この研究は、イタリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、肥満や糖尿病などの代謝の乱れを背景に肝臓に脂肪がたまる病気です。著者らによれば、世界で肝硬変の主な原因になっています。この病気で特に重要なのが、肝臓が硬くなる「線維化」の進み具合です。著者らは、線維化を肝臓関連の死亡を最も強く予測する指標として位置づけています。

野菜や果物、オリーブオイルなどを多くとる地中海食は、MASLDに対して保護的と考えられています。地中海食には、植物が作る化合物の一群であるポリフェノールが豊富に含まれています。ポリフェノールは実験モデルで線維化を抑える作用が示されてきました。一方、これまでの人を対象とした研究は肝臓の脂肪蓄積や代謝異常を扱ったものが中心でした。食事からのポリフェノール摂取と線維化との関係は調べられていなかったと著者らは述べています。そこで研究チームは、地中海食が根付く南イタリアでMASLDの人を対象に、両者の関連を調べました。

どのように調べたか

研究チームは、南イタリア・プーリア州の住民から無作為に選ばれた2つの研究集団のデータを使いました。ある時点の状態を比べる横断的な分析です。参加者2427人のうち、超音波検査で脂肪肝が確認されなかった人や、慢性ウイルス性肝炎またはアルコール性肝疾患のある人を除きました。その結果、MASLDの人721人が対象となりました。

食事の内容は、欧州の大規模研究で使われる食物摂取頻度質問票に参加者自身が回答する形で把握しました。各食品のポリフェノール含有量は、公開データベース「Phenol-Explorer」を用いて見積もりました。調理による含有量の変化も考慮しています。ポリフェノールは、アントシアニンなどを含む「フラボノイド」と、フェノール酸、リグナン、スチルベンなどの「非フラボノイド」に分けて扱われました。

線維化の程度は、肝生検ではなく、血液検査や体格などから計算する非侵襲的なスコアで評価しました。主に用いたのは、年齢を式に含まないMAF-5で、補助的にFIB-4も用いています。リスクが低い群と高い群を比べるため、判定が中間に入る人は分析から除かれました。ポリフェノール摂取量は中央値で「多い」群と「少ない」群に分けられました。性別、年齢、喫煙、血液検査値、総エネルギー摂取量、地中海食への順守度などの影響を統計的に調整したうえで、両群の違いを比べています。

主な結果

MAF-5が低い381人と高い94人を比べた分析では、総ポリフェノール摂取量が中央値を上回る群(1日382.0〜1356.8mg)に注目しました。この群は、下回る群に比べて、MAF-5が高い状態にあるオッズ(起こりやすさを示す指標)が約半分(オッズ比0.49)でした。総フラボノイドでも同様の関連が見られました。種類別では、ベリー類やブドウなどに含まれる色素のアントシアニンで、多くとる群のオッズが低い関連が報告されました。ブドウなどに含まれるスチルベンでも同様の関連が見られました。

食品源別にみると、果物由来のフラボノイドを1日60mg以上とる群でも、MAF-5が高いオッズが低くなっていました(オッズ比0.49)。著者らは、この関連の中心は果物由来のアントシアニンだったとしています。エキストラバージンオリーブオイル由来のポリフェノールも、摂取が多い群でMAF-5が高いオッズが約半分(オッズ比0.50)でした。

FIB-4を用いた分析では、非フラボノイドの摂取が多い群で、スコアが高いオッズが低いという関連が報告されました。野菜、豆類、コーヒーに由来する非フラボノイドについても、同様の関連が報告されています。一方、ポリフェノールの種類や食品源によっては明確な関連が見られないものもありました。2つのスコアで結果が一致しない部分もありました。スコアを連続値や3区分で扱った追加の分析では、主な結果と一部しか一致しなかったと著者らは報告しています。

研究が示すこと

この研究は、地中海食への順守度などを考慮しても、ポリフェノールを多くとる人ほど線維化スコアが高い状態にある割合が低いという「関連」を示しました。ただし、ある時点の状態を比べた研究なので、ポリフェノールが線維化を防ぐという因果関係を確かめたものではありません。著者ら自身も探索的な研究と位置づけています。

また、食事は自己申告に基づいており、線維化も非侵襲的なスコアで推定しています。身体活動の影響は考慮できていません。著者らはこうした限界も挙げています。それでも、これまで脂肪蓄積を中心に調べられてきた食事中のポリフェノールについて、肝臓の線維化という観点から関連を検討した点に、この研究の意義があります。

著者:Caterina Bonfiglio(Unit of Data Science, National Institute of Gastroenterology—IRCCS “Saverio de Bellis”, 70013 Castellana Grotte, Italy)、Maria Noemy Pastore(Unit of Data Science, National Institute of Gastroenterology—IRCCS “Saverio de Bellis”, 70013 Castellana Grotte, Italy)、Manuela Siani(Unit of Data Science, National Institute of Gastroenterology—IRCCS “Saverio de Bellis”, 70013 Castellana Grotte, Italy)、Rossella Donghia(Unit of Data Science, National Institute of Gastroenterology—IRCCS “Saverio de Bellis”, 70013 Castellana Grotte, Italy)、Martina Musumeci(Division of Gastroenterology, Ospedale di Taormina, Azienda Sanitaria Provinciale di Messina, 98123 Messina, Italy)、Fabio Galvano(Department BioMeTec, University of Catania, 95123 Catania, Italy)、Gianluigi Giannelli(Scientific Direction, National Institute of Gastroenterology—IRCCS “Saverio de Bellis”, 70013 Castellana Grotte, Italy)、Federico Salomone(Division of Gastroenterology, Ospedale di Acireale, Azienda Sanitaria Provinciale di Catania, 95124 Catania, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Caterina Bonfiglio, Maria Noemy Pastore, Manuela Siani, et al. Dietary Polyphenol Intake Inversely Associates with Fibrosis Scores in Individuals with MASLD. Nutrients 2026-10-09. DOI: 10.3390/nu18203308. 原著ライセンス:CC BY.