著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
飲み物によって体に水分がとどまりやすいかどうかを比べる方法に、「飲料水分補給指数(BHI)」があります。水1リットルを飲んだあとの尿量を、試験する飲み物1リットルを飲んだあとの尿量で割って求める比率です。値が1.0より大きければ、その飲み物は水よりも体に水分が残りやすいことを示します。1.0より小さければ、水よりも尿が多く出たことを意味します。
この指標は、基準となる「水を飲んだときの尿量」が安定していることを前提にしています。しかし、試験前の食事や季節などによって、同じ人でも水を飲んだときの反応が変わるかもしれません。そこで研究チームは、水を飲んだあとの尿の出方が同じ人で再現されるかを調べました。あわせて、そのばらつきが試験飲料のBHIの評価にどの程度影響するかも検討しました。試験飲料には、砂糖を含まず、カフェインと電解質(ナトリウムやカリウム)を加えた飲み物を用いました。
どのように調べたか
健康な若い成人24人(男性14人、女性10人)が参加しました。参加者は朝に水分が足りた状態で来所し、水または試験飲料1リットルを30分かけて飲みました。その後4時間座ったまま過ごし、その間の尿を集めて重さを測りました。試験飲料1リットルには、210ミリグラムのカフェインと、ナトリウム、カリウムが含まれていました。
このうち15人は、水を飲む試験をおよそ6か月の間隔をあけて2回受けました。1回は晩春から夏、もう1回は冬に行われました。参加者は試験前日の食事や飲み物を記録し、各回でなるべく同じ内容にするよう求められました。研究チームは、2回の水の試験の尿量を比べました。さらに、それぞれの水の結果を基準として試験飲料のBHIを計算し、結果が変わるかどうかを確かめました。
主な結果
2回の水の試験で、集団としての平均尿量に差はみられませんでした。ところが、一人ひとりの値の一致度を示す指標(級内相関)は、2時間後で0.11、4時間後で0.31と低い値でした。同じ人でも回によって尿量が大きく異なる場合があったと報告されています。特に3人で大きな食い違いがあり、季節による変化の向きも人によってまちまちでした。
それでも、どちらの水の試験を基準にしても、試験飲料のBHIに有意な差は生じませんでした。2時間後のBHIは0.90と0.97、4時間後は0.99と1.01でした。
試験飲料のBHIが水の基準値1.0より低くなったのは、飲み終えてから1時間の時点だけでした(約0.75と0.83)。これは、最初の1時間に水より尿が多く出たことを示します。一方、2時間後から4時間後にかけては水との差はみられませんでした。24人全員で分析した場合も同様で、1.0を下回ったのは1時間の時点だけでした。また、男女の間でBHIに差はみられませんでした。
尿中に出たナトリウムとカリウムの量は、いずれも試験飲料のほうが多くなりました。このうちナトリウムについて、著者らは、カフェインそのものの作用によるものではなく、水より多くのナトリウムを摂取したことと整合する結果だと考察しています。ただし、カフェインを含まない無糖の電解質飲料との比較は行っていないため、この点を直接確かめるデータはないとも述べています。
この研究が示すこと
著者らは、水を飲んだときの尿の出方は平均すると安定して見えても、個人の中では再現性が低いことを示しました。一方で、そのばらつきは試験飲料のBHIの算出結果にはほとんど影響しなかったとしています。そのうえで、試験前の普段の生活条件に違いがあっても、この指標は頑健であると結論づけています。
また、今回の無糖のカフェイン入り電解質飲料は、飲んだあと最初の1時間は水より尿を増やしたものの、2〜4時間の範囲では水と同程度に体に水分がとどまったと報告されています。この研究は、水分補給のしやすさを比べる物差しの信頼性と、カフェイン入り飲料の位置づけの両方に手がかりを与えるものといえます。
原著論文の著者・所属:Scott D. Bassett(Exercise Physiology Laboratory, Georgia Institute of Technology, Atlanta, GA 30332, USA; School of Health & Human Performance, Georgia College & State University, Milledgeville, GA 31061, USA)、Brian Hack(Exercise Physiology Laboratory, Georgia Institute of Technology, Atlanta, GA 30332, USA)、Alec Harp(Exercise Physiology Laboratory, Georgia Institute of Technology, Atlanta, GA 30332, USA)、Melinda Millard-Stafford(Exercise Physiology Laboratory, Georgia Institute of Technology, Atlanta, GA 30332, USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Scott D. Bassett, Brian Hack, Alec Harp, et al. Reproducibility of Water Diuresis: Implications for Establishing the Beverage Hydration Index of a Sugar-Free Caffeinated Electrolyte Beverage. Nutrients 2026-10-06. DOI: 10.3390/nu18193279. 原著ライセンス:CC BY.