日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:The Journal of Nutrition, Health and Aging
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ヨーグルトや乳酸菌飲料など、発酵乳製品は日本の食卓でおなじみの存在です。これまでにも「乳製品をよく摂る人は全死因死亡リスクが低い」という関連が報告されてきましたが、乳酸菌(プロバイオティクス)を含む発酵乳製品に限定した場合、健康との関連がどうなるかは、まだはっきりしていませんでした。今回紹介するのは、日本の地域住民を対象に、乳酸菌Lacticaseibacillus paracasei シロタ株(LcS)を含む発酵乳製品の習慣的な摂取と、その後の死亡リスクとの関連を調べた前向きコホート研究です。
研究でわかったこと
この研究では、65歳以上の日本人地域住民1,280人(男性519人、女性761人、平均年齢73.5歳)を対象としました。参加者は、過去にさかのぼって思い出してもらう形で、発酵乳製品を食べる頻度を調査され、「週3日未満」か「週3日以上」かの2群に分けられました。この分類は、5年間および10年間という2つの期間について行われています。そのうえで、Cox比例ハザード回帰分析という統計手法を用い、全対象者での解析に加え、背景要因をそろえた「傾向スコアマッチング」という方法によるサブグループ解析でも、全死因死亡リスクとの関連が検討されました。
平均9.3年間(112.05か月)の追跡期間中、男性147人(28.3%)、女性114人(15.0%)が死亡しました。結果を見ると、男性においては、LcSを含む発酵乳製品を週3日以上・5年間にわたって摂取していた群で、全死因死亡リスクが有意に低いという関連が認められました。全対象者での解析ではハザード比0.648(95%信頼区間0.438〜0.958、p=0.030)、傾向スコアマッチングによる解析でもハザード比0.640(95%信頼区間0.434〜0.943、p=0.024)と、いずれも週3日未満の群と比べて低い値が示されています。LcSを含む製品に限らず、発酵乳製品全体で見ても、同様の傾向が確認されたとのことです。一方、女性においては、LcSを含む発酵乳製品でも発酵乳製品全体でも、こうした関連は見られなかったと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
今回の結果は、あくまで「発酵乳製品をよく摂取していた高齢男性で、死亡リスクが低い傾向が観察された」という関連を示すものであり、発酵乳製品の摂取が死亡リスクを下げる「原因」であると証明するものではありません。摂取頻度の情報が過去を振り返って回答する方式で得られている点や、女性では同様の関連が確認されなかった点も踏まえると、この一つの研究だけで結論が確定したわけではなく、今後さらなる検証が必要と考えられます。
まとめ
今回紹介した研究では、65歳以上の日本人男性において、乳酸菌シロタ株を含む発酵乳製品を週3日以上・5年間にわたって摂取していたグループで、全死因死亡リスクが低いという関連が示されました。一方で女性では同様の関連は見られておらず、性別による違いの背景も含め、今後の研究の広がりが期待されるテーマだといえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):乳酸菌を含む発酵乳製品の習慣的摂取と全死因死亡率との関連:地域住民を対象としたコホート前向き研究(ジャーナル・オブ・ニュートリション・ヘルス・アンド・エイジング・2026年10月掲載予定)
著者:Yukitoshi Aoyagi(Exercise Sciences Research Group, Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology, Itabashi, Tokyo, Japan; Corresponding author.)、Ryuta Amamoto(Food Research Department, Yakult Central Institute, Kunitachi, Tokyo, Japan)、Sungjin Park(Exercise Sciences Research Group, Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology, Itabashi, Tokyo, Japan)、Kazuhito Shimamoto(Food Research Department, Yakult Central Institute, Kunitachi, Tokyo, Japan)、Takashi Suwa(Food Research Department, Yakult Central Institute, Kunitachi, Tokyo, Japan)、Hiroshi Makino(Food Research Department, Yakult Central Institute, Kunitachi, Tokyo, Japan)、Satoshi Matsubara(Food Research Department, Yakult Central Institute, Kunitachi, Tokyo, Japan)