著者の所属・活動拠点の国は、イギリスです。
掲載誌:International Journal of Obesity
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
英国では、健康的な食事の推奨内容を一般の人に向けて図で示した「イートウェル・ガイド(Eatwell Guide)」が使われています。多様な野菜や果物をとり、でんぷん質の主食や全粒穀物、豆類、肉・魚・卵をほどほどに食べ、水分を十分にとり、脂肪・塩分・糖分の多い食品を控えるという食事パターンです。英国の人々になじみのある食品をもとに作られている点が特徴です。
このガイドは英国の栄養政策で重要な位置を占めていますが、ガイドに沿った食事と体脂肪の関係を調べた研究は多くありませんでした。著者らによると、これまでの研究は比較的小規模な集団や閉経後女性など特定の集団に限られていました。また、肥満の指標としてよく使われるBMI(体重を身長で調整した値)や腹囲だけでは体組成を十分に捉えきれず、肥満になりやすい遺伝的素因が関係を左右するかどうかも調べられていませんでした。
そこで研究チームは、英国の大規模な住民研究「UKバイオバンク」のデータを使い、イートウェル・ガイドへの沿い方と複数の体脂肪の指標との関連を、ある一時点での比較と、時間の経過に伴う変化の両面から調べました。
何をどのように調べたか
UKバイオバンクには、イングランド、スコットランド、ウェールズで募集された37〜73歳の成人50万人以上が参加しています。今回の分析では、食事のデータや体の測定値などがそろっている15万6764人を対象としました。食事は、前日に食べたものをウェブ上で自分で記録する調査票で把握しました。複数回の記録がある人は、その平均を使っています。
食事がガイドにどれだけ沿っているかは、食品に基づく得点で評価しました。でんぷん質の主食、全粒穀物、豆類、魚、鶏肉などの白身の肉、ナッツ、卵、果物と野菜、乳製品、赤肉・加工肉、嗜好品的な食品、水分の12項目をそれぞれ0〜5点で採点し、満点は60点です。推奨量に届いていれば満点となります。体によいとされる食品は少ないほど点が下がり、控えるべき食品は多いほど点が下がる仕組みです。
体脂肪の指標としては、BMI、腹囲、BMIと身長に対して腹囲がどれだけ大きいかを示す「体型指数(ABSI)」、体に弱い電流を流して推定する全身の体脂肪率と体幹部の体脂肪率の五つを使いました。分析では、年齢、性別、民族、社会経済的状況、学歴、喫煙、身体活動量、摂取エネルギー量の影響を考慮しています。
主な結果
一時点での比較では、ガイドによく沿った食事をしている人ほど、五つの指標がいずれも低い傾向にありました。ガイドへの沿い方が低いグループと比べると、中程度のグループでは過体重または肥満である確率(オッズ)が9%、高いグループでは25%低くなっていました。
時間の経過に伴う変化を追った分析でも、ガイドによく沿っているほどBMI、腹囲、全身の体脂肪率、体幹部の体脂肪率は好ましい推移を示しました。沿い方が高いほど関連が強まる「用量反応」のような傾向も、BMI、腹囲、全身の体脂肪率で見られました。一方、体型指数(ABSI)については、統計的にはっきりした関連は認められませんでした。著者らは、この指標が体脂肪の量よりも体の形を捉えているためではないかと考えています。
こうした関連は、性別、年齢、身体活動量、社会経済的状況、肥満になりやすい遺伝的素因の高低にかかわらず、おおむね一貫して見られました。BMIでは女性、BMIと腹囲では比較的若い人や社会経済的に最も厳しい状況にある人で関連がやや強い傾向がありました。身体活動量や遺伝的素因によって関連が変わるという証拠はありませんでした。摂取エネルギー量を考慮から外しても結果はほぼ同じで、著者らは、エネルギー摂取量の違いだけでは関係を説明しにくいと述べています。
この研究が示すこと
この研究は、英国の公的な食事ガイドに沿った食事が、体重だけでなく体脂肪の量や分布を含む複数の指標の好ましい状態や推移と関連していることを、大規模な追跡データで示しました。遺伝的に肥満になりやすい人でも同様の関連が見られた点も報告されています。
ただし、これは観察研究であり、ガイドに沿った食事が体脂肪を減らしたという因果関係を示すものではありません。著者らは、肥満そのものが食行動に影響するという逆向きの関係の可能性や、自己申告による食事記録の誤差、参加者が一般の英国人より裕福で学歴が高い傾向にあること、分析対象の約96%が白人であることなどを限界として挙げています。そのうえで研究チームは、体重管理における食事の質の重要性を支持する結果だとまとめています。
原著論文の著者・所属:Alex Griffiths(Obesity Institute, School of Health, Leeds Beckett University, Leeds, UK. [email protected])、Sarah Gregory(Edinburgh Dementia Prevention, Centre for Clinical Brain Sciences, University of Edinburgh, Edinburgh, UK; School of Medicine, University of St Andrews, St Andrews, UK; Scottish Brain Sciences, Edinburgh, UK)、Fiona C. Malcomson(Human Nutrition & Exercise Research Centre, Population Health Sciences Institute, Centre for Healthier Lives, Newcastle University, Newcastle upon Tyne, UK)、Marie Spreckley(MRC Epidemiology Unit, University of Cambridge, Cambridge, UK)、Jamie Matu(Obesity Institute, School of Health, Leeds Beckett University, Leeds, UK)、Louisa Ells(Obesity Institute, School of Health, Leeds Beckett University, Leeds, UK)、Oliver M. Shannon(Human Nutrition & Exercise Research Centre, Population Health Sciences Institute, Centre for Healthier Lives, Newcastle University, Newcastle upon Tyne, UK)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alex Griffiths, Sarah Gregory, Fiona C. Malcomson, et al. Adherence to the Eatwell Guide and associations with markers of adiposity: a prospective analysis within the UK Biobank cohort. International Journal of Obesity 2026-08-13. DOI: 10.1038/s41366-026-02190-4. 原著ライセンス:CC BY.