著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Journal of Cognitive Enhancement

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

カフェインは多くの成人が日常的に摂る成分で、反応の速さや記憶などの認知機能、筋力や持久力を高める目的でも使われています。一方、習慣的に摂っている人がカフェインを断つと、頭痛、だるさ、気分の落ち込み、集中しにくさといった離脱症状が出ることがあります。そこで再びカフェインを摂ると症状が消えます。これを「離脱の解消(離脱リバーサル)」と呼びます。

著者らは、カフェイン研究では参加者に事前に一定時間カフェインを控えてもらうことが多い点に注目しました。この場合、カフェイン摂取後に成績が良くなっても、それが本当の能力向上なのか、離脱による不調が元に戻っただけなのかを区別しにくくなります。研究チームは、カフェインの離脱と、その後の再摂取が、気分と認知テストの成績にどう影響するかを調べました。

どのように調べたか

対象は、週3日以上カフェインを摂り、週2日以上筋力トレーニングを続けている男女25人です。1日の平均カフェイン摂取量は約276mgでした。研究は、参加者も実験者も中身を知らない状態で飲料を割り当てる二重盲検法で行いました。各参加者は、3つの条件をすべて別の日に試しました。1つ目は体重1kgあたり5mgのカフェイン、2つ目は普段の摂取量に合わせたカフェイン、3つ目はカフェインを含まない偽の飲料(プラセボ)です。

参加者は研究期間中ずっとカフェインを控えました。実験日は48時間ずつ空けて設定されました。そのため、どの条件を何回目に受けたかによって、カフェインを断っていた時間は48〜96時間と異なりました。

各実験日には、まずアンケートで気分を答えてもらいました。気分の乱れの総合点に加え、元気さ、疲労感、集中しやすさの自己評価も測りました。次に、光るパッドに手を伸ばして触れる単純な反応時間テストと、光った順番を覚えて再現する記憶課題を行いました。その間に、最大挙上重量の80%でベンチプレスを限界まで3セット行う運動を挟みました。認知テストは、到着時、飲料を飲む直前、飲んで30分後、帰る前の計4回実施しました。脱水が結果に影響しないよう、尿で水分状態も確認しました。

主な結果

記憶課題と反応時間テストの成績は、どの条件でも1回目より後の回で向上しました。たとえば平均反応時間は、1回目の約0.40秒に対し、3回目は約0.38秒、4回目は約0.37秒と有意に速くなりました。

しかし、成績の伸び方は、カフェインを摂った条件とプラセボの条件で違いが見られませんでした。気分の乱れの総合点、元気さ、疲労感にも、条件による有意な差はありませんでした。集中しやすさの自己評価では、全体の分析で条件による差が示されました。ただし、条件同士を個別に比べると有意な差はなく、実際のテスト成績の改善にもつながっていませんでした。

著者らは、成績の向上はカフェインの有無や離脱の状態によるものではなく、同じ課題を繰り返したことによる慣れ(練習効果)による可能性が高いと解釈しています。運動の前後でも成績に有意な差はなく、ベンチプレスが認知テストに与えた影響は限られていたと考えられています。

研究から見えること

今回の研究では、習慣的にカフェインを摂る人について、短期間の離脱も再摂取も、認知テストの成績や気分への影響は限られていたと報告されています。

著者らは、限界も挙げています。課題が単純で手を伸ばす動作の要素が大きいため、カフェインの細かな影響をとらえにくかった可能性があります。また、運動をしない比較条件を設けていません。さらに、離脱時間の違い(48時間と96時間)を比べるには参加者数が十分ではありませんでした。

そのうえで著者らは、カフェインの短期的な効果を調べる際には、課題への慣れ、運動のタイミング、参加者の普段の摂取習慣といった実験デザインの要素を慎重に考える必要があると述べています。

原著論文の著者・所属:J. Ray Davis(Exercise & Nutrition Research Group, Department of Health, Kinesiology, and Sport, University of South Alabama, Mobile, United States of America)、Brady A. Watson(Exercise & Nutrition Research Group, Department of Health, Kinesiology, and Sport, University of South Alabama, Mobile, United States of America)、Sydney L. Miller(Exercise & Nutrition Research Group, Department of Health, Kinesiology, and Sport, University of South Alabama, Mobile, United States of America)、Ryan J. Colquhoun(Exercise & Nutrition Research Group, Department of Health, Kinesiology, and Sport, University of South Alabama, Mobile, United States of America)、Matthew J. Barenie(Exercise & Nutrition Research Group, Department of Health, Kinesiology, and Sport, University of South Alabama, Mobile, United States of America)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):J. Ray Davis, Brady A. Watson, Sydney L. Miller, et al. Caffeine Withdrawal Reversal Effects on Mood and Cognitive Performance Measures. Journal of Cognitive Enhancement 2026-08-06. DOI: 10.1007/s41465-026-00368-2. 原著ライセンス:CC BY.