著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
ブドウの果皮には、ポリフェノールと呼ばれる植物由来の化合物が多く含まれます。その一つである縮合型タンニン(プロアントシアニジン)は、カテキンなどの小さな構成単位が鎖のようにつながった分子で、渋みや苦みといった味の感じ方に関わることが知られています。著者らは、果皮の縮合型タンニンを理解するには、総量を測るだけでは足りず、どれくらいの長さでつながっているかといった構造も見る必要があると述べています。
ブドウの果実は、開花後の緑色の成長期を経て、ベレゾーン(果実が軟らかくなり、果皮が色づき始める成熟開始の時期)を迎えます。この間、ポリフェノールの合成や蓄積は大きく変化します。研究チームは、韓国で育成された生食用ブドウ3品種『ロゼッタ』『シューティングスター』『ホンジュシードレス』を対象に、開花から収穫までの果皮のポリフェノール組成と縮合型タンニンの構造がどう変化するかを調べました。
何を調べたか
試料は2025年に、韓国慶尚北道・尚州の商業ブドウ園で採取されました。開花1日後から収穫まで1〜2週間おきに果実を集め、成長の全期間をカバーしています。ベレゾーンは『ロゼッタ』と『シューティングスター』で開花後およそ6週、『ホンジュシードレス』でおよそ7〜8週に観察されました。各時点・各品種について、5房分の果実をまとめたものを1つの試料とし、これを3つずつ用意しました。
分析は3段階で行われました。まず、果皮の総ポリフェノール量、プロアントシアニジン量、重合型タンニン量、そして赤や紫の色素であるアントシアニンの総量を測定しました。次に、HPLC(液体クロマトグラフィー)という分離分析の手法で、カテキンやエピカテキンなど、タンニンの構成単位にあたる小さな分子(フラバン-3-オール)を調べました。最後に、果皮から重合型タンニンの部分だけを取り出し、化学的に分解して鎖の末端部分と伸長部分を区別しました。この比率から、タンニンが平均して何個の単位でつながっているかを示す「平均重合度」を推定しています。
主な結果
論文によると、3品種ともポリフェノール量は成長に沿って一直線には変化しませんでした。変化の大きさや時期は品種によって大きく異なりました。『ホンジュシードレス』は成長初期(開花後1日〜5週)に総ポリフェノール、プロアントシアニジン、重合型タンニンがほかの2品種より高い傾向にあり、その後の減少も緩やかでした。『ロゼッタ』は5週以降にこれらが大きく減少しました。『シューティングスター』は4週までに急減し、その後も低い水準のままでした。統計解析では、これらの指標に品種、成長時期、およびその組み合わせのいずれも有意な影響を示したと報告されています。
アントシアニンはベレゾーン以降に蓄積が始まりました。『ロゼッタ』では大きく増え、開花後13週で最も高くなりました。『ホンジュシードレス』では10週から中程度に増加しました。一方、『シューティングスター』では成長期間を通じてアントシアニンが検出されませんでした。
調べた標準物質のうち果皮で検出されたのは、プロシアニジンB1、カテキン、エピカテキンの3種類だけでした。没食子酸が結合したタイプは、どの時期にも見つかりませんでした。これらの量は『ホンジュシードレス』で初期に最も多く、『ロゼッタ』は中間的で、一時的な増減と成熟期の部分的な回復が見られました。『シューティングスター』は初期以降、低い水準にとどまりました。
平均重合度は、全体として成長に伴って高まる傾向を示しました。『ロゼッタ』では後期に上昇が見られ、『シューティングスター』は低く安定していました。ただし、統計解析では品種や成長時期による有意な差は検出されませんでした。そのため著者らは、品種ごとの違いは記述的な傾向として解釈すべきだとしています。また、分解後にプロシアニジンB1が検出され、その由来を特定できなかった点を、重合度推定の限界として挙げています。
研究から分かること
著者らは、平均重合度の変化がポリフェノール量や構成単位の量と必ずしも並行しないことを強調しています。タンニンの量、構成単位の組み合わせ、平均的な分子の大きさは、互いに関連はあっても別々の性質だという見方です。
さらに、成長途中の測定値の減少については、果実の肥大による希釈や、タンニンが細胞壁の成分と結びついて抽出されにくくなることが一部関係している可能性を指摘しています。つまり、測定された濃度が下がっても、それがタンニンそのものの減少を意味するとは限りません。
この研究は、韓国で新たに育成された生食用ブドウについて、果皮のポリフェノールとタンニンが成長とともにどう変わるかを示す基礎的な情報を提供しています。果皮のタンニンを理解するには、量と構造の両面から見ることが大切だと伝える内容です。
原著論文の著者・所属:Byeong Hyeon Yun(Department of Agriculture, Forestry, and Bioresources and Research Institute of Agriculture and Life Sciences, Seoul National University, Seoul 08826, Republic of Korea; Fruit Research Division, National Institute of Horticultural & Herbal Science, Wanju 55365, Republic of Korea)、Dongjun Im(Fruit Research Division, National Institute of Horticultural & Herbal Science, Wanju 55365, Republic of Korea)、Su In Mo(Fruit Research Division, National Institute of Horticultural & Herbal Science, Wanju 55365, Republic of Korea)、Suh-Hyun Ryu(Fruit Research Division, National Institute of Horticultural & Herbal Science, Wanju 55365, Republic of Korea)、Seon-Hwa Bae(Fruit Research Division, National Institute of Horticultural & Herbal Science, Wanju 55365, Republic of Korea)、Jung-Ho Noh(Fruit Research Division, National Institute of Horticultural & Herbal Science, Wanju 55365, Republic of Korea)、Youn-Young Hur(Fruit Research Division, National Institute of Horticultural & Herbal Science, Wanju 55365, Republic of Korea)、Jeong Sil Choi(Fruit Research Division, National Institute of Horticultural & Herbal Science, Wanju 55365, Republic of Korea)、Hyungmin Rho(Department of Agriculture, Forestry, and Bioresources and Research Institute of Agriculture and Life Sciences, Seoul National University, Seoul 08826, Republic of Korea; Plant Science and Biotechnology Institute and Plant Genomics and Breeding Institute, Seoul National University, Seoul 08826, Republic of Korea)、In-Girl Baek(Fruit Research Division, National Institute of Horticultural & Herbal Science, Wanju 55365, Republic of Korea)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Byeong Hyeon Yun, Dongjun Im, Su In Mo, et al. Developmental Changes in Phenolic Composition and Condensed Tannin Structure in the Skins of Three Table Grape Cultivars: ‘Rosetta’, ‘Shooting Star’, and ‘Hongju Seedless’. Foods 2026-09-29. DOI: 10.3390/foods15193482. 原著ライセンス:CC BY.