この研究は、韓国、アメリカの研究機関の研究論文です。
掲載誌:International Journal of Environmental Research and Public Health
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
カフェインは世界で最も広く摂取されている精神刺激物質で、若い世代では眠気覚ましや集中のためにコーヒーやエナジードリンクを利用する人が少なくありません。一方で、若年成人のうつや不安の増加が公衆衛生上の課題となるなか、カフェインへの依存と心の状態や日々の生活との関わりについては、これまでうつ・不安だけ、あるいは限られた生活要因だけを扱った研究が中心でした。
そこで研究チームは、18〜24歳の若年成人を対象に、本人が感じている「カフェイン依存」の程度が、うつ・不安の症状、感情知能(自分や他者の感情を読み取り、理解し、健全に対応する力)、そして食事・運動・睡眠・メディア利用・飲酒や喫煙といった幅広い生活習慣とどのように関連しているかを、まとめて調べました。
何をどのように調べたか
研究は、米国カリフォルニア州ウェイマーの内科クリニックを通じて2017年1月から2024年3月に実施された心の健康評価のデータを用いた横断研究です。横断研究とは、ある時点での状態を一度に調べて項目どうしの関連を見る方法で、どちらが原因かを決めるものではありません。分析対象は37か国の1438人で、77%が米国の参加者でした。
カフェイン依存の程度は、「少なくとも中程度のカフェイン依存、あるいは重い依存の問題があるか」という一つの質問に対し、本人が「なし」「中程度」「重度」から選ぶ形で尋ねました。著者らは、これは本人の自己認識を把握するものであり、医学的な診断ではないと説明しています。うつ・不安の症状や感情知能も、クリニックで用いられている自己記入式の質問票から得た得点で評価されました。
生活習慣は、果物・野菜・全粒穀物の摂取量、チーズの摂取頻度、定期的な運動、屋外の光を浴びる時間、睡眠と食事の時刻の規則性、睡眠時間、深夜0時より前に眠っている時間、娯楽映像の視聴時間、良心に反する行動の頻度、飲酒、たばこ(ニコチン)依存の自己申告など14項目で尋ねられました。研究チームは、グループ間の単純な比較に加え、年齢・性別・民族・国の影響を考慮した統計モデルでも関連を分析しました。
主な結果
参加者のうち、中程度のカフェイン依存を自覚していた人は15.3%、重度と答えた人は7.1%でした。単純な比較では、調べたすべての生活習慣でカフェイン依存の程度によって違いが見られました。依存を自覚していない人ほど、果物・野菜・全粒穀物を多くとる、定期的に運動する、睡眠と食事の時刻が規則的、一晩に7〜9時間眠るといった傾向がありました。重度の人では、屋外の光を浴びる時間が短い、深夜0時前の睡眠が1時間未満、娯楽映像の視聴時間が長い、良心に反する行動をよくすると答える、たばこ依存や飲酒がある、といった回答が多くみられました。
心の健康については、依存の程度が「なし」「中程度」「重度」と強くなるにつれて、うつと不安の得点は段階的に高く、感情知能の得点は段階的に低くなっていました。ただし、他の要因の影響を同時に考慮した分析では、これら心の健康の指標のうち重度の依存と有意な関連が残ったのは感情知能だけでした。感情知能の得点が1点高いごとに、重度の依存を自覚する見込み(オッズ)は約2.5%低いという関係です。
同じ分析で、重度の依存のオッズが低いことと関連していたのは、一晩7〜9時間眠ること(6時間未満または10時間以上の人と比べ約56%低い)、深夜0時前に1〜2時間眠ること(1時間未満と比べ約50%低い)、たばこ依存がないこと(約84%低い)でした。果物・野菜・全粒穀物は1日3〜4サービングのグループで有意な関連がみられた一方、5サービング以上のグループは重度の依存を自覚した人が1人しかおらず、推定が不確かだったと著者らは述べています。
中程度の依存については、チーズを週2回以下にとどめていること(約31%低い)、娯楽映像の視聴が週2時間以下であること(約41%低い)、たばこ依存がないこと(約73%低い)が、オッズの低さと関連していました。
この研究が示すこと
著者らは、カフェイン依存を自覚する若年成人ほど、うつや不安の得点が高く感情知能が低いこと、そして睡眠や食事、運動、メディア利用、喫煙・飲酒など生活習慣全般が健康的でない方向に偏っていることを報告しています。これは関連を示したものであり、カフェインがこうした状態を引き起こすかどうかを示したものではありません。
それでも研究チームは、カフェイン依存の自覚が心の状態や生活のさまざまな側面と結びついて現れていることから、カフェインの摂取だけに注目するのではなく、生活習慣全体を視野に入れた予防や支援の考え方が必要だと結論づけています。
著者:Se Eun Jang(Addiction Science Department, Sahmyook University, Seoul 01795, Republic of Korea)、Mi-Eun Yun(Addiction Science Department, Sahmyook University, Seoul 01795, Republic of Korea)、Francisco Eddie Ramirez(Weimar University, Weimar, CA 95736, USA)、Neil Nedley(Weimar University, Weimar, CA 95736, USA)、Jinsoo Jason Kim(Addiction Science Department, Sahmyook University, Seoul 01795, Republic of Korea)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Se Eun Jang, Mi-Eun Yun, Francisco Eddie Ramirez, et al. Self-Perceived Caffeine Addiction, Mental Health, and Lifestyle Choices in a Clinic-Based Sample of Young Adults. International Journal of Environmental Research and Public Health 2026-10-09. DOI: 10.3390/ijerph23101299. 原著ライセンス:CC BY.