この研究は、中国、アメリカ、オーストラリア、ロシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Immunology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
花粉やハウスダストなどが引き金となるアレルギー性鼻炎は、世界的に患者数が増えている慢性の炎症性疾患です。既存の薬には効果や使い心地の面で限界があるとされ、新しい対策の必要性が指摘されてきました。近年注目されているのが、腸内細菌のバランスを整えることで免疫の働きに働きかける「プロバイオティクス」というアプローチです。今回紹介する研究では、乳酸菌の一種であるLactiplantibacillus plantarum BGI-N6という菌株が、アレルギー性鼻炎の症状にどのような影響を与えるかが、動物モデルを用いて調べられました。
研究でわかったこと
研究チームは、卵白アルブミン(OVA)と水酸化アルミニウム(ALUM)を使ってアレルギー性鼻炎の状態を再現したラットのモデルに、BGI-N6を投与しました。その結果、アレルギー性鼻炎の症状や鼻の粘膜の病理的な変化が緩和されたと報告されています。また、アレルギー反応に関わる主要な物質の量が抑えられ、血液中の免疫グロブリンやサイトカイン(免疫細胞が出す情報伝達物質)の値が正常に近い水準へと変化したことも示されました。
免疫のバランスを示す指標であるTh1・Th2・Th17・Tregという4種類の免疫細胞群についても、BGI-N6の投与によってバランスが回復する方向に働いたとされています。さらに、盲腸内容物を対象にしたメタゲノム解析(腸内細菌の遺伝情報をまとめて調べる手法)では、短鎖脂肪酸を作り出すBacteroidota門に属する細菌の増加や、腸内細菌が持つ機能全体の回復が確認されました。加えて、投与した3つの用量すべてで一貫して変化していた41個の中核的な機能遺伝子(KEGGオーソログという分類による遺伝子群)が特定され、その中でもBacteroides属の細菌で最も強い増加が見られたとのことです。相関解析では、こうした腸内細菌の変化と免疫に関する数値との関連性も確認されたと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、OVA/ALUMによってアレルギー性鼻炎を再現したラットを用いた動物実験であり、ヒトでの効果を直接示したものではありません。プロバイオティクスによる腸内細菌の変化と免疫の状態との間に関連があることが示唆されていますが、これは一つの研究による知見であり、結論が確定したわけではない点に留意が必要です。
研究チームは、今回の結果がBGI-N6をアレルギー性鼻炎に対するプロバイオティクスとしての介入候補として支持するものであり、腸内細菌叢の変化がプロバイオティクスによる免疫調節と深く関わっている可能性を示すものだとまとめています。
まとめ
今回の動物実験では、乳酸菌BGI-N6の投与によってアレルギー性鼻炎モデルラットの症状や免疫バランスが改善傾向を示し、その背景に腸内細菌叢の変化があることが示唆されました。腸内環境と免疫、そしてアレルギーとの関係を考えるうえで興味深い知見といえますが、あくまで動物モデルでの研究段階であり、今後さらなる研究の積み重ねが期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):動物モデルにおけるLactiplantibacillus plantarum BGI-N6によるアレルギー性鼻炎症状の軽減(フロンティアーズ・イン・イミュノロジー・2026年08月)
※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
著者:Sihang Cai(College of Life Sciences, University of Chinese Academy of Sciences)、Xiaowei Xu(BGI Precision Nutrition)、Xiaofan Sun(BGI Research)、Qiang Luo(BGI Precision Nutrition)、Weijian Chen(BGI Precision Nutrition)、Xihe Wang(BGI Research)、Jielei Zhu(State Key Laboratory of Genome and Multi-omics Technologies, BGI Research)、Yanhong Liu(BGI Precision Nutrition)、Liang Xiao(BGI Precision Nutrition)、Haifeng Zhang(BGI Precision Nutrition)、Yuanqiang Zou(Shenzhen Key Laboratory of Human Commensal Microorganisms and Health Research, BGI Research)、Yiyi Zhong(BGI Precision Nutrition)