この研究は、カザフスタン、ロシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を明らかにしようとしたのか
学齢期は、その後の人生にも影響しうる食習慣が形づくられる時期であり、成長にともなって栄養素の必要量も増えます。研究チームは、この時期の食事のあり方を知る手がかりとして、主な食品群をどのくらいの頻度で口にしているかに注目しました。ある一日だけの記録ではとらえにくい、日常的で安定した食べ方の特徴を描き出せるためです。
ただし、カザフスタンの児童・生徒が実際にどんな頻度で何を食べているかについては、とくに都市化の進んだ地域を対象に、年齢・性別・社会人口学的な違いまで踏まえたデータが乏しいと著者らは述べています。そこで本研究は、中部カザフスタンのカラガンダ市に暮らす7〜17歳を対象に、主要な食品群の摂取頻度と、その背景にある年齢・性別・社会的要因との関係を調べることを目的としました。
どのように調べたか
調査は横断研究として行われました。横断研究とは、ある時点の状態をまとめて観察する方法で、原因と結果の順序までは特定できない設計です。都市計画上の公式資料をもとに、性格の異なる二つの地区(マイクドゥクと南東地区)が選ばれ、それぞれ6校ずつ計12の公立学校で調査が実施されました。最終的な分析対象は864人で、男子47.9%、女子52.1%でした。14歳未満については保護者が、15〜17歳の生徒は本人が回答しています。
用いられたのは著者らが作成した食物摂取頻度質問票で、40品目について「毎日」「週に数回」「月に数回」「まれ・食べない」の4区分で答える形式です。カザフスタンの食生活に合わせ、民族的な肉製品や伝統的な発酵乳飲料も項目に含まれました。質問票はロシア語版とカザフ語版が用意され、本調査の前に35人を対象とした予備調査で表現や構成が調整されています。
結果の整理では、品目を12の食品群にまとめて記述するとともに、主成分分析という統計手法で食事パターンを抽出しました。これは、いっしょに食べられやすい食品の組み合わせを数値的に見つけ出し、少数の「食べ方の型」として要約する方法です。
報告された主な結果
年齢による違いが目立ちました。発酵乳製品を頻繁に(毎日または週に数回)口にする割合は、7〜10歳で81.6%、11〜14歳で79.3%だったのに対し、15〜17歳では23.2%でした。カッテージチーズやイリムシク、チーズ類も、最年少群の55.2%から最年長群の23.2%へと下がっています。野菜・果物ジュースも66.3%から31.1%へ減少しました。
逆に加齢とともに増えたものもあります。缶詰肉は13.9%から53.6%へ、ナッツ類は13.9%から61.4%へ、缶詰野菜は3.8%から33.0%へと上昇しました。もっとも差が大きかったのはファストフードで、7〜10歳では10.4%だった頻繁な摂取が、11〜14歳で66.7%、15〜17歳では87.6%に達しています。コーヒーも最年少群の0%から最年長群の88.8%へと大きく変化しました。一方、生鮮肉、パン類、新鮮な野菜・果物、紅茶はどの年齢層でも高い水準が続き、生鮮魚の頻繁な摂取はどの群でも低いままでした(15.6%、9.7%、8.6%)。
主成分分析からは三つの食事パターンが示されました。第一は「加工食品・ファストフード型」で、コーヒーとファストフードが中心となり、加工肉や缶詰食品なども寄与します。第二は「伝統的な食肉中心型」で、シュジュクやカズィといった保存肉、燻製・乾燥肉、内臓肉が特徴で、生鮮魚や菓子類とは逆向きの関係にありました。第三は「混合的な乳製品型」で、発酵乳製品やチーズ、牛乳、生鮮肉、卵、豆類などを含み、他の二つより多様ではあるものの、果物・野菜・ベリー・魚の寄与は小さいと著者らは述べています。
これらのパターンと背景要因との関係を回帰分析で調べたところ、加工食品・ファストフード型は年長の生徒、カザフ民族以外の子ども、南東地区の学校に通う生徒で強くみられました。逆に混合的な乳製品型は年齢とともに弱まる傾向が報告されています。世帯の食費支出との関連も認められた一方、世帯収入や保護者の学歴とは明確な関連がみられなかった項目もあります。なお、本研究は身体計測や血液指標を測っておらず、著者らは健康上の結果を評価したものではないと明記しています。
この研究が示すこと
著者らは、伝統的な食文化に根ざした食べ方と、加工食品の増加に形づくられた食べ方とが同じ地域に共存していると述べ、これを経済変化や都市化にともなう「栄養転換」という考え方と結びつけて論じています。ラテンアメリカや東欧、中東・北アフリカでも似た過程が記述されてきました。
とりわけ年齢による落差は大きく、思春期に入ると発酵乳製品やジュースが遠ざかり、ファストフードやコーヒーが日常に入り込む姿が数字に表れています。ひとつの都市の学校で得られた横断的な観察ではありますが、子どもの食べ方が育つ環境と切り離せないことを、具体的な頻度の分布として示した報告だといえます。
著者:S. I. Rogova(School of Public Health, Karaganda Medical University, Karaganda 100008, Kazakhstan)、Zhanerke Bolatova(School of Residency and Professional Development, Karaganda Medical University, Karaganda 100008, Kazakhstan)、Karina Nukeshtayeva(School of Public Health, Karaganda Medical University, Karaganda 100008, Kazakhstan)、Olzhas Zhamantayev(School of Public Health, Karaganda Medical University, Karaganda 100008, Kazakhstan)、Gaukhar Kayupova(School of Public Health, Karaganda Medical University, Karaganda 100008, Kazakhstan)、Aza GALAYEVA(School of Public Health, Karaganda Medical University, Karaganda 100008, Kazakhstan)、Nurzhamal Shintayeva(School of Public Health, Karaganda Medical University, Karaganda 100008, Kazakhstan)、Olga V. Plotnikova(Department of Occupational Hygiene and Occupational Pathology, Omsk State Medical University, Omsk 644099, Russia)、Д. В. Турчанинов(Department of Hygiene and Human Nutrition, Omsk State Medical University, Omsk 644099, Russia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):S. I. Rogova, Zhanerke Bolatova, Karina Nukeshtayeva, et al. Assessment of Food Consumption Frequency Among Schoolchildren: Cross-Sectional Study from an Urbanized Region of Central Kazakhstan. Nutrients 2026-08-25. DOI: 10.3390/nu18172774. 原著ライセンス:CC BY.