常に良い」一致と表現し、二つの方法が健康的な食事とそうでない食事の違いをおおむね同じように捉えていると報告しています。
一方で、食事と血糖指標との関連はコホートによってばらばらで、一貫した傾向は見られませんでした。たとえば、タンザニアの成人コホートでは、中間的なパターンが負荷試験2時間後の高い血糖値と、不健康なパターンと中間的なパターンが高いHbA1cと関連していました。同じコホートでは、NCD-ProtectとNCD-Riskの両スコアがともに低いHbA1cと関連していました。フィリピンの一つのコホートでは、NCD-Riskスコアが高いHbA1cと関連していました。さらに、ザンビアの成人では健康的とされる食事パターンの人ほど負荷試験2時間後の血糖値が高いという、予想とは逆向きの関連も見られました。これら以外の組み合わせでは、統計的に意味のある関連は認められませんでした。
追加の分析では、過去のやせ型の栄養不良が参加者の特徴と糖尿病との関連を変えることはなく、年齢や社会経済状況などの参加者の特徴だけではコホート間の違いを説明できないことも示されました。また、糖尿病の人を除いた分析では、負荷試験の結果はほぼ変わらなかった一方、HbA1cの結果は一部のコホートで大きく変動しました。著者らはこれを、人数が減り値の幅が狭まったことによる方法上の影響と解釈しています。
研究が示すこと
この研究は、異なる二つの食事評価法がある程度一致する一方で、それらと血糖指標との関係は集団や測り方によって大きく異なることを示しました。著者らは、同じ時点のデータを分析した横断研究であるため因果関係は判断できず、すでに食生活を変えていた人が含まれている可能性なども否定できないと述べています。
そのうえで著者らは、高所得国で「健康的」とされる食事の物差しを、多様な低・中所得国の人々の代謝リスク評価にそのまま当てはめることには慎重であるべきだと結論づけ、地域の食習慣や食環境を反映した評価法の必要性を強調しています。
原著論文の著者・所属:Evangelista Malindisa(Department of Physiology, the Catholic University of Health and Allied Sciences, Mwanza, Tanzania; Mwanza Research Centre, National Institute for Medical Research, Mwanza, Tanzania)、Sana Ahmed(Bhaskaracharya College of Applied Sciences, University of Delhi, New Delhi, India; Trivedi School of Biosciences, Ashoka University, Sonipat, India)、Dixi Paglinawan -Modoc(Nutrition Center of the Philippines, Manila, Philippines)、Belinda Kweka(Mwanza Research Centre, National Institute for Medical Research, Mwanza, Tanzania)、Molly Chisenga(University Teaching Hospital, Lusaka, Zambia)、Dorothea Nitsch(Faculty of Epidemiology and Population Health, London School of Hygiene and Tropical Medicine, London, UK)、Patrick Ngoya(Department of Radiology, Catholic University of Health and Allied Sciences, Mwanza, Tanzania)、Geeta Trilok-Kumar(Institute of Home Economics, University of Delhi, New Delhi, India; Trivedi School of Biosciences, Ashoka University, Sonipat, India)、George PrayGod(Muhimbili Centre, National Institute for Medical Research, Dar Es Salaam, Tanzania)、Suzanne Filteau(Faculty of Epidemiology and Population Health, London School of Hygiene and Tropical Medicine, London, UK)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Evangelista Malindisa, Sana Ahmed, Dixi Paglinawan -Modoc, et al. Dietary patterns, diet quality scores and the risk of diabetes: a multi-country study. BMC Nutrition 2026-07-31. DOI: 10.1186/s40795-026-01448-4. 原著ライセンス:CC BY.