ブルーハニーサックル(学名:Lonicera caerulea L.、ハスカップとも呼ばれる青い果実)は、ポリフェノールやアントシアニンを含むことで知られる果実です。一方で、そのまま搾った果汁は苦味や渋味が強く出やすいという課題もあります。今回紹介する研究では、この果汁を乳酸菌で発酵させ、さらに卵殻粉末を加えて共発酵させることで、風味や栄養面にどのような変化が生じるかを調べています。卵殻はカルシウムを豊富に含む一方でそのままでは吸収されにくいとされ、発酵によって吸収しやすい形に変えられないかという発想が背景にあるようです。
研究でわかったこと
研究チームは、アシドフィルス菌・フェルメンタム菌・ラムノサス菌という3種の乳酸菌を混合したスターター培養液を用意し、ブルーハニーサックル果汁を発酵させました。比較のために、発酵させない果汁、乳酸菌のみで発酵させた果汁、そして乳酸菌に卵殻粉末を0.5%または1%加えて共発酵させた果汁を用意し、果汁の収量や可溶性固形分量、官能的な品質、カルシウム含量、ポリフェノールやアントシアニンの含量、さらに液体クロマトグラフィー質量分析法による非揮発性代謝物の組成を比較しています。
その結果、乳酸菌による発酵は果汁の可溶性固形分量を増加させ、苦味や渋味を軽減し、総ポリフェノールやアントシアニンの蓄積を促したと報告されています。さらに卵殻粉末を加えた共発酵では、体内に取り込まれやすい形のカルシウム含量が効果的に増加し、卵殻由来の炭酸カルシウムが吸収されやすいキレート型のカルシウムへと変換されることが促されたとされています。具体的には、卵殻粉末を1%添加したグループでは、総カルシウム含量が2229.73 mg/L、有機酸結合型カルシウムが1681.44 mg/L、タンパク質結合型カルシウムが537.90 mg/Lであったことが示されています。
また、液体クロマトグラフィー質量分析法により合計732種類の代謝物が同定され、乳酸菌発酵によってフラボノイド類、フェノール酸類、テルペノイド類、配糖体類、アルカロイド類、アミノ酸誘導体といった機能性成分の蓄積が効果的に促進されたとされ、その中でも卵殻粉末を加えた共発酵グループで特に顕著な効果がみられたと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、乳酸菌と卵殻粉末による共発酵がブルーハニーサックル果汁の風味や成分組成に与える影響を、実験室レベルで系統的に評価したものです。ヒトが実際にこの果汁を摂取した場合の健康への影響や、カルシウムの体内での吸収・利用については、この要旨からは直接読み取れません。あくまで一つの研究であり、結論が確定したものではない点に留意が必要です。
まとめ
今回紹介した研究では、乳酸菌と卵殻粉末を組み合わせた共発酵によって、ブルーハニーサックル果汁の苦味・渋味が軽減されるとともに、ポリフェノールやアントシアニンなどの成分の蓄積、そして吸収されやすい形のカルシウム含量の増加が示唆されています。研究チームは、この手法がカルシウム強化型の機能性飲料の開発や、ブルーハニーサックルという果実資源の高付加価値な利用につながる可能性のある新しい戦略であるとしています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:混合乳酸菌と卵殻粉末の共発酵がブルーハニーサックル果汁(Lonicera caerulea L.)の品質に及ぼす影響(食品工業科技・2026年09月掲載予定)